引っ越しの総額は、引っ越し代より新居の初期費用で決まります|家賃7万円なら敷金・礼金・仲介手数料・前家賃で約29万円。旧居の敷金は明け渡しの後に戻ります
この記事を読むと分かること
- 賃貸から賃貸への引っ越しの総額は、引っ越し代よりも新居の契約時に払うお金のほうが大きくなりやすいです。敷金・礼金・仲介手数料・前家賃は「家賃の何か月分」で決まります
- 家賃7万円の部屋で4つがそろうと、合計は最大で約29万円です。ここに保証会社の保証料・火災保険・鍵交換などが加わります(筆者計算)
- 仲介手数料の上限は国の告示で決まっています。借り手と貸し手から受け取る合計で家賃の1.1か月分(消費税込み)まで、居住用で借り手の承諾が無ければ借り手からは0.55か月分までです
- 旧居の敷金が戻るのは部屋を明け渡した後です。新居の初期費用は先に払うので、その間は両方の分を手元のお金で立て替えます
「引っ越しにいくらかかるか」を考えるとき、多くの人は引っ越し業者の料金から調べます。ところが賃貸から賃貸へ移る場合、金額が大きいのは新居の契約で払うお金のほうです。この記事では、国土交通省の調査と法令で確かめられる範囲だけで、総額の内訳と、払う順番を整理します。
引っ越しの総額は、何でできていますか?
総額は「新居の契約時の費用」「引っ越し代」「旧居の退去費用」「家具・家電」「新居で暮らし始めるための費用」の5つでできています。このうち、家賃に比例して決まるのが新居の契約時の費用です。
| かたまり | 主な中身 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 新居の契約時の費用 | 敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・保証料・火災保険・鍵交換 | 多くが「家賃の何か月分」 |
| 引っ越し代 | 運賃・作業料・オプション | 時期・距離・荷物の量・業者の空き |
| 旧居の退去費用 | 原状回復の費用(敷金から差し引かれる) | 部屋の状態と契約の特約 |
| 家具・家電 | カーテン・照明・買い替える家電 | 持っていく物と、新居で使えない物の数 |
| 暮らし始める費用 | 電気・ガス・水道・ネット回線の申し込み | 会社と契約内容 |
引っ越し代は、ほかの4つと違って同じ荷物でも日にちと業者で金額が変わります。比べ方は後半で書きます。
新居の契約時には、家賃の何か月分を払いますか?
敷金・礼金・仲介手数料・前家賃の4つがそろうと、家賃のおよそ4か月分です。ただし、全部がそろう部屋ばかりではありません。国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」(2023年4月〜2024年3月に三大都市圏の民間賃貸住宅へ入居した世帯)では、次の結果でした。
| 項目 | あった世帯の割合 | 最も多かった月数 |
|---|---|---|
| 敷金/保証金 | 57.7% | 1か月ちょうど(61.7%) |
| 礼金 | 42.6% | 1か月ちょうど(65.0%) |
| 仲介手数料 | 44.2% | 1か月ちょうど(65.6%) |
| その他費用 | 14.9% | 平均19,432円 |
※ 割合には無回答があるため、「あった」と「なかった」を足しても100%になりません。同じ調査で、入居した住宅の家賃は平均77,677円、中央値70,000円でした。
家賃7万円なら、いくらになりますか?
家賃7万円の部屋で敷金1・礼金1・仲介手数料(上限)・前家賃1か月がそろうと、合計は287,000円です。調査の家賃の中央値(70,000円)を使った筆者の計算です。
| 項目 | 月数 | 金額(家賃7万円) |
|---|---|---|
| 敷金 | 1か月 | 70,000円 |
| 礼金 | 1か月 | 70,000円 |
| 仲介手数料(上限・税込み) | 1.1か月 | 77,000円 |
| 前家賃 | 1か月 | 70,000円 |
| 合計 | 4.1か月 | 287,000円 |
※ 共益費、入居月の日割り家賃、保証会社の保証料、火災保険料、鍵交換費用は含めていません。敷金・礼金が0か月の部屋なら、その分だけ少なくなります。
仲介手数料の上限は、誰が決めていますか?
