分電盤の点検は、本物なら電話で日時を知らせません|経済産業省が示した見分け方と、業者が使う3つのうそ

この記事を読むと分かること
  • ★分電盤の点検には本物があり、法令に基づいて4年に1回以上行われていること
  • ★本物は点検日時を事前に書面で案内し、電話で知らせることはない(経済産業省)こと
  • ★「分電盤は15年で交換と法律で決まっている」は、うその説明として国が挙げていること
「分電盤の点検に伺います」という電話がかかってくる。契約している電力会社の名前が出てくるので、断る理由が思いつかない。訪問した相手は分電盤を見たあと、「古いので漏電します。このままだと火事になります」と言う。
国民生活センターと経済産業省は、2025年1月15日に同じ日付でこの手口への注意喚起を出しています。この記事では、その2つの公表資料だけをもとに、本物の点検と何が違うのか、業者が使ううそは何か、そして契約してしまったときにどうするかを整理します。

★まず、分電盤の点検には本物があります

ここを飛ばすと話が逆になります。「電気の点検を名乗る訪問はすべて詐欺」ではありません。
経済産業省の注意喚起には、こう書かれています。
「御家庭の分電盤等の点検は、電力会社等が法令に基づき、4年に1回以上の頻度で行い、その点検日時は事前に書面で御案内しています」
※ 経済産業省「電気設備の点検等を装った訪問者に御注意ください」(2025年1月15日公表・産業保安・安全グループ電気保安室)による(2026年9月4日時点で確認)。
つまり、点検そのものは実在します。しかも無料で、法令に基づいて定期的に行われています。だから「点検と言われたから怪しい」という切り分けは効きません。必要なのは、本物と偽物を分ける線のほうです。

★線は1本です ── 日時をどうやって知らせてきたか

経済産業省が示している本物の姿を、そのまま並べます。
本物の点検(経済産業省の説明)
頻度法令に基づき4年に1回以上
日時の知らせ方事前に書面で案内する。点検日時を電話でお知らせすることはない
その場での契約訪問した点検作業員が、その場で設備交換等の契約を持ち掛けることもない
身分証点検作業員は身分証等を携帯している。必ず確認する
誰が行うか電力会社のほか、経済産業省のホームページに掲載された登録調査機関に限る
費用点検自体に費用は生じない
※ 経済産業省の同資料による(2026年9月4日時点で確認)。
★覚えて帰るなら、この1行です
本物の点検は、日時を書面で知らせます。電話では知らせません。
だから、電話で点検の日時を伝えてきた時点で、本物ではないという判断がつきます。
社名を名乗るかどうかでは分かれません。実在する電力会社の名前を出してくる例が、実際に報告されています。
もうひとつ、訪問した作業員がその場で交換契約を持ち掛けることはない、という点も同じくらい使えます。本物の点検で、点検した人がそのまま工事を売り込むことはない、ということです。

相談件数の推移

国民生活センターは、全国の消費生活センター等に寄せられた相談をPIO-NETというデータベースに蓄えています。分電盤の点検商法についての件数がこちらです。
年度相談件数
2020年度10件
2021年度19件
2022年度14件
2023年度39件
2024年度1,290件
2025年度6,545件
2026年度(7月31日までの登録分)2,223件
※ 2022〜2026年度は国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください−相談が各地に広がり増加しています−」(2026年9月16日公表)の図1に基づく。2026年7月31日までのPIO-NET登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含まれません。2020年度・2021年度は同センターの前回公表(2025年1月15日)の図によります(2026年9月17日時点で確認)。
この記事は、以前は2024年度を「11月30日までで461件」と書いていました。461件は途中集計で、確定値は1,290件です。同じ年度に2つの数字が並ぶと別々の話に見えるため、確定値に差し替えました。
同センターは、2025年度は前年度の約5倍だとしています。2026年度の2,223件は7月31日までの登録分で、2025年度の同じ時期(2025年7月31日まで)の登録分は1,312件でした。同期どうしで比べると約1.7倍にあたります(この割り算は本記事によるものです)。
年代別に見ると、2025年度受付分(n=6,039)は70歳以上が8割を超えています。内訳は80歳代2,609件(43.2%)、70歳代1,722件(28.5%)、90歳以上571件(9.5%)、60歳代665件(11.0%)、60歳未満472件(7.8%)です。
地域も広がりました。2024年度は南関東で目立っていた相談が、2025年度には南関東だけでなく北関東や九州北部を含め各地で急増しています(同資料)。ブロック別の件数そのものは公表されていないため、ここでは数字を書きません。
★この数字の読み方について、ふたつだけ
ひとつめ。もとの件数が年10〜39件と小さいので、倍率は大きく出ます。「何倍になった」という言い方は、起点をどこに取るかで印象がかなり変わります。確かなのは、2024年度に件数の桁が変わり、2025年度にもう一桁上がったということです。
ふたつめ。実際にお金を払ってしまった相談は、件数と割合が逆の方向に動いています。既支払額が1円以上の相談は2024年度67件、2025年度248件と増えていますが、相談全体に占める割合は5.2%から3.8%へ下がっています。割合が下がったのは相談そのものが急増したからで、払ってしまった人が減ったという意味ではありません。
本記事は公表資料に載っている数値だけを使っています。

