退去費用はどこまで払うのか|原状回復の線引きと、掃除で減らせる部分・減らせない部分

この記事を読むと分かること
  • 国が示している「原状回復」の定義は、借りた当時の状態に戻すことではないこと
  • 経年変化・通常損耗は貸主負担が原則で、長く住むほど借主の負担割合は下がること
  • 掃除で減らせる汚れと、掃除しても関係のない部分の線引き
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退去費用の請求書を見て、金額に驚いたという話をよく聞きます。「壁紙を全部張り替えるので」「クリーニング代です」と言われると、根拠が分からないまま払ってしまいがちです。
ですが、この線引きは国が示しています。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。まずそこを押さえると、何が交渉できて何ができないかが分かります。

「原状回復」は、借りた当時の状態に戻すことではない

ガイドラインでは、原状回復をこう定義しています。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
— 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より
そして同じガイドラインで、「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」と明確化されています。
ここが出発点です。新品同様に戻す義務はありません。

誰が負担するかの原則

負担する人対象
貸主(大家)建物・設備の自然な劣化や損耗(経年変化)と、通常の使用により生じる損耗
借主(入居者)故意・過失善管注意義務違反通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損
※ 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の記載に基づく(2026年8月時点・編集部調べ)。
ガイドラインは、経年変化や通常使用による損耗の修繕費用は「賃料に含まれるもの」としています。つまり、家賃を払っている時点でその分は支払い済みという整理です。
だから「日焼けした壁紙の張り替え代」を全額請求されるのは、原則と合いません。

長く住んだほうが、借主の負担割合は下がる

もうひとつ重要な考え方があります。
ガイドラインは、借主に原状回復義務がある場合でも、「建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる」という考え方を採っています。
理由は明快です。借主が負担すべき損耗の中にも経年変化や通常損耗が混ざっていて、その分はすでに家賃として払っているからです。
「20年住んだから、その分きれいにして返す」ではありません
原則は逆です。住んだ年数が長いほど、借主の負担割合は小さくなります。
設備ごとの経過年数の扱いはガイドライン本文に整理されています。高額な請求を受けたら、まず「経過年数を考慮した金額か」を確認してください。

ハウスクリーニング特約は、常に有効とは限らない

契約書に「退去時のハウスクリーニング代は借主負担」と書いてあるケースは多くあります。これは特約と呼ばれます。
特約が有効と認められるには、一般に次の2つが必要とされています。
  1. 貸主と借主が、特約の内容を認識・理解したうえで合意していること
  1. 特約の内容が、借主の利益を一方的に害するものでないこと
実際に、裁判で特約が無効と判断された例もあります。東京地裁の平成25年7月18日の判決では、「退去時の貸主指定の専門業者によるハウスクリーニング代は借主が負担する」という記載について、クリーニングの範囲を包括的に定めたにすぎず、通常の使用によって生じた汚損・損傷を修繕する趣旨であることが明白でないとして、特約が無効と判断されたとされています。
※ これは個別の事案についての判断であり、すべてのハウスクリーニング特約が無効になるという意味ではありません。有効かどうかは契約内容と事実関係によって変わります。争いになる場合は、消費生活センターや弁護士など専門の窓口にご相談ください。
まずやるべきは、契約書の該当箇所を読むことです。金額が明記されているか、範囲が具体的か。ここが曖昧なほど、説明を求める余地があります。

立ち会いのときにやること

退去の立ち会いは、金額が決まる場面です。その場で何をするかで結果が変わります。
やること理由
入居時の写真を出す元からあった傷や汚れを、退去時のものと区別できます
内訳を「項目・単価・数量」で出してもらう総額だけでは、経過年数が考慮されているか確認できません
金額に納得していない書面にサインしないその場で確定させる必要はありません
退去時の状態も写真に撮るあとから追加された指摘と区別できます
「今日決めてください」と言われても、応じる義務はありません。内訳を持ち帰って確認したいと伝えてください。話がまとまらない場合は、お住まいの自治体の消費生活センターに相談できます。