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法に基づく国土交通省の告示で決まっています。告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の「第四 貸借の媒介に関する報酬の額」は、次の2段になっています。
- 不動産会社が借り手と貸し手の双方から受け取る合計は、家賃の1か月分の1.1倍(消費税込み)まで
- 居住用の部屋では、借り手の一方から受け取る額は家賃の0.55倍まで。ただし、媒介の依頼を受けるに当たって借り手の承諾を得ている場合は除く
「仲介手数料1か月分(税込み1.1か月分)」と書かれた物件は、この承諾がある前提です。承諾をするかどうかは、依頼のときに決めることです。金額に納得できないなら、申し込む前に担当者に確かめてください。家賃の計算には消費税を含めません。
上限が決まっているのは仲介手数料です
敷金・礼金の月数は、貸主が決める契約条件です。仲介手数料のような上限の告示はありません。
そのため、比べるときは「家賃」ではなく「家賃+契約時に払う合計」で並べると差が分かります。
敷金と礼金は、何が違いますか?
敷金は退去のときに精算されて残りが戻るお金、礼金は戻らないお金です。敷金は民法第622条の2に定めがあり、名目を問わず、家賃などの借り手の支払いを担保するために預けるお金をいいます。
- 貸主は、賃貸借が終わり、かつ部屋の明け渡しを受けたときに、受け取った敷金から未払いの家賃などを差し引いた残りを返さなければなりません(民法第622条の2第1項)
- 礼金には法律上の定めがなく、契約で決まる戻らないお金です
敷金から差し引かれる原状回復の範囲は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」が考え方を示しています。退去費用の線引きはこちらで整理しています。
家賃の月数で決まらない費用は、何がありますか?
保証会社の保証料・火災保険料・鍵交換費用は、家賃の月数では決まらず、物件と契約ごとに違います。金額は重要事項説明書と契約書に書かれるので、申し込みの前に見積もりの明細を出してもらってください。
- 保証会社の保証料:保証会社とプランで決まります。初回と更新時で金額が違うことがあります
- 火災保険料:契約の条件として加入を求められることがあります。保険料は保険会社と補償内容で決まります
- 鍵交換費用:ガイドラインは、破損や紛失のない鍵の取替えを「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題」として、貸主の負担とすることが妥当としています。一方で、契約の特約で借り手の負担にしている物件もあり、鍵交換費用の負担特約を消費者契約法に違反しないとした判決(東京地裁 平成21年9月18日)もガイドラインに載っています
鍵交換は「払う必要がない費用」と言い切れません。特約に書かれているかを契約前に確かめるのが確実です。
旧居の敷金は、いつ戻りますか?
旧居の敷金が戻るのは、部屋を明け渡した後です。民法は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に返すと定めています。新居の初期費用は契約時に払うので、順番は次のようになります。
| 時期 | 出ていくお金 | 戻るお金 |
|---|---|---|
| 新居の契約時 | 新居の敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など | — |
| 引っ越しの日 | 引っ越し代(支払い時期は業者の約款と見積書による) | — |
| 旧居の明け渡しの後 | 原状回復の費用(敷金から差し引き、足りなければ追加) | 旧居の敷金の残り |
旧居の敷金を新居の初期費用に充てる、という計算は成り立ちません。手元に用意するのは、新居の契約時の費用と引っ越し代の合計です。
家賃が二重になる期間はありますか?
旧居の解約日が新居の入居日より後なら、その期間は両方の家賃がかかります。旧居をいつまで借りることになるかは、契約書の「解約予告」の期間で決まります。新居の契約日を決める前に、旧居の契約書を開いて、何日前までに連絡すればいつ解約になるかを確かめてください。
一人暮らしと二人暮らしで、総額の考え方は変わりますか?
契約時の費用は家賃に比例するので、人数ではなく家賃で決まります。仲介手数料の上限も家賃で計算され、入居人数は計算式に入っていません。人数で変わるのは、引っ越し代(荷物の量)と家具・家電です。
単身の引っ越し代が相場と合わない理由はこちらです。
二人で住み始める場合はこちらです。
引っ越し代は、総額のどこで抑えられますか?