★業者が使う3つのうそ

国民生活センターは、相談事例から見える問題点として、業者側の説明を挙げています。このうち3つは、事実と違うものとして名指しされています。
言われること公表資料での扱い
「分電盤の交換は法律で定められている」うその説明として問題点に挙げられている
「分電盤は15年で交換することが法律で決められている」実際に寄せられた相談。国民生活センターは2026年9月16日の公表資料で「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」と書いています
「分電盤の漏電では火災保険が下りない」うその説明として問題点に挙げられている
※ 1つめと3つめは国民生活センター「「分電盤の点検に行きます」の電話から始まる勧誘に注意−2024年度に急増しています−」(2025年1月15日公表)の「相談事例からみる問題点」および相談事例による。2つめの「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」は、同センター「分電盤の点検商法にご注意ください−相談が各地に広がり増加しています−」(2026年9月16日公表)の「消費者へのアドバイス(2)」の原文(いずれも2026年9月17日時点で確認)。
法律で決まっているのは「4年に1回以上の点検」のほうであって、「何年で交換」ではありません。この2つを混ぜて話されると、聞いているほうは区別がつきません。
なお、前回(2025年1月15日)の公表資料では、これは「うその説明」として問題点に挙げられているという書き方でした。2026年9月16日の公表資料では、国民生活センター自身が消費者へのアドバイスの中で「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」と書いています。本記事もその原文に沿っています。
「法律で決まっている」と言われたら、どの法律か聞いてください
本物の点検が法令に基づくのは事実です。だからこの言い方は、半分だけ本当のことを使っています。
交換の時期を義務づける根拠として、国民生活センターはこれをうその説明に分類しています。
その場で確かめられないなら、確かめられるまで契約しないということでかまいません。

実際の相談事例

公表資料に載っているものです。
事例:電力会社の委託と言われたが、うそだった
契約している電力会社に委託されたと言う業者から「分電盤の点検をする」と電話があった。
昨日訪問してきて、点検後に「分電盤が古いので漏電する可能性もある。危険なので交換した方がいい」と言われた。
漏電したら困ると思い、約23万円で契約し、数日後に工事予定だ。
念のため、契約している電力会社に確認したところ「この業者は当社とは関係ない」と言われた。不審なので解約したい。
※ 国民生活センターの公表資料の相談事例(2024年6月受付、90歳代男性)を要約。
この事例で効いたのは、契約している電力会社に自分で確認したことです。経済産業省も、不安があれば別紙の電力会社に確認するよう案内しています。
そのほか、「不安をあおられ交換契約をしたが、高額なのでやめたい」「漏電による火災は保険が下りないと言われ不安になり契約した」といった相談も寄せられています。
2026年9月16日の公表資料では、電力会社ではなく「市役所」を持ち出す型が新しく載りました。
事例:「市役所から依頼されてブレーカーの点検に行く」と電話があった
業者が自宅を訪問してブレーカーを点検し、「機器が古く、ホコリもたまっていて危ない。機器には使用期限があるので替えた方が良い」と言われ、約12万円で交換の契約をした。
その後、近所の電気工事業者に話をしたところ、聞いたことのない業者なので、市役所に確認した方が良いと言われた。
※ 国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください−相談が各地に広がり増加しています−」(2026年9月16日公表)の事例2(2026年2月受付、70歳代女性)を要約。
電力会社を名乗る型だけを覚えていると、これは素通りします。同じ資料には、点検のあと代金を現金で払ったのに、見積書も契約書面も受け取っていないという相談(約20万円・2026年5月受付・90歳代男性)も載っています。書面が無いと、いつからクーリング・オフの8日を数えるのかも分かりません。

