不動産の住所変更登記は、無料の申出を1回すれば法務局が職権でやってくれます|自分で申請するときの費用は1個1,000円、義務化前の変更は2028年3月末が期限
不動産を持っている人が引っ越して住所が変わったとき、法務局の登記簿に記録されている住所を書き換える手続きが「住所変更登記」です。2026年4月1日から、この登記の申請が法律上の義務になりました。変更の日から2年以内に申請しないと、正当な理由がない限り5万円以下の過料の適用対象になります。
ただし、引っ越しのたびに自分で申請書を作らなければならない制度ではありません。同じ日から「スマート変更登記」という仕組みが始まっていて、無料の申出を1回しておけば、その後は法務局が職権で登記します。
この記事では、法務省と法務局が公開している4つの資料を2026年9月21日に読み、義務の中身、申出だけで終わらせる方法、それでも自分で申請する場合の書類と費用、過料が科されるまでの流れを順に並べました。
期限は、住所が変わった日から2年以内です
不動産の所有者、正確には所有権の登記名義人は、氏名もしくは名称または住所について変更があったとき、その変更日から2年以内に変更の登記を申請することが義務付けられています。根拠は不動産登記法第76条の5です。正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、同法第164条第2項により、5万円以下の過料の適用対象になります。
見落としやすいのは2つ目の期限です。施行日は2026年4月1日ですが、施行日より前に住所が変わっていて登記していない場合も義務化の対象になります。法務省はその期限を2028年3月31日と示しています。10年前に引っ越したまま登記簿の住所が昔のままになっている、という不動産も対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務を負う人 | 不動産の所有権の登記名義人(個人・法人とも) |
| きっかけ | 引っ越しなどによる住所の変更、結婚などによる氏名の変更 |
| 期限 | 変更の日から2年以内 |
| 施行日 | 2026年4月1日 |
| 施行日より前に変わっていた場合 | 2028年3月31日まで |
| 怠ったとき | 5万円以下の過料の適用対象(不動産登記法第164条第2項) |
※ 法務省民事局「住所等変更登記の義務化特設ページ」(令和8年4月1日更新・初回掲載 令和7年3月5日)および「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」(本文は2026年6月2日現在)。2026年9月21日確認・編集部調べ。
なお、相続登記の義務化は、これとは別の義務です。始まった時期も根拠条文も期限の数え方も違うので、同じ話として処理しないでください。
申出を1回すれば、次の引っ越しから自分で申請しなくて済みます
法務省は義務化と同時に「スマート変更登記」を用意しました。個人の場合、「検索用情報の申出」を1回しておけば、その後に住所や氏名が変わったときは、法務局が変更の事実を確認し、本人の了解を得たうえで職権で変更登記をします。
法務省はこの申出を「かんたん・無料の手続」と説明したうえで、次のように書いています。
かんたん・無料の手続をしていただければ、その後は法務局で住所等変更登記をすることとし、住所等の変更があるたびにご自身で登記申請をしなくても、義務違反に問われることがなくなります。
申出をした後の流れは3段階です。
- 法務局が少なくとも2年に1回、住基ネットに照会して住所等の変更の有無を確認します
- 変更があった人に対し、変更登記をしてよいかを確認するメールを送信するか、書面を送付します
- 「してよい」と回答した人について、順次、変更登記をします
申出そのものは、法務局の「かんたん登記・供託申請」のページから「検索用情報の申出」を選び、所有者の生年月日、メールアドレス、不動産の地番などを入力すれば、Webブラウザ上で完了します。電子証明書は不要です。書面で出すこともでき、管轄の異なる複数の不動産を持っている場合は、そのうちいずれかの不動産を管轄する法務局にまとめて申し出られます。
ひとつ注意点があります。法務局がこの3段階の手続を開始する時期は、まだ公表されていません。2026年9月21日時点の法務省のページには「改めてこのページでご案内します」と書かれた状態です。申出をしたからといって、すぐに登記簿が書き換わるわけではありません。