掃除で減らせる部分と、減らせない部分

ここは正直に書きます。掃除をしても、通常損耗の扱いは変わりません。壁紙の日焼けも、家具を置いてできたへこみも、掃除では消えませんし、そもそも原則として貸主負担です。
掃除が効くのは、「借主負担になりうる汚れ」を作らない・残さないことです。
掃除が効きやすい掃除では変わらない
キッチンの油汚れ壁紙の日焼け・変色
浴室・洗面所のカビや水垢家具設置によるへこみ
結露を放置して広がったカビ設備の自然な劣化
換気扇・レンジフードの油畳の自然な色あせ
ポイントは、「管理が悪くて発生・拡大したもの」は借主負担になりうるという点です。結露そのものは避けにくくても、放置して広げたかどうかは分かれ目になります。同じように、油汚れも溜め込むほど落ちにくくなります。
つまり掃除は、退去直前にまとめてやるより、住んでいる間の管理のほうが効きます。とはいえ、これから退去する方にとっては、直前でもやる価値はあります。

自分でやるか、頼むか

退去前の掃除で問題になるのは、時間です。引っ越しの荷造りと同時期に、水回りと換気扇を本気で掃除するのは現実的に厳しいことが多くあります。
判断の目安はこうなります。
自分でやる頼むことを検討する
汚れが軽く、時間が取れる油汚れやカビが長年蓄積している
荷物が少ない荷造りと同時進行で手が回らない
退去日まで余裕がある退去日と引っ越し日が同じ

新居側の「入居前クリーニング」という選択肢

退去側だけでなく、新居を入居前に掃除しておくという手もあります。家具を入れる前のほうが作業しやすく、エアコンは特に、入居前なら家具を動かさずに済みます。前の入居者がどう使っていたかは分からないので、エアコン内部の汚れが気になる方はここで潰しておくと楽です。
退去日の直前に頒もうとしても、果の予約が取れません
ハウスクリーニングは、時期によっては希望日の1〜2か月先まで埋まっていることがあります。引っ越しの繁忙期と重なるとなおさらです。
頒むなら、引っ越し業者を押さえるのと同じタイミングで動いてください。「退去日が決まってから探す」では間に合わないことがあります。
東京ガスのハウスクリーニングは、東証プライム上場の東京ガス株式会社が運営しています。清掃技術の研修に加えてマナー研修にも合格したスタッフのみが派遣され、損害賠償保険にも加入しています。引っ越しの前後は自宅に人を入れる機会が多いので、この手の安心は軽くありません。
対応エリアは全国ではありません
中心は東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県です。加えて群馬県(前橋市、高崎市の一部、藤岡市の一部)茨城県(龍ヶ崎市、取手市、牛久市、つくば市、つくばみらい市、阿見町、利根町)も対象です。
市区町村単位で区切られているので、申し込み前に新居の住所が対象かを公式サイトで確認してください。
料金や口コミ、予約の取りやすい時期はこちらにまとめています。

退去日と引っ越し日は、セットで決まる

最後に段取りの話です。退去日と引っ越し日がずれていると、掃除の時間が作れます。逆に同じ日にすると、荷物を出したその足で立ち会いになり、掃除する余裕がありません。
そして退去日を決めるには、引っ越し日を確定させる必要があります。業者が押さえられなければ、退去日も動かせません。3〜4月は業者の枠から先に埋まります。
引っ越し料金には定価がなく、時期・荷物量・距離・作業条件で倍以上変わります。同じ条件でも業者の空き状況で動くため、相場を調べる時間より、自分の条件で実額を取るほうが早いです。
優先したいこと向いている方法受け入れること
手間を減らして、厳選された数社で比べたいHALESEE(ハレシー)比較できる社数は少なめ
とにかく多く比べて、できるだけ安くしたい引越し侍の一括見積もり電話とメールの本数

まとめ

  • 原状回復は「借りた当時の状態に戻すこと」ではないとガイドラインで明確化されている
  • 経年変化と通常損耗は貸主負担。修繕費用は賃料に含まれるとされている
  • 借主が負担するのは故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗
  • 経過年数を考慮し、年数が多いほど借主の負担割合は下がる
  • ハウスクリーニング特約は、内容の認識・合意借主の利益を一方的に害さないことが必要とされる
  • 特約が無効と判断された裁判例もある。ただし個別事案によるため、争うなら専門窓口へ
  • 立ち会いでは入居時の写真を出し、内訳を項目・単価・数量で出してもらう
  • 納得していない書面にその場でサインしない
  • 掃除が効くのは油汚れ・カビ・水垢。日焼けやへこみは掃除では変わらない
  • 退去日と引っ越し日をずらすと掃除の時間が作れる

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※ 本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」および公開されている裁判例の情報に基づく一般的な解説です。個別の事案の判断は契約内容と事実関係によって異なります。トラブルになった場合は、お住まいの自治体の消費生活センターや専門家にご相談ください。