URの退去費用は「通常の清掃を怠った汚れ」が分かれ目です|部位ごとの負担区分と、敷金2か月分から原則30日以内の精算
この記事を読むと分かること
- 通常の使用に伴う損耗の復旧費用はUR都市機構が負担すると、公式の冊子に明記されていること
- 負担の分かれ目は「通常の清掃を怠った汚れ」で、部位ごとに例示が公開されていること
- 敷金は月額家賃の2か月分で、契約解除日から原則30日以内に精算されること
- 退去届は退去日の14日以上前までで、出したあとの延期はできないこと
URの退去費用は、通常の使用に伴う損耗の復旧費用をUR都市機構が負担し、故意・過失や通常の使用方法に反する使用による損耗だけを入居者が負担する形で決まります。これは「住まいのしおり」46ページの冒頭2行に書かれている原則で、部位ごとの例示もそこに並んでいます。
この記事は、UR都市機構が居住者向けに配っている「住まいのしおり」(2026年3月版)と「修理細目のしおり」(令和7年10月)、および公式のよくあるご質問(2026年9月13日確認)の記載を整理したものです。総額の相場ではなく、何が負担の対象で、いつ・どう精算されるかを並べています。
URの退去費用は何で決まりますか
「住まいのしおり」46ページは、退去時の原状回復について次の2行を最初に置いています。
- 通常の使用に伴う損耗等の復旧費用は、UR都市機構(機構)が負担することとしており、皆さまにご負担いただくことはありません。
- 故意・過失や通常の使用方法に反する使用など皆さまの責めに帰すべき理由による損耗等の復旧費用は、皆さまにご負担いただきます。
つまり、退去費用が発生するかどうかの分かれ目は「通常の使用かどうか」です。住んだ年数や部屋の広さで自動的に決まる金額は、公表資料のどこにも出てきません。
同じページには、負担の入口になりやすい言葉の定義も添えられています。
「通常の清掃を怠った汚れとは?」
ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水まわり・換気扇・レンジまわりの油汚れの除去等、通常の清掃を怠ったことによって生じた汚損のことをいいます。(住まいのしおり47ページ)
この定義が効いてくる場所は、例示のなかに7か所あります。ふすま・トイレ・浴室・洗面台・バルコニー・専用庭の6か所で「通常の清掃を怠った汚れ」が、キッチンでは「通常の清掃を怠った油汚れ」が、それぞれ入居者負担として挙げられています。
部位ごとの負担区分
「住まいのしおり」46〜47ページの「退去時の負担区分(例示)」を、そのまま表にしたものです。左が入居者負担、右がUR都市機構(機構)負担として例示されている項目です。
| 部位 | お客様負担として例示 | 機構負担として例示 |
|---|---|---|
| 畳 | タバコによるこげ跡/重量物等による畳床の著しい変形/家具を不注意に引いたことによるすり傷 | 通常の使用に伴う畳表の擦り切れ/日焼けによる変色 |
| ふすま | ふすま紙の通常の清掃を怠った汚れ(引き手まわりの手あか汚れは除く)/ふすま紙の破れ | 記載なし |
| 壁(クロス張) | 傷、破れ/クレヨン、マジック等による落書き/タバコ等のヤニによる黄ばみや臭い | テレビの放熱跡(電気焼け)/ポスター跡(日焼け) |
| フローリング | タバコによるこげ跡、インク等のしみ | 記載なし |
| エアコン用スリーブ | エアコン用スリーブキャップの紛失/エアコン・暖房機(機構設置)のリモコンの紛失 | 記載なし |
| バルコニー | 通常の清掃を怠った汚れ | 記載なし |
| トイレ | 便器の破損、通常の清掃を怠った汚れ/便座その他部品の破損、滅失 | 便器取付ビス、止水栓のさび |
| 浴室 | 壁・床の通常の清掃を怠った汚れやカビ/浴槽の鎖、栓その他部品の破損、滅失/浴槽の通常の清掃を怠った汚れ | 記載なし |
| 洗面台 | 洗面器の破損、通常の清掃を怠った汚れ/鎖、栓その他部品の破損、滅失 | 水栓、止水栓のさび、メッキのはがれ |
