引っ越し当日の追加料金は、上がるときだけ条件が付きます|標準引越運送約款が定める見積額の修正ルール

この記事を読むと分かること
  • 見積額の修正は、上がる方向と下がる方向で条件が違うこと(第19条第4項)
  • 当日に自分から頼んだ作業は「修正」ではなく、別の料金であること(第18条第3項)
  • 「横持ち料」は約款の条文に1回も出てこないこと(全文を機械カウントで確認)
  • 受取日の3日前の確認と、解約手数料が連動していること(第3条第7項・第21条第1項)
引っ越し当日に「これは見積りに入っていないので追加になります」と言われたとき、その場で判断できる材料は多くありません。判断の基準は、国土交通省が定める標準引越運送約款にあります。
この記事は、その約款の条文だけを根拠に、どちらの方向の修正に条件が付いているのかを整理したものです。

引っ越し当日に追加料金を請求できるのはどんなときですか

標準引越運送約款では、実際にかかった金額が見積額を超える方向に修正できるのは、荷送人の責任による事由で見積額の算出の基礎に変化が生じたときに限られます(第19条第4項第2号)。
条文はこうなっています。
  • 第19条第4項第1号「実際に要する運賃等の合計額が見積書に記載した運賃等(以下「見積運賃等」という。)の合計額より少ない場合 実際に要する運賃等の合計額及びその内容に修正します。」
  • 第19条第4項第2号「実際に要する運賃等の合計額が見積運賃等の合計額を超える場合 荷送人の責任による事由により見積運賃等の算出の基礎に変化が生じたときに限り、実際に要する運賃等の合計額及びその内容に修正します。」
※ 標準引越運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十七号、最終改正 令和七年国土交通省告示第百九十三号)の原文を引用(2026年9月10日に国土交通省の公開PDFから取得)。

★同じ条文なのに、上と下で書き方が違います

ここがこの条文の要点です。2つの号を並べると、条件が付いているのは片方だけだと分かります。
実際の金額条文が定める修正条件
見積額より少ない実額に修正します条件なし
見積額を超える実額に修正します荷送人の責任による事由により、算出の基礎に変化が生じたときに限り
下がる方向には「〜に限り」が付いていません。荷物が減った、作業が減った、というときは、その分を反映した金額に修正するというのが条文の書き方です。
上がる方向にだけ条件が付いている、という非対称が、この条文の実務上の意味です。
「当日の追加料金は払わなくていい」という話ではありません
条文が定めているのは、超える方向の修正には条件が付くということです。
荷送人側の事情で算出の基礎が変わっていれば、修正は行われます。払う場合と払わない場合の両方があります。
その場で判断するのではなく、何が変わったのかを確かめることが先です。

「荷送人の責任による事由」とは何を指しますか

約款はこの語を定義していません。確認できたのはここまでで、条文に定義規定はありませんでした。
ただし、手がかりは同じ条にあります。第19条第3項は「見積りを行った後に当該内容に変更が生じた場合は、当該変更に応じて所要の修正を行います」としています。つまり「見積書に書かれた内容」が、変化を測る基準になります。
その見積書に何を書くかは、第3条第2項が決めています。
見積書の記載事項
一・二申込者と荷受人の氏名または名称、住所、電話番号
荷物の受取日時及び引渡日
発送地及び到達地の地名、地番、連絡先電話番号
運賃等の合計額、内訳及び支払方法
解約手数料の額
当店の名称、事業許可番号、住所、電話番号、見積り担当者の氏名、問い合わせ窓口電話番号
荷送人及び荷受人並びに当店が行う作業内容
その他見積りに関し必要な事項
受取日時・発送地・到達地・作業内容が、見積書に書かれている前提です。当日にこれらが変わっていれば「算出の基礎の変化」を説明できます。逆に、見積書に書かれていない条件は、変化したかどうかを比べる相手がありません。
※ 個別の事情が「荷送人の責任による事由」に当たるかどうかは、約款の条文だけでは決まりません。実際の判断は契約した会社と、状況によって異なります。

当日に自分から追加で頼んだ作業は、別の話です

見積額の修正とは別の条文があります。
  • 第18条第3項「当店は、申し込みを受けた運送に附帯するサービスを行ったときは、これに係る料金を収受します。」
当日にその場で頼んだ荷造りや不用品の処分は、第19条第4項の「修正」ではなく、新しく申し込んだサービスの料金です。この2つを混ぜて考えると、話が噛み合いません。
頼む前に金額を聞いてください。約款は附帯サービスの料金額を定めていません。金額は各社の運賃料金表によります。

