関西電力の電気料金の原価算定誤りは1契約種別・1月分あたり最大1円です|公表文書に載っている数字と、中部電力の件との違い
この記事で分かること
- 関西電力が公表した電気料金への影響は「1契約種別・1月分あたり最大1円」であること
- 「3カ年で約14百万円」は返還の総額ではなく、規制料金原価の変動額であること
- 返還の方法も時期も、2026年9月17日時点では決まっていないこと
2026年9月17日、関西電力が「規制分野における電気料金の原価算定誤り」を公表しました。2024年4月1日から適用している電気料金について、原価の算定に誤りがあったという内容です。
公表文書に載っている影響額は2つあります。ひとつは「規制料金原価の変動額への影響は、3カ年で約14百万円、単年で約5百万円」、もうひとつは「お客さま1契約種別・1月分あたり最大1円」です。この2つは単位も意味も違うので、混ぜずに読む必要があります。
何が起きたのですか
関西電力が2024年4月1日から適用している特定小売供給約款について、その届出の材料になった原価の算定に誤りがあった、というのが今回の内容です。
誤りの中身は、公表文書に「発電側課金に適用される割引単価の判定を一部誤ったことにより、発電側課金に係る原価を本来より多く算定していました」と書かれています。発表の表題は「規制分野における電気料金の原価算定誤り」で、報道でよく使われる「過大請求」という語は、公表文書にはありません。
発電側課金は、送電線や変電所などの送配電設備の維持・拡充に必要な費用の一部について、発電事業者にも負担を求める制度で、2024年4月から導入されたものです。関西電力はこれを注記として説明しています。発電事業者が負担する費用を見込んだ分が、小売の電気料金の原価にも入っていました。
電気料金への影響は、1契約種別・1月分あたり最大1円です
関西電力が公表しているのは「2024年4月に設定した規制分野のお客さまの電気料金への影響については、現時点で、お客さま1契約種別・1月分あたり最大1円と見込んでいます」という一文です。契約1件あたりでも、1世帯あたりでもなく、契約種別ごとの1か月分の料金に対する影響として示されています。
もうひとつの金額である「3カ年で約14百万円」「単年で約5百万円」は、規制料金原価の変動額への影響です。返還の総額として公表されたものではありません。
| 公表文書の項目 | 公表されている内容 |
|---|---|
| 規制料金原価の変動額への影響(3カ年) | 約14百万円 |
| 同(単年) | 約5百万円 |
| 電気料金への影響 | 現時点で、1契約種別・1月分あたり最大1円と見込む |
| 返還の方法・時期 | 今後検討する(決まっていない) |
| 対象の契約件数 | 公表文書に記載なし |
| 返還の総額 | 公表文書に記載なし |
公表文書に見当たらない数字があります
2026年9月17日の時点で、関西電力の企業向けサイトのプレスリリース欄とお知らせ欄、個人のお客さま向けサイトのお知らせ欄の3か所を確認しました。本件について掲載されているのは同日付のプレスリリース2本で、そこに載っている金額は上の表のとおりです。
返還の総額や対象件数を示す数字は、この3か所では見つかりませんでした。記者会見や取材で説明された可能性は残るため、公表文書以外の数字が誤りだという意味ではありません。ここで言えるのは、関西電力が文書として公表している数字はこれだけだ、ということです。
自分は対象になりますか
対象になるかどうかは、契約している料金メニューが「規制分野」に当たるかどうかで分かれます。公表文書が「規制分野のお客さまの電気料金への影響」と書いているためです。
関西電力は料金メニューの案内のなかで、「電気特定小売供給約款」にもとづく料金メニュー(従量電灯などの規制分野の料金メニューなど)と、「電気供給条件(低圧)」にもとづく料金メニュー(なっトクでんき、はぴeタイムRやeおとくプランなど)を、別のものとして説明しています。今回の誤りは前者の約款の届出で起きたものです。
自分がどの料金メニューで契約しているかは、検針票(電気ご使用量のお知らせ)やWeb明細の契約種別の欄に書かれています。ただし、公表文書は対象の契約種別を列挙していません。個別の契約が対象かどうかは、返還方法の発表を待つ必要があります。