対象外になる人もいます。海外に居住している個人は、法務局で住所の変更を確認できないため、変更があったときは自分で申請する必要があります。法人の場合は所有権の登記事項として「会社法人等番号の登記」がされていることが条件です。なお、2026年5月15日という日付は、法人全体の開始日ではありません。同日より前に会社法人等番号が登記されていて、かつ商業・法人登記上の住所等がすでに変わっている法人について、同日以降に順次スマート変更登記が行われる、という意味です。会社法人等番号の登記より後に住所等が変わった場合には、この日付は関係しません。なお職権による変更登記に登録免許税はかかりません。
※ 法務省民事局「スマート変更登記のご利用方法」(2026年4月30日掲載)。2026年9月21日確認・編集部調べ。
自分で申請する場合、集める書類は基本的に1通だけです
住所移転を原因とする変更登記で集める書類は、住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)1通です。入手先は住所地の市区町村で、有効期限はありません。
ただし、その住民票の写しで「登記簿上の住所から現在の住所までの移転の経緯」が確認できることが条件です。登記した後に2回以上引っ越している場合、住民票の写しでは経緯をたどれないことがあります。その場合は本籍地の市区町村が発行する戸籍の附票の写しを出して、経緯を証明します。
| 区分 | 書類 | 入手先・条件 |
|---|---|---|
| 集める書類 | 住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの) | 住所地の市区町村。有効期限なし |
| 集める書類 | 戸籍の附票 | 本籍地の市区町村。住民票の写しで住所移転の経緯を確認できない場合に必要 |
| 作成する書類 | 登記申請書 | 所有者が作成。法務局が様式と記載例を公開している |
| 作成する書類 | 委任状 | 代理人による申請の場合のみ。所有者本人が手続きするなら不要 |
法務局は、登記申請書に住民票コードを記載した場合には住民票の写しの提出を省略できるとしています(住民票の記載内容から住所移転の経緯を確認することができない場合を除きます)。
※ 法務局「住所の変更登記の申請に必要な書類とその入手先等」。2026年9月21日確認・編集部調べ。
費用は、不動産1個につき1,000円です
住所や氏名の変更の登記でかかる登録免許税は、不動産の価額ではなく個数で決まります。課税標準が「登記する不動産の個数」で、税率が「不動産1個につき1,000円」です。
一戸建てで土地が1筆、建物が1棟なら2個なので2,000円です。土地が複数の筆に分かれていれば、その数だけ増えます。売買による所有権移転の登記のように評価額に税率を掛ける計算ではないので、家が高いか安いかで金額は変わりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税標準 | 登記する不動産の個数 |
| 税率 | 不動産1個につき1,000円 |
| 土地1筆・建物1棟の場合 | 2個で2,000円 |
| 住居表示の実施に伴う住所の表示の変更 | 非課税 |
| 納付の方法 | 3万円以下などの場合は収入印紙で納付できる |
見落とされやすいのは、表の「住居表示の実施に伴う住所の表示の変更」の行です。自分が引っ越したのではなく、市区町村が住居表示を実施したために住所の表示が変わった場合は、登記は必要ですが登録免許税はかかりません。
納付は原則として現金を国に納付し、その領収証書を申請書に貼り付けて提出します。ただし登録免許税の額が3万円以下である場合その他特別の場合は、収入印紙を貼り付けて納付できます。このとき、領収証書や収入印紙は申請書に直接貼らず、別葉の白紙(収入印紙貼付台紙)に貼って申請書と一緒に提出します。
※ 法務局「登録免許税の計算」(2026年7月27日更新)。2026年9月21日確認・編集部調べ。
過料は、催告を無視したときに初めて裁判所へ行きます
5万円以下の過料という数字だけが独り歩きしていますが、法務省は、義務違反を把握したらすぐ裁判所へ通知する運用にはしていないと明記しています。
ただし、登記官が義務違反の事実を把握しても、直ちに裁判所への通知(過料通知)を行うこととはしていません。登記官が過料通知を行うのは、義務に違反した者に対し、相当の期間を定めて義務の履行を催告したにもかかわらず、正当な理由なく、その期間内に申請・申出がされないときに限られます。
法務省のQ&Aは、過料が科される場合の流れを次の3段階とする予定だとしています。登記官が催告書を送り、その期限内に登記や申出がされなければ裁判所へ通知し、通知を受けた裁判所が要件に該当するかを判断して過料を科す旨の裁判を行う、という順です。催告を受けた人から説明を受けて登記官が「正当な理由」があると認めた場合には、裁判所への通知は行いません。過料の額は、5万円以下の範囲内で裁判所が決定します。
