「500円〜」の広告で呼んだ業者の高額請求を、消費者庁の検討会が違法行為に位置づける方向です|広告1,000〜5,000円で5〜10万円を請求された相談が最多でした

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水漏れ、トイレのつまり、鍵、害虫。困って検索し、「500円〜」と書いてある業者に来てもらったら、作業のあとで数万円から数十万円を提示された。この型のトラブルについて、消費者庁の検討会が2026年9月10日に、違法行為として行政処分の対象にすべきだという方向を出しました。この記事では、その中間取りまとめの原文と、あわせて公表された相談データを、こちらで読み直して並べます。今日できることは現行法の話なので、そこは分けて書きます。

消費者庁の検討会は、何を違法行為にしようとしていますか

消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」は、2026年9月10日の中間取りまとめで、広告に著しく事実と違う価格を示して呼び出し、その場で広告価格とかけ離れた高額な契約を勧誘する行為を、違法行為に位置づけて行政処分の対象とすべきだとしました。
原文はこうです。
ウェブページ等を利用して、著しく事実に相違する商品の価格又は役務の対価を示し、これに誘引されて来訪を要請した者に対し、外部からの介入、勧誘場面からの離脱や、商品等の比較検討が困難な環境において、合理的な根拠なく、当該表示に記載された価格又は対価と著しく乖離した高額の商品の購入又は役務提供契約の締結を勧誘する行為について、違法行為と位置付け、行政処分の対象とすべきである
ここでいう「価格」には下限だけの表示が含まれます。脚注32が「価格・対価には、『500 円~』など下限の価格・対価のみを示す場合を含む。」と書いています。広告に「〜」が付いていれば下限を示しただけだ、という説明は通らないという整理です。
対象になる場所も自宅だけではありません。脚注33では、ロードサービスのように路上など自宅以外へ呼ぶ場合についても、外部からの介入や比較検討が困難な環境で行われる勧誘を規律の対象に含める方向としたうえで、具体的な範囲は引き続き検討するとしています。
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これは中間取りまとめであって、法改正でも施行でもありません。文書の記述はすべて「〜すべきである」で止まっており、法案・公布・施行の日付はどこにも書かれていません。「もう規制された」と読まないでください。今日の時点で使えるのは、後半に書く現行法のほうです。

「〇円〜」の広告を見て呼んだ人は、実際にいくら請求されていますか

「〇円〜」の表記を見て依頼した相談184件では、広告が1,000〜5,000円で請求が5〜10万円という組み合わせがもっとも多く、15.8%でした。
参考資料集に載っている分布は次のとおりです。2024年度にインターネット広告を見て来訪を要請したと判定された相談のうち、広告表示金額の記載があるものを抜き出し、PIO-NETに登録されている契約金額と比べたものです。
広告金額1万円未満1〜5万円5〜10万円10〜20万円20万円超
1,000円未満0.5%3.8%8.7%9.2%7.1%
1,000〜5,000円0.0%10.3%15.8%12.0%7.1%
5,000〜1万円0.5%2.7%3.3%4.9%2.2%
1万〜5万円0.5%1.6%3.3%3.3%1.6%
5万円超0.0%0.0%0.0%0.5%0.5%
※ 出典は消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ 参考資料集」24ページ。東京大学エコノミックコンサルティング株式会社「PIO-NETデータを用いた訪問販売等に関する分析調査」の分析結果をもとに消費者庁が作成したもので、対象は184件です。2026年9月15日に取得しました。
資料そのものの要約は「1,000円~5,000円程度という広告を見た消費者が、実際は5万円~20万円程度の請求を受けるケースが多い。」となっています。
表の数字をこちらで足すと、広告が5,000円以下だった相談が全体の74.5%、請求が5万円以上だった相談が79.5%でした。小数第1位までの数字を足したものなので、端数で1%弱ずれます。この2つの足し算は資料には書かれていないので、こちらで計算したものとして読んでください。
一件ずつ見ると、金額の飛び方がはっきりします。参考資料集に載っている相談事例のひとつは、賃貸アパートでトイレが詰まり、「修理は980円~」と書いてあった販社に依頼したところ、見積書の提示がないまま作業が始まり、終わってから約16万円だと言われたというものです。振込でよいかと聞くと現金払いのみだと言われ、近所のATMで現金を下ろして支払っています。
害虫でも同じ型が起きています。最低価格550円〜という広告を見てゴキブリの駆除を頼んだところ、翌日の点検で薬剤の散布を勧められて30万円を提示され、断りにくい流れで了承した、という事例が載っています。この分野の「〇〇円〜」については、ゴキブリ駆除業者の「〇〇円〜」は入口の数字|国民生活センターに20万円・50万円の相談事例がありますに、料金表の読み方をまとめてあります。