「横持ち料」は約款で決まっていますか

標準引越運送約款の条文に「横持ち」という語は1回も出てきません。
国土交通省が公開している約款の全文(10ページ・空白を除いて約7,800字)から、機械的に数えた結果です。
数えた語約款本文での出現回数
横持0回
待機0回
積込料0回
取卸料0回
※ 2026年9月10日に国土交通省の公開PDFを取得し、全ページのテキストから空白を除去して数えた実測値です。
では料金はどこで決まるのか。第18条第1項が「運賃及び料金並びにその適用方法は、当店が別に定める運賃料金表によります」としています。個々の作業の料金名と金額は、約款ではなく各社の料金表にあります。
そして、その料金表は読者が事前に見られます。
  • 第18条第2項「運賃及び料金並びにその適用方法は、営業所その他の事業所の店頭に掲示し、又は店頭に掲示するとともに、当店のウェブサイトに掲載します。」
掲示か掲載が求められているので、契約する前に確かめられます。当日に初めて聞く名前の料金があったら、その料金表のどこに載っているかを聞くのが筋です。
別の約款と混ぜないでください
「横持ち」は、標準貨物自動車運送約款の側で付帯業務として整理された語です。
国土交通省の「標準貨物自動車運送約款等の改正について」(平成29年11月4日施行)で扱われた改正で、
引越運送の約款とは別の文書です。引っ越しの話として持ち出すと、根拠がずれます。

受取日の3日前に、業者から確認の連絡が来ます

見落とされやすい条文がここにあります。
  • 第3条第7項「当店は、見積書に記載した荷物の受取日の三日前までに、申込者に対して、見積書の記載内容の変更の有無等について確認を行います。」
この確認は業者側の義務として書かれています。そしてこの連絡が、荷物の増減を伝えられる最後の機会でもあります。ここで伝えておけば、当日に「聞いていない」という話になりません。
さらに、この条文は解約手数料と連動しています(次章)。

当日にキャンセルすると、いくら取られますか

第21条第2項は、解約手数料と延期手数料の上限を、指図した日ごとに定めています。
解約または延期を伝えた日手数料
受取日の前々日見積運賃等の20パーセント以内
受取日の前日見積運賃等の30パーセント以内
受取日の当日見積運賃等の50パーセント以内
いずれも「以内」です。上限であって、その率を必ず取られるという意味ではありません。実際の額は各社の定めによります。
ここで対象になる「見積運賃等」の料金部分は、積込み、取卸し、搬出、搬入、荷造り及び開梱に要するものに限ると条文が括弧書きで限定しています。
そして、手数料を請求できるのは、解約や延期の原因が荷送人の責任によるものであって、指図が前々日・前日・当日に行われたときに限られます(第21条第1項)。
  • 第21条第1項ただし書「ただし、第三条第七項の規定による確認を行わなかった場合には、解約手数料又は延期手数料を請求しません。」
3日前までの確認をしなかった会社は、解約手数料も延期手数料も請求しない、というのが条文の定めです。前章の確認連絡は、ここに効いてきます。
※ 第21条第3項により、解約の原因が荷送人の責任による場合は、手数料とは別に、すでに実施または着手した附帯サービスの費用(見積書に明記したものに限る)が収受されます。第4項でこちらにも同じただし書が準用されます。

請求書は、見積書と同じでなければいけませんか

第19条第2項は、請求書の記載事項を定めています。その第3号がこれです。
  • 「運賃等の合計額及びその内訳(運賃等の内容ごとに区分してわかりやすく記載します。)」
そのうえで、第19条第3項が「前項各号について、当店は見積書に記載した内容に準拠して記載します」としています。請求書は見積書に準拠する、というのが原則で、変更があったときだけ所要の修正を行うという構造です。
見積書の側でも、第3条第3項が内訳の書き方を定めています。
  • 「積込み、取卸し、搬出及び搬入作業、荷造り作業、開梱作業等に応じて運賃等の内容ごとに区分してわかりやすく記載します。」
合計額だけの見積書は、この条文の想定とは違います。区分された内訳があって初めて、当日に「どこが変わったのか」を突き合わせられます。

見積りの段階で、業者がしてはいけないこと

第3条には、見積りそのものについての定めもあります。
条文内容
第3条第4項見積料は請求しません。ただし発送地または到達地で下見を行った場合に限り、その費用を請求することがある。この場合は見積りを行う前に金額を通知し、了解を得る
第3条第5項見積りの際に内金、手付金等を請求しません(下見の費用を除く)
第3条第6項見積り時に、この約款を提示します
下見の費用は、下見の前ではなく「見積りを行う前」に通知して了解を得る、と書かれています。了解した覚えがないのに請求される、という形は想定されていません。