| 玄関扉 | 郵便受箱の凹み/鍵の紛失 | 本体や金物のさび/丁番のゆるみ |
| キッチン | 壁の通常の清掃を怠った油汚れ/流し台のガス台の通常の清掃を怠った油汚れ、取っ手その他部品の破損、滅失/換気扇のレンジファンその他部品の通常の清掃を怠った油汚れ | 壁の冷蔵庫の放熱跡(電気焼け) |
| 専用庭 | 入居時になかった施設や植物(自然に生えた樹木を含む)の撤去・処分/通常の清掃を怠った汚れ | 記載なし |
※ UR都市機構「住まいのしおり」第一編 居住のご案内 46〜47ページ「退去時の負担区分(例示)」より(2026年3月版・2026年9月13日にUR都市機構の居住者向けページからPDFを取得)。「記載なし」は、そのページに機構負担の例示が載っていないという意味で、機構が負担しないという意味ではありません。
注意したいのは、さびと日焼けの扱いです。便器取付ビスや止水栓のさび、洗面台のメッキのはがれ、壁のポスター跡(日焼け)、畳の日焼けによる変色は、いずれも機構負担の側に例示されています。ここを請求されたら、しおりのこのページが手元の根拠になります。
居住年数が長いと、退去費用は高くなりますか
「住まいのしおり」の負担区分の例示に、居住年数の条件は書かれていません。30年住んでいても6年でも、例示の中身は同じです。
ただし、これは「年数がまったく関係ない」という意味ではありません。UR都市機構は退去時に「UR都市機構の基準による査定」を行うとしていますが、その基準の内訳(単価表や経過年数の扱い)は公表されていることを確認できませんでした。確認できたのは、査定を行うという事実と、原則30日以内に精算するという期限までです。
混同しやすい「見直し」があります。UR都市機構は2018年12月25日に「UR賃貸住宅の修繕負担区分の見直しについて」を発表し、2019年1月31日から適用しています。この文書には「このお知らせはお客様の居住中の修繕負担区分に関するお知らせです。退去時の原状回復費用の負担区分の取扱いに関するものではありません。(退去時の原状回復費用の取扱いに変更はありません。)」と明記されています。居住中の話と退去時の話は、別の表で決まります。
居住中の修繕については、居住年数に触れた記載があります。「修理細目のしおり」(令和7年10月)は、入居者負担の表に載っていない項目はUR負担としたうえで、「畳床」「ふすま骨組み(縁・骨)」「クロス」に関する修繕についても居住年数にかかわらず、申し出に応じて対応するとしています。長く住んでいる人ほど、退去前に使える余地があるということです。
なお、経過年数に応じて借主の負担割合を下げる考え方そのものは、国土交通省のガイドラインが示しています。管理会社を問わず使える根拠なので、線引きの全体像は次の記事にまとめてあります。
クリーニング代と鍵交換代は取られますか
UR賃貸住宅は、入居時には火災保険料・鍵交換費用・クリーニング費用を取りません。退去時には、住戸の状況によって鍵交換費用やクリーニング費用等を支払う場合があります。公式のよくあるご質問「その他に費用はかかるの?」に、この2つが並べて書かれています(2026年9月13日確認)。
ここが、一般的な賃貸との大きな違いです。入居時に定額のクリーニング費を前払いさせる契約や、退去時に部屋の広さで一律に清掃費を請求する契約と比べると、URは「入居時ゼロ・退去時は状況しだい」という形になっています。
| UR賃貸住宅で公表されていること | |
|---|---|
| 入居時 | 火災保険料・鍵交換費用・クリーニング費用はいただいていない |
| 退去時 | 住戸の状況により、鍵交換費用・クリーニング費用等を支払う場合がある |
| 入居時に必要な費用 | 敷金(月額家賃の2か月分)・日割り家賃・日割り共益費のみ |
| 礼金・仲介手数料・更新料 | いずれもなし。契約は1年毎に自動更新(定期借家契約を除く) |