そもそも登記官が催告を始めるきっかけも2つに限って例示されています。ひとつは、所有権の登記名義人が表示に関する登記を申請したときに、申請書の住所が登記記録と合っていなかった場合。もうひとつは、住基ネットへの照会で住所等に変更があったと認められた人が、職権で登記してよいかの意思確認の通知を受け取ったのに、拒否または期限までに無回答だった場合です。
「正当な理由」があると一般に認めることとする予定の事情も、5つ示されています。
- 検索用情報の申出または会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
- 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
- 義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
- 義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
法務省は、これらに該当しない場合でも、個別の事案の具体的な事情に応じて「正当な理由」があると認めることとする予定だとも書いています。1つ目に注目してください。検索用情報の申出さえ済ませてあれば、法務局の職権登記がまだでも正当な理由がある側に入る、という整理です。
引っ越しの手続きの中では、登記の期限がいちばん長いほうです
転入届は14日以内、運転免許証は住所が変わったら速やかに、と短い期限が並ぶ中で、住所変更登記は2年です。だからこそ後回しにされて忘れられ、登記簿の住所が実際と違う不動産が積み上がってきました。
現実的な順番としては、引っ越し直後の2週間は役所とライフラインの手続きに集中し、落ち着いてから検索用情報の申出を1回しておく、という進め方で期限に間に合います。申出はWebブラウザだけで完結し、費用もかかりません。
引っ越しそのものがこれからの方は、業者選びを先に済ませておくと、手続きの段取りが組みやすくなります。一括見積もりサービスを使うと、複数社の料金と空き状況をまとめて確認できます。
よくある質問
賃貸に住んでいる場合も、住所変更登記は必要ですか
必要ありません。義務を負うのは不動産の所有権の登記名義人です。借りて住んでいるだけの人に、不動産登記簿上の住所はありません。転入届や運転免許証の住所変更とは対象が違います。
同じ市内での引っ越しでも対象になりますか
対象になります。判断の基準は距離ではなく、登記簿に記録されている住所と現在の住所が違うかどうかです。同じ市内の移転でも登記簿の記載は変わるため、義務の対象に入ります。
司法書士に頼まないと申請できませんか
所有者本人が自分で申請できます。法務局が申請書の様式と記載例を公開しており、本人が手続きする場合は委任状も不要です。ただし、申請手続の代理や登記申請書の作成を業務として行えるのは司法書士と弁護士に限られています。書き方が分からない場合は、法務局の登記手続案内を予約して相談する方法があります。1回あたり20分以内の完全予約制で、電話、窓口での対面、ウェブ会議から選べます。
検索用情報の申出をすれば、登記は自動で終わりますか
自動では終わりません。法務局が住基ネットに照会して変更を把握した後、本人に「登記してよいか」を確認する連絡が来て、その回答を得てから登記されます。連絡を受け取って拒否したり無回答のままにしたりすると、登記官が催告を始めるきっかけの1つに該当します。申出をしたら、登録したメールアドレスは使い続けてください。
2年を過ぎたら、すぐに5万円を請求されますか
直ちに請求される運用にはなっていません。法務省は、登記官が義務違反を把握しても直ちに裁判所へ通知することはせず、相当の期間を定めて催告したうえで、それでも申請・申出がされないときに限って通知すると明記しています。ただし「過料にならない」という意味ではありません。法務省の説明は「過料が科される可能性があります」という書き方です。
まとめ
住所変更登記は2026年4月1日から義務になり、期限は変更の日から2年以内です。施行日より前に住所が変わったまま登記していない不動産は、2028年3月31日が期限になります。
そのうえで、実際にやることは1つに絞れます。検索用情報の申出をWebブラウザから1回出しておくことです。無料で、電子証明書も要らず、管轄の違う不動産があっても1か所にまとめて申し出られます。これをしておけば、次の引っ越しからは自分で登記申請をしなくても義務違反に問われることがなくなります。
自分で申請する道も残っています。集める書類は住民票の写し1通が基本で、登録免許税は不動産1個につき1,000円。住居表示の実施による変更なら非課税です。どちらを選んでも、期限内に動いておけば過料の話にはたどり着きません。