関西エリアでは、そもそも契約アンペアという考え方がありません。関東で使われる「30アンペア」「60アンペア」といった言い方が通じないため、自分の契約を確かめるときは電流ではなく料金メニュー名で見ます。この違いはアンペア変更ができない地域がありますで説明しています。
何を間違えたのですか
別紙「原価算定誤りの概要」は、原因をこう書いています。「電圧区分を判定する諸元に記載された『受電電圧154kV』の情報をもとに、『受電電圧が標準電圧140kV』を超えるものと判定していたが、当該諸元に記載された受電電圧は『標準電圧』ではなく『公称電圧』であったもの」。
標準電圧は約款上の基準電圧で、割引の単価判定に使うもの。公称電圧は電力系統や電気設備を技術的に表すときの代表する電圧。関西電力はこの2つを注記で分けて説明しています。判定に使うべき値と、資料に書かれていた値が別物だった、というのが今回の誤りです。
その結果、割引額を少なく算定し、発電側課金を実際より高く算定していました。別紙には割引区分ごとの単価例が載っています。
| 割引区分 | 本来適用すべき割引単価(標準電圧140kV以下) | 原価算定時に適用した割引単価(140kVを超える場合) |
|---|---|---|
| A-1 | 32.19円 | 32.19円 |
| A-2 | 11.55円 | 5.78円 |
| A-3 | 5.78円 | 2.89円 |
※ 単位は1キロワットあたり・1か月あたりの税込額です。関西電力「規制分野における電気料金の原価算定誤り」別紙(2026年9月17日発表・同日確認)より。
この表を読むときに外してはいけない点がひとつあります。ここに並んでいるのは発電側課金の割引単価、つまり発電事業者が払う側の単価です。家庭が払う電気料金の単価ではありません。A-2の11.55円が5.78円になった、といった差が、そのまま家庭の請求額の差になるわけではないということです。
なぜ、いま分かったのですか
きっかけは2026年11月1日に予定されている託送料金の見直しです。関西電力はこれを規制分野の電気料金へ反映する原価算定を進めるなかで、2024年分の誤りに気付いたと書いています。
託送料金は送配電網の使用料で、2026年11月の改定に向けた手続きは今も進んでいます。経済産業省は2026年9月4日付で一般送配電事業者の収入の見通しを承認し、それを算定の基礎とした託送供給等約款の変更届出を、2026年9月11日付で8社ぶん受理しました。届け出たのは北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、関西電力送配電、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の8社です。
経済産業省は同じ日に報告を求めています
経済産業省は2026年9月17日、関西電力に対して電気事業法第106条第3項にもとづく報告を求めました。対象は、関西電力が2024年2月6日付で変更届出を行った特定小売供給約款について単価設定が誤っていた事案です。
求められている報告は3つで、関西電力の公表文書では「1.本事案に関する事実関係及び経緯」「2.本事案におけるお客さまへの影響、対応方針及び対応状況」「3.本事案の原因及び再発防止策」と整理されています。関西電力も同じ日に、報告徴収を受領したことを公表しました。
対応方針が報告の対象に入っているため、返還の方法はこの報告のなかで整理されることになります。逆に言えば、いまの時点で返還の方法が決まっていないのは自然なことです。
中部電力ミライズの件とは、原因も金額も違います
同じ「特定小売供給約款の変更届出における原価算定誤り」は、2026年9月10日に中部電力ミライズも公表しています。ただし、誤りの中身も金額の桁も、対象になるエリアも違います。
| 比べる項目 | 関西電力(2026年9月17日) | 中部電力ミライズ(2026年9月10日) |
|---|---|---|
| 誤りの中身 | 発電側課金の割引単価の電圧区分判定を誤った | 月間割引額の年額換算漏れなど |