※ UR都市機構 公式サイトのよくあるご質問および「メリット・特徴」ページの記載に基づく(2026年9月13日確認)。キャンペーン期間中は敷金の負担が軽くなる場合があるとの注記があります。
鍵については、しおりに具体的な条件が書かれています。入居時に渡された鍵は住宅とともに貸与されたものなので、退去の際は全部を管理サービス事務所または管理連絡員に引き渡します。当初渡された鍵を紛失している場合は、シリンダー錠の取替えが必要になるため、その費用を支払うことになります。
定額のクリーニング費がある会社と比べると、URの形の特徴がはっきりします。
敷金はいつ、いくら返ってきますか
敷金は月額家賃の2か月分で、契約解除日から原則30日以内に、修理費用などを精算したうえで返還されます。期限を数字で公表している点は、押さえておく価値があります。
敷金から差し引かれるものは、しおり48ページに列挙されています。
- 契約解除日の属する月の日割家賃等
- 負担となる修理費用等
- 未納の家賃等がある場合は、これも含む
精算額が敷金をこえる場合は、不足分を別途支払うことになります。この点については、しおりが「不足分を別途、お支払いいただくこととなります」、よくあるご質問が「退去されるまでに不足分をお支払いいただきます」と書いており、支払いの時期の書き方が2つの資料で違います。どちらが実際の運用かは確認できなかったので、両方を併記します。不足が出そうなときは、退去日までに用意しておくほうが安全です。
URからURへ住み替える場合は、敷金を引き継げます。公式のよくあるご質問は「お預かりする敷金から修理費負担等を控除した残額を、新しいお住まいの敷金に引き継ぐことができます」としています。あわせて、現在の家賃より低いか同額の部屋に引っ越す場合は、収入を確認する書類の提出を省略できます。
退去の手続きは、いつまでに何をしますか
退去届(賃貸住宅賃貸借契約解除届)は、退去する日の14日以上前までに、管理サービス事務所または管理連絡員へ提出します。ここを外すと、住んでいない日の家賃を払うことになります。
契約解除届の提出日から退去する日までの期間が14日に満たない場合は、解除届提出の翌日から起算して14日目が契約解除日になります。契約解除日以前に退去しても、契約解除日までの家賃等を支払うことになる、としおりは書いています。
もうひとつ、取り返しがつかない決まりがあります。
解除届を出したあとは、契約解除の取り消しも、契約解除日(退去日)の延期もできません。提出後は次に住む方のあっせん手続きに入るためで、しおりは「余裕をもって契約解除日を決定してください」としています。転居先の入居日が固まる前に出さないでください。
そのほか、手続きの前後関係は次のとおりです。
- 月の途中で退去する場合、その月の家賃等は日割計算になります
- 団地内有料駐車場や貸倉庫を使っている場合は、別途、契約解除届を提出します
- 退去届を受け付けると、UR都市機構が住宅の損傷の程度を調査に伺います。居住期間中の住宅の汚損・き損などを調査して、負担となる修理費用を決定します
- 電気・電話・ガス・水道・インターネット(UR賃貸住宅向けのサービスに限る)は、退去の数日前までに各供給元へ退去の通知をし、退去日までの使用料を精算します。新聞等の配達停止と精算も同じタイミングです
ライフラインは、止まり方が種類ごとに違います。立ち会いが要るものと要らないものを先に分けておくと、当日あわてません。
役所の手続きは、退去日が決まった時点で動かせます。
退去費用を減らすためにできること
負担の入口が「通常の清掃を怠った汚れ」である以上、掃除で消せる部分は残っています。しおりが名指ししているのは、水まわり・換気扇・レンジまわりの油汚れ、浴室の壁と床のカビ、バルコニーの汚れです。
そのほか、放っておくと費用になるものが4つあります。
- 自分で設置したものは撤去する。しおりは浄水器や集合郵便受箱の錠前を例に挙げています
