同じマンション内の引っ越しでも、料金は距離ではなく時間で決まります|転居届は14日以内、郵便の転送も別に必要です
この記事を読むと分かること
- 引っ越し運賃は、荷物を運ぶ距離が100km以内なら「時間制運賃」で決まること(距離では決まりません)
- 時間制運賃の区分は4時間制と8時間制の2つしかないこと
- 同じ建物の中でも、住民票は転居届が要ること(住民基本台帳法第23条・14日以内)
- 届出をしないと5万円以下の過料の定めがあること(同法第52条第2項)
- 郵便の転送は、部屋番号が変わるだけでも別に届出が要ること
同じマンションの別の部屋に移るとき、荷物を運ぶ距離はほぼゼロです。それなら手続きも料金も軽く済むはずだ、と考えるのが自然ですが、実際に軽くなるのは移動距離だけです。
この記事は、法令と国土交通省・運輸局の公開資料だけを根拠に、何が省けて何が省けないのかを並べたものです。
同じマンション内の引っ越しで、省ける手続きはありますか
省けるのは転出届と転入届だけです。住民票・郵便・ライフライン・旧の部屋の精算は、建物をまたぐ引っ越しとまったく同じだけ発生します。
| やること | 同じマンション内でも必要か | 根拠 |
|---|---|---|
| 住民票の転居届 | 必要(14日以内) | 住民基本台帳法第23条 |
| 転出届・転入届 | 不要 | 同法第22条・第24条(市町村をまたぐ場合の届出) |
| 郵便の転居届(転送) | 必要 | 日本郵便 転居・転送サービス |
| 電気・ガス・水道の停止と開始 | 必要 | 契約は部屋ごと |
| 旧の部屋の原状回復・敷金精算 | 必要 | 民法第621条・第622条の2 |
| 運転免許証の住所変更 | 必要(速やかに) | 道路交通法第94条第1項 |
同じ市区町村の中で住所が変わるので、届出の種類が「転居届」になるだけです。手続きそのものが消えるわけではありません。
住民票は、部屋番号が変わるだけでも届出が要りますか
要ります。住民基本台帳法第23条は、転居を「一の市町村の区域内において住所を変更すること」と定め、転居をした日から14日以内の届出を義務づけています。
自治体側も明記しています。栃木県那須塩原市の案内はこうです。
- 「同じアパート・マンション等に引き続きお住まいでも部屋番号だけが変わったときやアパート・マンション等の名称が変わったときも届出が必要です。」(届出期間は変更があった日から14日以内)
※ 那須塩原市の公式ページを2026年9月10日に取得して引用。部屋を移らず、建物の名称や部屋番号の表記だけが変わった場合まで対象に含めている点に注意してください。
期限の数え方には自治体ごとの補足があります。横浜市は「14日目が区役所の閉庁日に当たるときは、翌開庁日が届出期間の末日となります」としています(2026年9月10日取得)。
出さないとどうなりますか
住民基本台帳法第52条第2項が「正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する」と定めています。
※ 過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰です。金額は上限であり、実際に科されるかどうかは市区町村の運用によります。
引っ越し料金は、距離が短ければ安くなりますか
荷物を運ぶ距離が100km以内の引っ越しは、距離制ではなく時間制運賃が適用されます。距離が1kmでも50kmでも、同じ時間区分なら基準運賃は同じです。
近畿運輸局の説明はこうなっています。
- 時間制(4時間と8時間)… 荷物を運ぶ距離が100km以内の場合
- 距離制(1車1回の運送毎)… 荷物を運ぶ距離が100kmを超える場合
北海道運輸局が公開している引越運賃料金適用方も同じで、実車キロ(荷物を積んで運送する距離)が100キロメートル以内は時間制運賃、100キロメートルを超える場合は距離制運賃と定めています。
「基礎作業時間」に何が含まれるか
ここが同じ建物内の引っ越しで効いてきます。適用方の定義はこうです。
- 基礎作業時間=「車両が荷主の指定した場所に到着したときからその作業が終了して車庫に帰るまでの時間」
- 4時間制運賃は、基礎作業時間が午前から午後にまたがらない場合であって、かつ4時間以内のときにのみ適用
