新電力の「1kWhあたり10円安い」は本当か|燃料費調整まで入れたら順位が逆になりました

この記事を読むと分かること
  • 単価表を並べた比較では、順位が逆になることがあること
  • 同じ統計から出発しても、会社ごとに平均燃料価格が違うこと
  • 燃料費調整に上限があるのは、規制料金だけだということ
電力会社の比較記事は、たいてい基本料金と1kWhあたりの単価を並べた表で終わります。
その表だけで選ぶと、逆の結論になることがあります。2026年9月分の数字で実際に計算しました。

単価表だけを並べると、こう見えます

会社・プラン基本料金(30A)120kWhまで120〜300kWh300kWh超
東京電力EP 従量電灯B935.25円29.80円36.40円40.49円
東京ガス 基本プラン935.22円29.70円35.69円39.50円
グリーンオクトパス 2026-04873円(29.10円×30日)19.27円24.47円27.86円
※ いずれも税込。各社公式サイトの記載に基づく(2026年9月3日確認)。
グリーンオクトパスの第1段階は19.27円。東京電力より10.53円も安く見えます。
基本料金も、オクトパスは1日あたり29.10円なので30日で873円。東京電力より62円安い。
この表だけなら、選ぶべきは明らかに見えます。

ところが、単価表の外に同じ大きさの項目があります

電気料金には燃料費調整額があります。東京電力の料金単価表にも、こう書かれています。
「※1ヶ月ごとの料金(税込)を指します。また、実際の電気料金は、各表中の電力量料金に燃料費調整額を加えて算定します。
— 東京電力エナジーパートナー「料金単価表‐電灯」より原文引用(2026年9月3日確認)
つまり単価表の数字は、燃料費調整のの値です。比較記事の表は、ここで止まっています。

2026年9月分の燃料費調整単価

会社燃料費調整単価
グリーンオクトパス(東京電力エリア)+5.78円/kWh
東京ガス(東京電力エリア)−6.46円/kWh
東京電力EP(低圧)−6.46円/kWh
※ 税込。国の電気・ガス料金支援による値引きを除いた値。各社の2026年9月分の公表値(2026年9月3日確認)。
符号が逆です。片方は足し算、もう片方は引き算になります。

足すと、順位が入れ替わります

会社単価表の第1段階燃料費調整実質
東京ガス 基本プラン29.70円−6.46円23.24円/kWh
東京電力EP 従量電灯B29.80円−6.46円23.34円/kWh
グリーンオクトパス19.27円+5.78円25.05円/kWh
10.53円安く見えた単価が、実質では1.7円高くなりました。

なぜ符号が逆になるのか

出発点は全社同じです

燃料費調整は、原油・液化天然ガス・石炭の貿易統計価格から計算します。2026年9月分に使われたのは、2026年4月から6月の平均です。
項目価格
平均原油価格112,839円/kl
平均液化天然ガス価格93,153円/t
平均石炭価格22,185円/t
この3つは全社共通です。

計算式の重みが違います

同じ3つの数字から「平均燃料価格」を出すのですが、掛ける係数が会社によって違います。
会社平均燃料価格の算式出てくる値
オクトパスエナジー0.1970×原油 + 0.4435×ガス + 0.2512×石炭69,100円/kl
CDエナジーダイレクト0.0048×原油 + 0.3827×ガス + 0.6584×石炭50,800円/kl
オクトパスは原油の比重が高く、CDエナジーは石炭の比重が高い。同じ月の同じ統計から、18,300円も違う数字が出ます。
東京ガスが公表している東京電力エリアの平均燃料価格も50,800円/klでした。

基準そのものが倍近く違います

会社基準燃料価格基準単価
グリーンオクトパス44,200円/kl0.232円/kWh
東京ガス86,100円/kl0.183円/kWh
CDエナジーダイレクト86,100円/kl0.183円/kWh
燃料費調整は、実勢の平均燃料価格がこの基準を上回れば足し算、下回れば引き算になります。
実勢が69,100円なら、44,200円を基準にしている会社は足し算。50,800円と読んで86,100円を基準にしている会社は引き算。符号が逆になるのは、これだけの理由です。

実際の金額で確かめました

30アンペア・月200kWh・30日で計算します。再生可能エネルギー発電促進賦課金は全社共通なので外しました。
会社月額
東京ガス 基本プラン6,062円
東京電力EP 従量電灯B6,131円
グリーンオクトパス6,299円
この積み上げ方が正しいかは、東京電力が公表している計算例で確かめられます。従量電灯B・30アンペア・260kWhのモデルです。
基本料金935円25銭 + 電力量料金(29円80銭×120kWh、36円40銭×140kWh + 燃料費調整額 −10円96銭×260kWh) + 再生可能エネルギー発電促進賦課金1,086円 = 7,843円
— 東京電力エナジーパートナー「燃料費調整のお知らせ」の計算例より(2026年9月分・2026年9月3日確認)
同じ式です。賦課金は1,086円÷260kWhで4.18円/kWh。これも公表値と一致します。