- 専用庭付き住宅では、入居時になかった植物を撤去する。植栽した草花だけでなく、入居中に生えてきた樹木も対象です
- 粗大ゴミは自分で処分する。一般ゴミ置場には捨てないよう、しおりが特に注意しています
- 鍵は全部返す。紛失しているとシリンダー錠の取替え費用になります
調査の当日にサインを求められても、それだけで負担額に同意したことにはなりません。根拠は国土交通省のガイドラインです。
水まわりと換気扇は、放っておくほど落ちにくくなります。自分で落としきれない部分だけを頼む選び方もあります。対応エリアは東京・神奈川・千葉・埼玉と、群馬・茨城の一部です。
退去届は14日以上前まで、延期はできません。日程が動かせない以上、引っ越しの手配は解除日を決める前後で並行して進めるほうが確実です。荷物の量だけでなく時期でも金額が変わるので、複数社を並べて比べておくと動きやすくなります。
よくある質問
URの退去費用の相場はいくらですか。
UR都市機構は総額の相場を公表していません。公表されているのは部位ごとの負担区分の例示と、敷金(月額家賃の2か月分)から精算するという仕組みです。金額は、調査で確認された汚損・き損の内容によって決まります。
退去の立ち会いはありますか。
退去届を受け付けると、UR都市機構が住宅の損傷の程度を調査に伺うとしおりに書かれています。居住期間中の汚損・き損を調査し、負担となる修理費用を決定するための調査です。日時の決め方は管理サービス事務所の案内によります。
敷金より請求額が多くなることはありますか。
あります。しおりは「精算額が敷金をこえる場合には不足分を別途、お支払いいただくこととなります」としています。よくあるご質問では「退去されるまでに」不足分を支払う、と書かれています。
退去届を出したあとで、退去日を延ばせますか。
できません。しおりは、解除届提出後は次に住む方のあっせん手続きに入るため、契約解除の取り消しや契約解除日の延期はできないと明記しています。
クリーニング代は必ず請求されますか。
必ずではありません。公式のよくあるご質問は、退去時には「住戸の状況により」鍵交換費用・クリーニング費用等を支払う場合がある、という書き方をしています。入居時には、これらの費用はいただいていないとしています。
まとめ
- 通常の使用に伴う損耗等の復旧費用はUR都市機構が負担する。入居者が負担するのは、故意・過失や通常の使用方法に反する使用による損耗
- 負担の分かれ目になりやすいのは「通常の清掃を怠った汚れ」。浴室・キッチン・バルコニー・トイレ・洗面台で名指しされている
- さび・日焼け・電気焼けは機構負担の側に例示されている(止水栓のさび、メッキのはがれ、ポスター跡、テレビや冷蔵庫の放熱跡)
- 負担区分の例示に居住年数の条件は書かれていない。査定の基準そのものは公表を確認できなかった
- 入居時に鍵交換費用とクリーニング費用は取らない。退去時は住戸の状況により発生する場合がある
- 敷金は月額家賃の2か月分。契約解除日から原則30日以内に精算後の額が返還される
- 退去届は退去日の14日以上前まで。提出後の取り消しと退去日の延期はできない
あわせて読みたい
管理会社が違うと、清掃費の取り方も立ち会いの決まりも変わります。単価を公開している会社と比べると、URの形の特徴が見えます。
※ 本記事の手続き・条件・金額は、UR都市機構「住まいのしおり」第一編 居住のご案内(2026年3月版)45〜48ページ、「修理細目のしおり」(令和7年10月)、「UR賃貸住宅の修繕負担区分の見直しについて」(2018年12月25日)、および公式サイトのよくあるご質問・「メリット・特徴」ページの記載に基づきます(いずれも2026年9月13日にUR都市機構の公式サイトから取得)。契約内容や住戸によって扱いが異なるため、実際の判断は契約書と管理サービス事務所への確認をお願いします。原状回復の一般的な考え方は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)によります。