引っ越し代は、総額の中で唯一「比べると下がる」部分です。新居の契約時の費用は物件を決めた時点でほぼ決まりますが、引っ越し代には定価がなく、日にちと業者の空き状況で変わります。特に3月は高くなります。
荷物を減らすと、見積もりのトラックの大きさも変わります。手放す物は見積もりの前に決めておきます。
業者の比べ方は、何を優先するかで分かれます。
| 優先したいこと | 向いている方法 | 受け入れること |
|---|---|---|
| とにかく多くの社を並べて安い1社を探したい | 引越し侍のような一括見積もり | 電話とメールの本数が多くなる |
| 手間を減らして、厳選された数社で比べたい | HALESEE(ハレシー) | 比較できる社数は少なめ |
HALESEE(ハレシー)は、最大10社に一括で見積もりを依頼したうえで、大手から安い順に2社と、地域密着から最安1社の計3社に絞って提案すると公表しています(2026年8月時点・公式サイトの記載)。総額のうち引っ越し代の実額を、少ないやり取りで手に入れたいときの材料になります。
多く並べる側を選ぶなら、引越し侍も候補です。連絡の本数と、その仕組みはこちらで整理しています。
新居の電気は、契約の後に選び直せます
新居の電気は新規の申し込みになるため、電力会社を選び直せる機会です。総額の最後のかたまり「暮らし始める費用」のうち、毎月かかり続けるのが電気代です。選択肢の一つがリミックスでんきです。公式のよくある質問(2026年10月9日確認)では、次のように説明されています。
- 2023年4月からのプランは「Styleプラス」「Styleプラスeco」のみ
- 日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に連動した単価で、30分ごとに価格が変動する
- 市場が高騰した際(主に夏冬)は、従来のプランよりも料金が高くなるケースもある
- 引っ越しに伴う新規の申込みは、供給開始希望日の5営業日前まで
- 沖縄・島しょ部を除くエリアで利用できる
単価が固定のプランではありません
市場価格に連動するため、使う時間帯と季節によって高くも安くもなります。
「いつでも安い」とは言えないので、夏と冬の使用量が多い家は、今の契約と比べてから選んでください。
電気・ガス・水道の順番と連絡先はこちらです。
新居でも東京ガスのガスを使う人は、ガス料金とまとめて払えるウォーターサーバーもあります。最低利用期間があるので、料金と条件を先に確かめてください。
よくある質問
引っ越しの総額で、いちばん大きいのは何ですか?
賃貸から賃貸への引っ越しなら、多くの場合は新居の契約時の費用です。敷金・礼金・仲介手数料・前家賃がそろうと家賃のおよそ4か月分になり、家賃7万円なら約29万円です。
仲介手数料は、家賃の1か月分を払うものですか?
上限は、借り手と貸し手から受け取る合計で家賃の1.1か月分(消費税込み)です。居住用の部屋では、媒介の依頼を受けるときに借り手の承諾を得ていなければ、借り手から受け取れるのは0.55か月分までです。
旧居の敷金を、新居の初期費用に使えますか?
使えません。敷金が戻るのは旧居を明け渡した後で、新居の初期費用は契約時に払います。その間は手元のお金で立て替えます。
鍵交換費用は払わなくていいのですか?
国土交通省のガイドラインは、破損や紛失のない鍵の取替えは貸主の負担とするのが妥当という考え方です。ただし契約の特約で借り手の負担にしている物件があり、その特約を有効とした判決もあります。契約書で確かめてください。
敷金・礼金が0の部屋は、総額が安くなりますか?
契約時の費用はその分少なくなります。ただし、敷金が無い場合は、退去時に借り手の負担となる原状回復の費用が出たとき、差し引く預け金が無いので別に請求されます。退去時の精算の条件を契約書で確かめてから比べてください。
まとめ
- 引っ越しの総額は、新居の契約時の費用・引っ越し代・旧居の退去費用・家具家電・暮らし始める費用の5つ
- 敷金・礼金・仲介手数料・前家賃がそろうと家賃のおよそ4.1か月分。家賃7万円なら287,000円(筆者計算)
- 国の調査(令和6年度)では、敷金があったのは57.7%、礼金は42.6%、仲介手数料は44.2%の世帯
- 仲介手数料の上限は告示で家賃の1.1か月分(税込み)。居住用は借り手の承諾が無ければ0.55か月分
- 旧居の敷金は明け渡しの後に戻るので、新居の初期費用と引っ越し代は先に用意する
- 総額の中で比べると下がるのは引っ越し代
あわせて読みたい
引っ越し全体の段取りと期限はこちらです。
仕事を辞めた後に部屋を借りる場合はこちらです。
会社が引っ越し費用を出す場合はこちらです。
※ 本記事の内容は、国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査 報告書」(令和7年6月)の民間賃貸住宅に関する結果、国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(最終改正 令和6年6月21日)、民法第622条の2、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」を2026年10月20日に確認した記載に基づきます。リミックスでんきは2026年10月9日、HALESEEは2026年8月時点の公式サイトの記載です。金額の例は筆者の計算で、実際の金額は物件の重要事項説明書と契約書、各社の見積もりでご確認ください。