- 8時間制運賃は、それ以外の場合(午前から午後にまたがる場合、または4時間を超える場合)
車庫からの往復と、積込み・取卸しの作業時間が、そのまま時間に入ります。同じ建物の中でも、トラックは車庫から来て車庫へ帰りますし、荷物を出して入れる作業量は変わりません。短くなるのは、部屋と部屋のあいだの移動時間だけです。
「同じ建物だから半額」にはなりません
時間制運賃の区分は4時間制と8時間制の2つだけです。
距離が短いことが直接効くのは、8時間制で収まっていた作業が4時間制に収まるようになったときで、
そのときに初めて区分がひとつ下がります。距離に比例して下がる仕組みではありません。
割増が乗る条件
適用方と近畿運輸局の説明では、割増はこう定められています。
| 割増 | 率 | 条件 |
|---|---|---|
| 休日割増 | 2割 | 日曜祝祭日に運送した時間または距離に限る |
| 深夜・早朝割増 | 3割 | 午後10時から午前5時までに運送した時間または距離に限る |
| 冬期割増 | 2割 | 運送区間に冬期割増適用地域が含まれる場合(地域ごとに期間の定めあり) |
※ 近畿運輸局「引越料金のしくみ」と、北海道運輸局が公開する引越運賃料金適用方を2026年9月10日に取得。実際の運賃および料金は各社が定める運賃料金表によります(標準引越運送約款第18条第1項)。
見積もりは無料です
標準引越運送約款第3条第4項が「見積料は請求しません」と定めています。例外は発送地または到達地で下見を行った場合の下見費用だけで、その場合も見積りを行う前に金額を通知して了解を得ることとされています。
同じ建物だからと自己判断で相場を決めず、荷物量を見てもらったほうが正確です。時間で決まる運賃なので、金額を左右するのは距離ではなく作業量のほうです。
| 優先したいこと | 向いている方法 | 受け入れること |
|---|---|---|
| 手間を減らして、厳選された数社で比べたい | HALESEE(ハレシー) | 比較できる社数は少なめ |
| とにかく多くの社を並べて相場を掴みたい | 引越し侍 | 連絡が来る社数は多くなる |
郵便の転送は、同じ建物でも必要ですか
必要です。郵便物は部屋番号まで含めて届けられるので、部屋が変われば宛先が変わります。
日本郵便の転居・転送サービスの条件はこうです(2026年9月10日取得)。
- 転送期間は届出日から1年間。転送開始希望日からではありません
- 転居届を提出してから登録までに3〜7営業日かかる
- 期間が過ぎた郵便物等は差出人に返還される。更新には再度の転居届が必要
「届出日から1年」なので、早く出しすぎると転送が効く期間を先に消費します。とはいえ登録に3〜7営業日かかるため、引っ越し日の直前に出すと間に合いません。
旧の部屋は「退去」なので、精算が発生します
同じ建物の中で移っても、旧の部屋の賃貸借契約は終了します。民法の定めはそのまま働きます。
- 第621条(賃借人の原状回復義務)「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
- 第622条の2第1項は、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたときに、敷金から債務額を控除した残額を返還しなければならないと定めています
通常損耗と経年変化は原状回復の対象から除かれている、というのが条文の書き方です。同じ大家・同じ管理会社が相手でも、この線引きは変わりません。
※ 新しく借りる部屋の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)をどう扱うかは、法令ではなく個別の契約で決まります。同じ建物内の住み替えでどこまで免除されるかは、契約前に書面で確認してください。
電気・ガス・水道は、部屋ごとの契約です
供給地点が部屋単位で決まっているため、同じ建物でも停止と開始の手続きが要ります。とくにガスは、開栓に立ち会いが必要です。
旧の部屋の使用停止日と、新しい部屋の使用開始日を、それぞれ別に伝えることになります。同じ日にそろえられるかどうかは、地域と会社によって違います。とくにガスの開栓は作業員が入るため、希望の日時が埋まっていることがあります。引っ越し日が決まった時点で先に押さえてください。