訪問販売の相談は、いつからネット広告が入口になったのですか

訪問販売の相談のうち、インターネット広告を見て来訪を要請したものは、2015年度の4.1%から2024年度は36.3%に増えています。
この割合は、販売購入形態に「訪問販売」が登録され、かつ既支払額が正である相談から標本を無作為抽出して分類したものです。標本数は2015年度が394件、2024年度が1,068件と記載されています。
同じ10年で、業者が広告を経由せずに来訪したものは82.7%から53.6%へ下がりました。呼ばれてもいないのに訪ねてくる型から、自分で呼んでしまう型へ、相談の中身が入れ替わっています。
自分で呼んだ場合に何が問題になっているかも集計されています。2024年度にインターネット広告を見て来訪要請したと判定された相談のうち、解約・クーリングオフ回避・返金のキーワードを含む165件を分類した結果は、価格に関するトラブルが70.3%、勧誘手法に関するトラブルが31.5%、契約書面に関するトラブルが30.9%です(複数選択)。
「暮らしのレスキューサービス」全体のうち電子広告に関する相談件数も、内閣府消費者委員会の資料をもとにした折れ線で示されています。2014年度の286件から、2019年度1,090件、2024年度4,614件へと増えています。

契約する前に工事を始められたら、どうなりますか

中間取りまとめは、消費者が申込みや承諾の意思表示をする前に契約の履行に着手して原状回復を困難にする行為を、訪問販売の類型で違法行為に位置づけ、行政処分の対象とすべきだとしています。
脚注34には、何をもって「原状の回復を著しく困難」と見るかの例が書かれています。事業者が便器を交換した場合に、施工技術のある事業者がコストをかければ物理的に戻せるとしても、消費者にとって事実上不可能であれば、著しく困難と言い得る、という整理です。作業に入られてしまうと断りにくいという実感を、そのまま条文の話に置き換えたものだと読めます。
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ここから先は現行法の話です。中間取りまとめの内容とは分けて読んでください。工事を始められてしまった場合に今できることは、特定商取引法にもとづくクーリング・オフです。中間取りまとめが成立しなくても、この権利はいまもあります。
特定商取引法第9条では、訪問販売でクーリング・オフをした場合、すでに工事などの役務が提供されていても、事業者は代金を請求できず、原状回復に必要な措置を無償で講じなければならないとされています。給湯器の交換工事を例にした手順は、給湯器のクーリング・オフは工事後でもできます|8日間・無償で元に戻せますにまとめました。
自分から呼んだ業者だから対象外ではないか、という点も中間取りまとめが触れています。脚注31は、契約を締結することを請求して来訪を要請した場合は訪問販売の規律の大部分が適用除外になるとしたうえで、広告の表示額と実際の請求額との間に相当の開きがあった場合は、実際の請求額で契約する意思を持って行った来訪要請とは言えないため、適用除外に当たらない、としています。期間と対象取引の考え方はクーリングオフの期間は8日と20日の2つだけです|取引の種類で決まり、通信販売には制度そのものがありませんにあります。

クーリング・オフしたのに返金されないときは

中間取りまとめは、クーリング・オフ後の履行拒否や不当な遅延について、それ自体を違反行為として迅速に執行するとともに、不当な遅延に当たる日数の基準を示すなどの手法で厳正に対応すべきだとしています。あわせて、クーリング・オフに関する不実告知や威迫・困惑に当たる悪質な行為については、特定商取引法第6条の禁止行為の該当性を明確化し、直罰の対象となることを明確化すべきだとしています。
「返してもらえない」が珍しい話ではないことは、数字にも出ています。2024年度の訪問販売の相談のうち、解約・クーリングオフ回避・返金のキーワードを含む415件を分類した結果は次のとおりです。
事業者がとった対応割合
手続的妨害・履行の遅延16.4%
解約権に関する不実告知8.7%
高額な解約料等の請求8.0%
解約権に関する威迫・困惑3.4%
※ 分類の定義は資料に書かれています。手続的妨害・履行の遅延は、返金・商品の引取り・原状回復・精算などの解約後対応を実際に行っていないか、不当に遅延させているもの。解約権に関する不実告知は、事業者が「解約できない」「対象外」「期間を過ぎた」などと説明して権利行使を断念させようとするものです。
資料に載っている事例では、屋根の塗装工事を契約して前金85万円を支払った人が、翌日にクーリング・オフの通知を送ったものの、宛先人不在で戻ってきています。通知を出すこと自体が妨げられることがある、ということです。通知の出し方はクーリングオフのはがきに書き入れる項目は7つです|内容証明は、はがきでは出せませんにまとめました。

