点検商法の相談は年19,696件です|狙う商品は移り変わっても、手口の型は3つだけです

この記事を読むと分かること
  • 点検商法の相談は2025年度に19,696件で、訪問販売によるリフォーム工事(5,544件)より多いこと
  • 狙われる商品は屋根から給湯器、分電盤、太陽光へと移っているが、手口の型は3つしかないこと
  • ガスにも電気にも本物の点検があること。どちらも書面で予告し、点検そのものにお金を取らないこと
「点検に伺います」という電話や訪問から始まり、点検が終わったところで高額な工事をすすめられる。これが点検商法です。
結論から書きます。点検商法の相談は2025年度に19,696件寄せられています。同じ集計で、訪問販売によるリフォーム工事の相談は5,544件でした。いま多いのは「リフォームの売り込み」ではなく、「点検」を入口にした売り込みのほうです。
そして狙われる商品は数年ごとに入れ替わっています。屋根、給湯器、分電盤、太陽光と移ってきました。ただ、入れ替わっているのは商品だけで、話の運び方はほとんど同じです。この記事では、公的機関が公表している数字と資料だけを使って、その型と見分け方を整理します。

点検商法とは何ですか

点検に来たと言って訪問し、「工事をしないと危険」などと言って商品やサービスを契約させる商法のことです。国民生活センターがこの言葉をこう説明しています。
ポイントは、入口が「売り込み」ではなく「点検」だという点にあります。売り込みなら断る理由はすぐ思いつきますが、点検は断る理由が思いつきにくい。そこが使われています。

相談件数は、訪問販売のリフォーム工事を追い抜きました

年度点検商法訪問販売によるリフォーム工事
2023年度12,550件11,879件
2024年度19,249件9,839件
2025年度19,696件5,544件
2026年度(5月31日現在)2,193件(前年同期 2,012件)602件(前年同期 680件)
※ 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」(2026年7月31日更新)による。件数は2026年5月31日現在で、消費生活センター等からの経由相談は含まれません。リフォーム工事は屋根工事・壁工事・増改築工事・塗装工事・内装工事の合計(2026年9月8日に確認)。
この3年で、訪問販売のリフォーム工事は半分以下になり、点検商法は約1.5倍になって高止まりしています。同じ「突然の訪問」でも、点検という入口だけが残っている形です。

狙われる商品は移り変わっています

国民生活センターは、商品を名指しした注意喚起を繰り返し出しています。出した順に並べると、移り変わりがそのまま見えます。
公表日対象公表資料に載っている件数
2023年10月11日屋根工事「トラブルが増えています」
2024年2月21日給湯器2018年度206件 → 2023年度は12月31日までで1,099件
2025年1月15日分電盤2023年度39件 → 2024年度は11月30日までで461件
2025年6月4日太陽光発電システム2017年度57件 → 2024年度613件
※ 各資料の図に基づく。給湯器は2023年12月31日までの登録分、分電盤は2024年11月30日までの登録分、太陽光は2025年3月31日までの登録分(2026年9月8日に確認)。
年代の偏りも共通しています。給湯器では契約当事者の7割以上が70歳以上、分電盤では約8割が70歳以上でした。
「何倍になった」という言い方には気をつけてください
分電盤は「2023年度の同時期と比べて約25倍」と公表されていますが、もとの件数が年10〜39件と小さいので、倍率は大きく出ます。
確かなのは、件数の桁が変わったということです。倍率そのものを驚きの材料にしないほうが、判断は正確になります。

手口の型は3つです

商品が変わっても、公表されている相談事例の流れはほぼ同じです。3つの段階に分かれます。
段階実際に言われていること(公表資料の記載)
1. 名乗る「自治体から委託を受けた」「契約中のガス会社から依頼された」「電力会社の委託を受けた」
2. 不安にさせる「このままでは壊れる」「すぐに交換しなければ漏電して火事になる」「点検が義務化された」
3. 急がせる「今契約すれば割引する」「今日なら割り引く」
※ 国民生活センターの給湯器(2024年2月21日)、分電盤(2025年1月15日)、太陽光発電システム(2025年6月4日)、屋根工事の各公表資料の「相談事例」「相談事例からみる問題点」による(2026年9月8日に確認)。
1つ目が効くのは、実在する会社の名前が出てくるからです。分電盤の事例では、契約している電力会社に本人が問い合わせたところ「この業者は当社とは関係ない」と言われています。社名を名乗るかどうかでは見分けられません。
公表されている相談事例(金額つき)
分電盤:電力会社に委託されたという業者が「分電盤が古いので漏電する可能性もある。危険なので交換した方がいい」と言い、約23万円で契約。念のため契約先の電力会社に確認したところ、関係のない業者だった。
※ 2024年6月受付・90歳代男性。国民生活センターの公表資料の事例を要約。
太陽光発電システム:「点検が法律で義務化された」と説明され、後日ドローンで点検。「洗浄とコーティングが必要」と言われ約40万円で契約した。
※ 2024年12月受付・80歳代女性。同上。