この約款が当てはまらない引っ越しもあります

第1条ただし書に除外が書かれています。
  • 「ただし、事業所等の移転又は当店が提供する定型の容器を用いて定額で行う運送であって、この約款によらない旨をあらかじめ告知した場合には、適用されません。」
専用のボックスやカーゴを使って定額で運ぶ形のサービスは、この除外に当たることがあります。その場合、ここまでの条文はそのまま当てはまりません。
※ 除外に当たるには「この約款によらない旨をあらかじめ告知した場合」という条件も付いています。個々のサービスがどちらに当たるかは、申し込む前にその会社の約款を確認してください。
また、第1条第3項は「法令に反しない範囲で、特約の申込みに応じることがあります」としています。標準の約款は出発点であって、契約の内容が特約で変わることもあります。

当日にもめないための段取り

やること根拠
1見積書に区分された内訳を書いてもらう第3条第3項
2解約手数料の額が見積書にあるか見る第3条第2項第6号
3その会社の運賃料金表をウェブか店頭で見ておく第18条第2項
43日前の確認の連絡で、荷物の増減を伝える第3条第7項
5当日に追加を頼むときは、先に金額を聞く第18条第3項
6請求書を見積書と並べて見る第19条第2項第3号・第3項
1と2は、見積もりを取る段階でしかできません。当日に取り返せる項目ではないので、比較する社を決めるところから逆算しておくと早いです。
優先したいこと向いている方法受け入れること
手間を減らして、厳選された数社で比べたいHALESEE(ハレシー)比較できる社数は少なめ
とにかく多くの社を並べて相場を掴みたい引越し侍連絡が来る社数は多くなる

よくある質問

Q. 当日に荷物が増えた場合、追加料金は発生しますか。
発生することがあります。第19条第4項第2号は、荷送人の責任による事由で見積額の算出の基礎に変化が生じたときに限り、実額に修正すると定めています。荷物が増えたことが算出の基礎の変化に当たるかどうかは、見積書にどう書かれていたかによります。
Q. 荷物が思ったより少なかったときは、安くなりますか。
条文はそうなっています。第19条第4項第1号は、実額が見積額より少ない場合は実額に修正すると定めており、この号には条件が付いていません。実際の運用は会社によりますので、請求書の内訳を見積書と突き合わせてください。
Q. 見積書に「一式」としか書かれていません。問題ありませんか。
第3条第3項は、積込み・取卸し・搬出・搬入作業・荷造り作業・開梱作業等に応じて区分して記載するとしています。合計額だけの見積書は、この条文の想定とは違います。内訳を書いてもらってください。
Q. 見積もりを取るだけで料金はかかりますか。
第3条第4項が「見積料は請求しません」と定めています。例外は、発送地または到達地で下見を行った場合の下見費用だけで、その場合も見積りを行う前に金額を通知して了解を得ることとされています。
Q. 当日にキャンセルすると、必ず見積額の50パーセントを取られますか。
条文は「50パーセント以内」です。上限を示したもので、実際の額は各社の定めによります。また第21条第1項ただし書により、受取日の3日前までの確認が行われていなかった場合は、解約手数料も延期手数料も請求されません。
Q. 専用ボックスの定額プランでも、この約款が使えますか。
使えないことがあります。第1条ただし書は、定型の容器を用いて定額で行う運送であって、この約款によらない旨をあらかじめ告知した場合を適用範囲から除いています。申し込む前に、その会社の約款を確認してください。

まとめ

  • 見積額を超える方向の修正には条件が付き、下回る方向には付いていない(第19条第4項)
  • 超える方向の条件は「荷送人の責任による事由により、算出の基礎に変化が生じたとき」
  • 「荷送人の責任による事由」は約款に定義がない。基準になるのは見積書の記載内容
  • 当日に自分から頼んだ附帯サービスは、修正ではなく別の料金(第18条第3項)
  • 「横持ち」は約款の条文に0回。料金名は各社の運賃料金表で決まる
  • その料金表は店頭掲示かウェブ掲載が求められている(第18条第2項)ので、事前に見られる
  • 受取日の3日前までの確認は業者側の定め(第3条第7項)
  • その確認をしなかった場合、解約手数料・延期手数料は請求されない(第21条第1項ただし書)
  • 解約手数料は前々日20パーセント以内・前日30パーセント以内・当日50パーセント以内
  • 定型の容器を使う定額のサービスは、約款の外にいることがある(第1条ただし書)

あわせて読みたい

荷物量とトラックの大きさの関係は、こちらで整理しています。
見積もりを取る前に確かめることは、こちらにまとめました。
荷造りの責任の線引きも、同じ約款で決まっています。
断ることができる荷物も、条文に並んでいます。
料金の決まり方そのものを公開している会社もあります。
※ 本記事の条文はすべて標準引越運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十七号、最終改正 令和七年国土交通省告示第百九十三号)の原文に基づきます。2026年9月10日に国土交通省が公開するPDFを取得して確認しました。個々の契約は特約や各社の運賃料金表によって内容が異なります。実際の取り扱いは契約する会社にご確認ください。