「訪問販売お断り」のステッカーは有効になりますか

いまのところ、有効にする方向では整理されていません。
脚注38には、「訪問販売お断り」等の表示を特定商取引法上の「契約を締結しない旨の意思表示」として明確化することや、Do-Not-Knock制度やステッカー等を用いた事前拒否の仕組みを検討すべきとの指摘がなされた、と書かれています。ただし同じ脚注に、訪問販売には多様な商材があり一部の悪質事例を理由に訪問販売全体の営業機会を大きく制限することには慎重であるべきだという指摘と、望まない勧誘であるというだけでは一律禁止を正当化できないという指摘が併記されています。
そのうえで検討会は、広告表示と実際の契約条件との乖離や、契約前の強引な履行によるトラブルなど、現下で増加するトラブルに対して、まずは厳正に対応していくべきであると整理した、としています。ステッカーの効力が決まったわけではありません。

点検商法のほうは、どれくらい増えていますか

訪問販売に関する相談79,564件(2024年度)のうち、点検商法に関するものは18.1%でした。2015年度は85,203件のうち5.8%です。相談の総数はこの10年でほぼ横ばいですが、点検商法の占める割合は3倍を超えています。
※ この割合は、消費者庁がPIO-NETデータをもとに「訪問販売が登録され、かつ内容等キーワードに『点検商法』が登録された相談」を数えたものです。点検商法の件数は集計の定義によって変わるため、他の資料の件数とそのまま比べないでください。
点検商法は、こちらから呼んでいないのに向こうから来る型です。自分で呼んだレスキュー商法とは入口が違うので、見分け方も別になります。手口の型は点検商法の相談は年19,696件です|狙う商品は移り変わっても、手口の型は3つだけですにまとめました。

呼ぶ前に、確かめられること

制度が動くのを待つ必要はありません。上の資料から読み取れる範囲で、依頼する前に確かめられることが4つあります。
  • 下限だけの価格表示は、作業の総額ではありません。中間取りまとめの脚注32が、「500 円~」のような下限のみの表示を規制の検討対象に含めています。金額は「〜」の後ろではなく、作業内容ごとの定価が公開されているかで見てください
  • 作業の前に、書面の見積もりをもらってください。参考資料集の事例では、見積書の提示がないまま作業が始まり、終わってから約16万円を告げられています
  • 現金払いのみ、その場で振込、という求めは一度止まる合図です。事例では、作業前にインターネット銀行から振り込ませたうえで返金を渋る流れが記録されています
  • 「今すぐやらないと」と言われたときこそ、他社にも聞いてください。中間取りまとめが問題にしているのは、比較検討が困難な環境で結ばせる勧誘そのものです

よくある質問

中間取りまとめが出たので、もう規制されているのですか

されていません。中間取りまとめは検討会が論点を整理した文書で、記述はすべて「〜すべきである」で止まっています。法案・公布・施行の日付は文書に書かれていません。今日の時点で使えるのは、現行の特定商取引法にもとづくクーリング・オフです。

自分から呼んだ業者でも、クーリング・オフできますか

自分で来訪を要請した場合、訪問販売の規律の大部分は適用除外になります。ただし中間取りまとめの脚注31は、広告の表示額と実際の請求額との間に相当の開きがあった場合は適用除外に当たらない、としています。金額がかけ離れていたかどうかが分かれ目です。判断に迷う場合は、期間内に通知を出したうえで消費生活センターに相談してください。

工事が終わってしまった場合はどうなりますか

特定商取引法第9条では、訪問販売でクーリング・オフをした場合、役務がすでに提供されていても事業者は代金を請求できず、原状回復に必要な措置を無償で講じなければならないとされています。工事が済んでいることは、あきらめる理由になりません。

「訪問販売お断り」のステッカーを貼れば、来なくなりますか

ステッカーに特定商取引法上の効力を持たせることは、中間取りまとめでは指摘があったと記録された段階で、対応としては採用されていません。慎重論も併記されています。効力が決まったという説明を見かけたら、出典を確かめてください。

ロードサービスや出先のトラブルも対象になりますか

中間取りまとめは、自宅以外の場所に来訪を要請する場合も規律の対象に含める方向としたうえで、具体的な範囲は引き続き検討するとしています。現時点で範囲は決まっていません。

設備そのものの交換が必要だと分かったら

高額請求を断ったあとで、実際に給湯器やトイレ、レンジフードの交換時期が来ていると分かることもあります。その場合は、呼んでしまった業者ではなく、自分で選んだ窓口から見積もりを取り直してください。
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※ この記事の引用と数値は、消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」(令和8年9月10日)のⅣ章および脚注31・32・33・34・38と、同「参考資料集」の23ページ・24ページ・25ページを、2026年9月15日に取得して読んだものです。相談データはいずれもPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)にもとづき消費者庁が作成したもので、数値は2016〜2025年度受付・2026年6月30日までに登録されたものと注記されています。制度の内容はこの先の検討で変わります。実際に手続をとる前に、消費者庁の公表資料と消費生活センターで確かめてください。