本物の点検は実在します

ここを飛ばすと話が逆になります。「点検と言われたら怪しい」という切り分けは使えません。ガスにも電気にも、法令に基づく本物の点検があるからです。
ガスの定期保安点検電気(分電盤等)の点検
根拠ガス事業法等に基づく法令に基づく
頻度公式ページに記載を確認できず4年に1回以上
日時の知らせ方訪問予定日と時間帯を記載した書面を事前に配布事前に書面で案内する。電話で知らせることはない
費用点検費用をもらうことはないその場で設備交換等の契約を持ち掛けることもない
身分の確認ロゴ入りの制服と身分証。提示を求めてよい身分証等を携帯している
確かめる手段訪問予定日を照会できる(お客さま番号と、配布された書面の入力番号を使う)電力会社に確認する。点検を行うのは電力会社と、経済産業省が掲載した登録調査機関に限る
※ ガスは東京ガスネットワーク「定期保安点検(定期ガス漏れ検査)」および同社の注意喚起ページ(2022年4月1日)、電気は経済産業省「電気設備の点検等を装った訪問者に御注意ください」(2025年1月15日公表)による(いずれも2026年9月8日に確認)。ガスの記載は東京ガスネットワークの供給エリアのものです。
共通しているのは2つだけです。書面で予告すること。点検そのものにお金を取らないこと。この2つを外れた時点で、本物ではないという判断がつきます。
覚えて帰るなら、この1行です
本物の点検は、日時を書面で知らせます。点検した人が、その場で工事を売り込むこともありません。
電話で日時を伝えてきた、あるいは点検した人がそのまま契約書を出してきた。そのどちらかがあれば、その場で決める必要はありません。
なお、ガスメーターについては別の制度があります。計量法に基づいて10年(一部は7年)に一度、点検ではなく「取替え」が行われます。案内は電話番号を記載したお知らせ用紙で届きます。「メーターを取り替えるとガス料金が安くなる」という話は、東京ガスネットワークが装った訪問の手口として挙げているものです。

「点検が義務化された」は、そのままでは正しくありません

太陽光発電システムでよく使われている言い方です。国民生活センターは、点検義務の対象になるかどうかは、再エネ特措法に基づくFIT制度・FIP制度の利用の有無や出力等によって異なるとしています。
つまり「義務化された」という言い方は、自分の設備が対象かどうかという肝心のところを飛ばしています。同センターも「まずは点検の要否を確認しましょう」と書いています。
※ 国民生活センター「太陽光発電システムの点検商法が急増!」(2025年6月4日公表・2025年9月22日更新)による(2026年9月8日に確認)。定期的な点検自体は、安全に使ううえで重要だとも書かれています。

「要りません」と言った相手に、もう一度勧誘してはいけません

断り方で悩む必要はありません。特定商取引法が、事業者の側に義務と禁止を課しているからです。
条文事業者に課されていること
法第3条(氏名等の明示)勧誘に先立って、事業者の氏名(名称)、勧誘をする目的であること、販売しようとする商品・権利・役務の種類を告げなければならない
法第3条の2(再勧誘の禁止等)消費者が契約締結の意思がないことを示したときは、その訪問時にそのまま勧誘を続けることも、その後あらためて勧誘することも禁止されている
※ 消費者庁「特定商取引法ガイド」の訪問販売のページによる(2026年9月8日に確認)。同ページの記載は概要で、詳細は条文をご確認ください。
「点検に来ただけ」と言って上がり込み、あとから工事の話を出すのは、第3条が求めている順番を踏んでいません。そして第3条の2があるので、断る言葉は短くて足ります。「契約するつもりはありません」と伝えれば、理由を説明する必要はありません。

うその説明があったときは、取消しができます

法第6条は、勧誘の際に事実と違うことを告げること、故意に事実を告げないこと、威迫して困惑させることを禁じています。そのうえで法第9条の3は、事実と違うことを告げられて誤認し、契約の申込みや承諾をしたときは、その意思表示を取り消せるとしています。
国民生活センターがうその説明として名指ししている例が、そのまま参考になります。
  • 「分電盤の交換は法律で定められている」
  • 「分電盤は15年で交換することが法律で決められている」
  • 「分電盤の漏電では火災保険が下りない」
※ 国民生活センター(2025年1月15日公表)の「相談事例からみる問題点」および相談事例による。適用は契約の内容と個別の事情によります。判断はお住まいの消費生活センター等にご相談ください(2026年9月8日に確認)。
法律で決まっているのは点検の頻度であって、交換の時期ではありません。この2つを混ぜて話されると、聞いている側には区別がつきません。