水道は自治体が条例で料金を定めているので、会社を選び直す余地はありません。電気と都市ガスは会社を選べるため、移るタイミングは契約を見直せる数少ない機会でもあります。
荷物を自分で運ぶときに、確認しておくこと
廊下やエレベーターは共用部分です。国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型・令和7年改正)の別表第2は、共用部分の範囲として「エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室…」を挙げています。
共用部分の使い方は管理規約と使用細則で決まります。養生の要否、作業できる時間帯、エレベーターの専有使用の申請が要るかどうかは、管理会社か管理組合に先に聞いてください。
※ 標準管理規約は国土交通省が示すひな形で、実際の規約は各マンションで異なります。自分の建物の規約を確認してください。
よくある質問
Q. 同じマンション内なら、転出届と転入届は要りませんか。
要りません。同じ市区町村の中での住所変更なので、転居届だけです(住民基本台帳法第23条)。ただし届出そのものは省けません。
Q. 転居届を出さないとどうなりますか。
住民基本台帳法第52条第2項が、正当な理由なく届出をしない者を5万円以下の過料に処すると定めています。金額は上限で、実際の運用は市区町村によります。
Q. 引っ越し業者に頼まず、自分で運んでもいいですか。
自分の荷物を自分で運ぶことに法律上の制限はありません。ただし廊下・階段・エレベーターは共用部分なので、養生や作業時間帯は管理規約と使用細則に従います。事前に管理会社へ確認してください。
Q. 同じ建物なら見積もりを取らなくても金額は分かりますか。
分かりません。運賃は距離ではなく作業時間で決まるため、荷物量と作業人数で金額が動きます。見積料は請求されないと標準引越運送約款第3条第4項が定めているので、取って確かめるほうが確実です。
Q. 郵便の転送届は、部屋番号だけ変わる場合も必要ですか。
必要です。宛先には部屋番号が含まれます。転送は届出日から1年間で、登録までに3〜7営業日かかります。
Q. 旧の部屋の敷金は、新しい部屋にそのまま振り替えられますか。
法令に定めはありません。民法第622条の2第1項は、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに残額を返還すると定めているだけです。振替の可否は契約と大家の判断によります。書面で確認してください。
まとめ
- 省けるのは転出届と転入届だけ。同じ市区町村内なので転居届になる(住民基本台帳法第23条・14日以内)
- 部屋番号だけが変わる場合も届出が要ると自治体が明記している
- 届出をしないと5万円以下の過料の定めがある(同法第52条第2項)
- 距離が100km以内の引っ越しは時間制運賃。区分は4時間制と8時間制の2つだけ
- 基礎作業時間には「車庫に帰るまで」が入る。短くなるのは部屋間の移動時間だけ
- 休日2割・深夜早朝3割・冬期2割の割増がある
- 見積料は請求されない(標準引越運送約款第3条第4項)
- 郵便の転送は届出日から1年、登録に3〜7営業日
- 旧の部屋は退去なので、原状回復と敷金精算が発生する(民法第621条・第622条の2)
- 廊下・エレベーターは共用部分。使い方は管理規約と使用細則で決まる
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※ 本記事の法令は住民基本台帳法・民法・道路交通法の条文(2026年9月10日にe-Gov法令検索から取得)に基づきます。運賃の仕組みは近畿運輸局「引越料金のしくみ」および北海道運輸局が公開する引越運賃料金適用方、共用部分の範囲は国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型・令和7年改正)別表第2、郵便の転送条件は日本郵便の転居・転送サービスのページ(いずれも2026年9月10日取得)によります。実際の運賃料金表・管理規約・賃貸借契約の内容は個別に異なります。