| 公表された金額 | 規制料金原価の変動額が3カ年で約14百万円 | 精算金額の総額が12億円程度 |
| 1か月あたりの影響 | 1契約種別・1月分あたり最大1円 | 最大152円・最小0円・家庭の平均モデル10円 |
| 対象の契約件数 | 公表文書に記載なし | 500.9万件(2026年8月時点) |
| 返還の方法・時期 | 今後検討する | 検討中で、決まりしだい知らせる |
金額の桁が二けた以上違うため、中部電力の記事で見た数字をそのまま関西エリアに当てはめることはできません。中部電力ミライズの件の内訳は中部電力ミライズの電気料金の返金は1か月あたり最大152円ですにまとめています。
なお、2026年9月17日の時点で当サイトが確認できた範囲では、同じ型の公表をしているのはこの2社です。ただし一部の電力会社はリリース一覧を取得できていないため、「他社では起きていない」とは言えません。
これからの電気代とは、別の話です
今回の返還は、過去に払いすぎた分の精算です。これから電気代が下がるという話ではありません。
毎月の請求額が気になって調べ始めた人は、まず自分の請求のどこが増えているのかを切り分けたほうが早いです。単価が上がったのか、使う量が増えたのかは、検針票のキロワット時を前年同月と比べると分かります。手順は電気代が高い原因は、単価か使用量のどちらかですにまとめました。
よくある質問
返還はいつ、どうやって受け取れますか
2026年9月17日時点で決まっていません。公表文書は「今後、お客さまへの返還方法を検討する」と書いているだけで、時期にも方法にも触れていません。電気料金からの差し引きになるのか、別の形になるのかも公表されていません。
受け取るために手続きは必要ですか
公表文書に手続きの記載はありません。返還方法そのものが未定のため、いま必要な手続きは公表されていない状態です。本件を名乗って口座番号や個人情報を聞き出そうとする連絡には注意してください。
「1契約種別・1月分あたり最大1円」とは、どういう意味ですか
契約種別ごとに見たときの、1か月分の電気料金への影響の上限として示された数字です。1世帯が1円を受け取るという意味でも、すべての契約種別で1円になるという意味でもありません。個別の契約にいくら返るのかは、公表されていません。
なっトクでんきなどのメニューも対象ですか
公表文書は「規制分野」への影響として書かれており、自由料金のメニューには触れていません。関西電力自身も、規制分野の料金メニューと「電気供給条件(低圧)」にもとづく料金メニューを分けて説明しています。ただし対象の契約種別は列挙されていないため、確定的なことは返還方法の発表を待つ必要があります。
関西電力以外でも起きていますか
中部電力ミライズが2026年9月10日に、同じ「特定小売供給約款の変更届出における原価算定誤り」を公表しています。当サイトが2026年9月17日に確認した範囲では、ほかに同じ型の公表は見つかりませんでした。ただし一部の会社はリリース一覧を取得できておらず、起きていないと確かめられたわけではありません。
この記事の出典
- 関西電力株式会社「規制分野における電気料金の原価算定誤り」および別紙「原価算定誤りの概要」(2026年9月17日発表/2026年9月17日確認)
- 関西電力株式会社「経済産業省からの規制分野における電気料金の原価算定誤りに係る報告徴収の受領」(2026年9月17日発表/2026年9月17日確認)
- 経済産業省「関西電力株式会社に対して電気事業法に基づく報告を求めました」(2026年9月17日発表/2026年9月17日確認)
- 経済産業省「一般送配電事業者8社から託送供給等約款の変更届出を受理しました」(2026年9月11日発表/2026年9月17日確認)
- 関西電力株式会社 個人のお客さま向けサイト「電気料金メニュー」(2026年9月17日確認)
- 中部電力ミライズ株式会社・中部電力株式会社「特定小売供給約款の変更届出における原価算定誤りについて」(2026年9月10日発表)
※ 金額と表現はいずれも各発表文書の表記に従いました。「1契約種別・1月分あたり最大1円」は現時点の見込みとして示された値で、確定額ではありません。他社の状況は当サイトが公表ページを確認できた範囲のもので、網羅的な調査ではありません。