契約してしまったらどうすればいいですか

訪問販売なら、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録でクーリング・オフができます。
工事が終わっていても遅くありません。消費者庁は、クーリング・オフをした場合について次のように示しています。
  • 商品の引取りは販売業者の負担
  • 商品が使用済み、役務が提供済みでも対価を支払う必要はない
  • 損害賠償や違約金を支払う必要はない。頭金等は速やかに返してもらう
  • 土地または建物その他の工作物の現状が変更されている場合には、無償で元に戻してもらえる
※ 消費者庁「特定商取引法ガイド」の訪問販売のページによる。ただし、いわゆる消耗品を使ってしまった場合や、現金取引で代金の総額が3,000円未満の場合は適用されません(2026年9月8日に確認)。
さらに、事業者がクーリング・オフについて事実と違うことを告げたり、威迫したりしたために手続きをしなかった場合は、8日を過ぎてもできるとされています。
期間の数え方と通知の書き方は、それぞれ別の記事にまとめています。
給湯器を例に、工事後の扱いを具体的に見たい方はこちらです。

相談先は188番です

消費者ホットライン188(いやや)番は、お住まいの市町村や都道府県の消費生活センター等を案内する、全国共通の3桁の電話番号です。相談は無料ですが、通話料は自己負担になります。
窓口が何をしてくれるのか、開いている曜日と時間はどうなっているのかは、別の記事に整理しました。

断ったあとで、本当に交換が必要だったら

点検商法を断ることと、機器が古いことは別の話です。急がされたから断っただけで、実際に寿命が近い機器もあります。
違いは誰が主導するかです。訪ねてきた側が日時も金額も決める形と、自分が窓口を選んで見積もりを頼む形とでは、同じ工事でも進み方が変わります。急ぐ理由は、たいてい訪ねてきた側の事情です。
対応エリアは全国ではありません
東京ガスの機器交換は関東が中心です。申し込む前に、お住まいの住所が対象かを公式サイトでご確認ください。
商品ごとの手口は、それぞれの記事にまとめています。

よくある質問

点検を断ると、法律違反になりますか

なりません。むしろ逆で、契約する意思がないと示した相手に勧誘を続けること、あとから改めて勧誘することが、特定商取引法第3条の2で禁止されています。理由を説明する義務もありません。

本物の点検かどうかを、その場で確かめる方法はありますか

3つあります。身分証の提示を求めること事前に届いた書面があるか確かめること契約しているガス会社や電力会社に自分から電話して確認することです。分電盤の公表事例では、3つ目で気づいています。

玄関を開けて点検させてしまいました。もう断れませんか

断れます。点検を受けたことと、契約することは別です。国民生活センターも「点検させたとしてもその場では契約せず、十分に比較・検討しましょう」と案内しています。契約したあとでも、8日以内ならクーリング・オフができる場合があります。

家族が契約していました。本人でなくても相談できますか

消費生活センターへの相談は原則として本人からとされています。ただし国民生活センターは、認知症や病気などで電話することが難しい場合には、介護や見守りをしている方からの相談も受け付けるとしています。

点検商法と、訪問販売のリフォーム工事は別のものですか

国民生活センターは別々に集計しています。リフォーム工事は屋根・壁・増改築・塗装・内装の工事を指し、点検商法は「点検に来た」という入口で契約させる商法を指します。入口が点検なら、扱う商品が何であっても点検商法として数えられています。

まとめ

  • 点検商法の相談は2025年度に19,696件。訪問販売によるリフォーム工事(5,544件)を大きく上回っている
  • 狙われる商品は屋根 → 給湯器 → 分電盤 → 太陽光と移ってきた。入れ替わっているのは商品だけ
  • 手口の型は3つ。実在する会社を名乗る/不安にさせる/その場で急がせる
  • 社名では見分けられない。契約先の会社に自分から確認するのが確実
  • ガスにも電気にも本物の点検がある。電気は法令に基づき4年に1回以上
  • 本物は日時を書面で予告し、点検そのものにお金を取らない。点検した人がその場で工事を売り込むこともない
  • 「点検が義務化された」は、対象かどうかを飛ばした言い方。まず要否を確認する
  • 契約する意思がないと示した相手への再勧誘は禁止されている(法第3条の2)
  • 訪問販売なら、法定書面を受け取った日から8日以内にクーリング・オフができる。工事後でも、無償で元に戻してもらえる
  • 迷ったら消費者ホットライン188番

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