賦課金と国の支援まで入れた、実際の請求額

さきほどの表は比較のために賦課金と支援を外していました。実際に請求される金額まで出すと、こうなります。30アンペア・月200kWh・2026年9月分です。
会社基本料金電力量料金燃料費調整賦課金合計
東京ガス 基本プラン935.22円6,419.20円−2,192円836円5,998円
東京電力EP 従量電灯B935.25円6,488円−2,192円836円6,067円
グリーンオクトパス873円4,270円+1,156円836円6,235円
※ 燃料費調整は東京電力・東京ガスが国の支援を含んだ単価(−10.96円/kWh)。オクトパスは燃料費調整に支援を含めないため、合計から支援分900円(4.50円×200kWh)を差し引いています。
オクトパスの合計6,235円は、公式シミュレーターが出す見積もりと1円まで一致しました。同じ条件で東京電力より168円、東京ガスより237円高いという結果です。

もうひとつ、上限の有無が違います

ここは金額の話より効くかもしれません。CDエナジーダイレクトが自社サイトにこう書いています。
「当社の燃料費調整額には、上限が設定されていませんが、東電EPの「従量電灯B」の燃料費調整額には”上限”が設定されているため、燃料価格の高騰により当社の電気料金が割高になる場合があります。
— CDエナジーダイレクト「燃料費調整制度について」より原文引用(2026年9月3日確認)
燃料費調整に上限があるのは、東京電力の従量電灯Bのような規制料金だけです。
グリーンオクトパスの料金メニュー定義書も別表まで読みましたが、上限の規定は見当たりませんでした。
高騰したときに止まるのは、規制料金のほうです
燃料価格が上がっていく局面では、規制料金だけが上限で止まり、新電力は止まりません。
切り替えたあとで逆転するのは、値上げされたからではなく、もともとこういう作りになっているからです。

国の支援の扱いも会社で違います

国の電気・ガス料金支援による値引きがありますが、見せ方が統一されていません。
  • 東京電力・東京ガスは、燃料費調整単価の中に含めて表示します(2026年9月分は4.50円/kWh、10月分は3.50円/kWh)
  • オクトパスは燃料費調整には含めず、電気料金の総額から割り引きます
オクトパス公式の説明です。
「上記の燃料費調整額のお知らせには割引単価※ を含んでおりません。弊社では燃料費調整額ではなく、電気料金総額から割引を行います。
— オクトパスエナジー「お知らせ・約款類」より原文引用(2026年9月3日確認)
比較サイトで「燃料費調整が◯円」という数字を見たら、支援込みなのか支援抜きなのかを確かめてください。同じ会社でも4.50円ずれます。

では、どうやって比べるか

方法はひとつしかありません。各社の公式シミュレーターで、同じ使用量の見積もりを取ることです。
単価表を並べても燃料費調整が入らないので比較になりませんし、燃料費調整は毎月変わります。
オクトパスの場合は郵便番号だけで見積もりが出ます。申し込み情報は要りません。使用量が分からなければ世帯人数から選べます。公式が置いている想定値はこうでした。
世帯想定使用量
一人暮らし約200kWh/月
二人から三人暮らし約290kWh/月
四人以上約410kWh/月
契約容量については「最も一般的な契約容量(30A)を元にお見積をお出しします」と書かれています。

引っ越しのときに決まってしまうこと

電力会社は後からでも変えられます。でも契約アンペアは、引っ越しのときに決めます。
基本料金はアンペアで決まるので、ここを外すと毎月効いてきます。
そもそもアンペアという考え方がない地域もあります。関西から関東、関東から関西へ移る人は、契約の形そのものが変わります。
電気は立会いが要らない代わりに、申し込みをしないと使えません。

まとめ

  • 単価表を並べた比較は、燃料費調整が入っていないので成立しない
  • 2026年9月分では、オクトパスが+5.78円、東京電力と東京ガスが−6.46円。符号が逆
  • 実質単価は東京ガス23.24円、東京電力23.34円、グリーンオクトパス25.05円。単価表と順位が逆になる
  • 理由は、平均燃料価格の算式の重みと、基準燃料価格(44,200円と86,100円)が違うこと
  • 燃料費調整に上限があるのは規制料金だけ。高騰時に守られるのは従量電灯Bのほう
  • 賦課金と国の支援まで入れた30アンペア・月200kWhの実額は、東京ガス5,998円、東京電力6,067円、グリーンオクトパス6,235円
  • 国の支援は、燃料費調整に含める会社と総額から引く会社がある
  • 比べるなら、各社の公式シミュレーターで同じ使用量の見積もりを取る
数字は2026年9月分の条件です。燃料費調整は毎月変わるので、順位も月によって変わります。この記事の結論は「オクトパスが高い」ではなく、「単価表では決められない」です。

同じ会社の中でも、名前で選ぶと逆になります

会社をまたぐ比較の前に、同じ会社の中のプラン選びでも似たことが起きます。世帯人数の名前が付いたプランが、その世帯にとって高いことがあります。

基本料金そのものが無いプランもあります

基本料金が0円のプランは、燃料費調整もないぶん計算がいちばん単純です。ただし損得は使用量ではなく、契約アンペアで決まります。

あわせて読みたい

ブレーカーの色で今の契約アンペアが分かります。
引っ越しで期限があるものだけをまとめました。
※ 本記事の単価は2026年9月分の公表値にもとづきます(2026年9月3日確認)。燃料費調整単価は毎月改定されるため、最新の値は各社の公式サイトでご確認ください。