★契約額はいくらだったのか

いちばん多いのは15万円以上20万円未満です。2025年度受付分(n=3,250)の内訳は、10万円未満9.8%、10万円以上15万円未満23.3%、15万円以上20万円未満46.6%(1,515件)、20万円以上20.3%で、平均は約18万円です。
※ 国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください−相談が各地に広がり増加しています−」(2026年9月16日公表)の参考資料 図5による(2026年9月17日時点で確認)。
では、自分から頼んだ場合はいくらなのか。分電盤の交換は、料金表を公開している電気工事店なら金額が分かります。当サイトで2社の公開料金を確認したところ、単相2線30Aの交換で46,200円から、感震機能つきで主幹50〜60A・16回路のもので106,000円(税込・出張費と処分費を含む)でした(2026年9月10日時点で確認)。
点検商法の平均契約額 約18万円は、この上限の約1.7倍にあたります(この割り算は本記事によるものです)。金額の範囲は工事の内容や地域で変わりますが、訪問してきた相手の言い値が相場かどうかは、自分で1社見積もりを取れば確かめられます。

★平時に、自分の分電盤を見ておく

ここからは公表資料の外の話です。この手口が効くのは、多くの人が自分の分電盤の中身を知らないからです。知らないものについて「古い」「危ない」と言われると、否定する材料がありません。
分電盤は、玄関や洗面所、キッチンの上のあたりにある扉付きの箱です。開けると、いちばん左に大きなブレーカー(アンペアブレーカー)があり、その右に漏電遮断器、さらに右に部屋ごとの小さなブレーカーが並んでいます。
東京電力エリアなど契約アンペアの制度がある地域では、いちばん左のブレーカーの色が、そのまま今の契約アンペアを表しています。赤が10A、桃が15A、黄が20A、緑が30A、灰が40A、茶が50A、紫が60Aです。
一度開けて見ておくと、「うちの分電盤はこうなっている」と言えるようになります。それだけで、電話口の話に付き合う理由がひとつ減ります。
なお、分電盤の交換工事には電気工事士の資格が必要です(経済産業省の同資料)。本当に必要な工事なら、資格のある事業者に、自分の側から依頼して見積もりを取れば済みます。急ぐ理由は、訪ねてきた側の事情です。

契約してしまったとき

国民生活センターは、消費者へのアドバイスとして次を挙げています。
  • 電話等で点検を持ち掛ける業者には、安易に点検させないようにしましょう
  • 点検させたとしてもその場では契約せず、十分に比較・検討しましょう
  • クーリング・オフ等ができる場合があります
  • 4年に1回の無料法定点検について、日頃から確認しておきましょう
  • 不安や不明な点があれば、すぐに消費生活センター等に相談しましょう
※ 国民生活センターの同資料による。「できる場合があります」という書き方で、常にできるとは書かれていません。制度の適用は契約の内容や個別の事情によります(2026年9月4日時点で確認)。
「もう契約してしまった」で終わりではありません。上の事例の相談者も、工事の前に電力会社へ確認して気づいています。

相談先

消費者ホットライン「188(いやや!)」番。お住まいの市町村や都道府県の消費生活センター等を案内する、全国共通の3桁の電話番号です。
※ 国民生活センターおよび経済産業省の公表内容による(2026年9月4日時点で確認)。

まとめ

  • ★分電盤の点検には本物がある。電力会社等が法令に基づき4年に1回以上行っており、費用は生じない
  • ★本物は点検日時を事前に書面で案内する。電話で日時を知らせることはない(経済産業省)
  • ★本物の点検作業員は、その場で設備交換の契約を持ち掛けない
  • 点検作業員は身分証等を携帯している。点検を行うのは電力会社と、経済産業省のホームページに掲載された登録調査機関に限る
  • 相談件数は2023年度39件 → 2024年度1,290件 → 2025年度6,545件。2026年度は7月31日までで2,223件(2025年度の同じ時期は1,312件)
  • 2025年度受付分は70歳以上が8割超(n=6,039)。契約額は15万円以上20万円未満が46.6%で最多、平均は約18万円
  • ★「分電盤の交換は法律で定められている」「15年で交換と法律で決まっている」「漏電では火災保険が下りない」は、いずれもうその説明として挙げられている
  • 実在する電力会社やその委託会社を名乗る例がある。社名では見分けられない
  • 迷ったら、契約している電力会社に自分から確認する
  • 分電盤の交換工事には電気工事士の資格が必要
  • クーリング・オフ等ができる場合がある。不安なら消費者ホットライン「188」

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「点検」を名目に入ってくる型は、住宅設備でも同じことが起きています。
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※ 本記事の相談件数(2022年度以降)・年代別・契約購入金額・既支払額・地域の広がり・2026年2月受付と2026年5月受付の相談事例・「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」は、独立行政法人国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください−相談が各地に広がり増加しています−」(2026年9月16日公表)およびその報告書本文に基づきます。2020年度・2021年度の件数、2024年6月受付の相談事例、「相談事例からみる問題点」は同センター「「分電盤の点検に行きます」の電話から始まる勧誘に注意−2024年度に急増しています−」(2025年1月15日公表、2025年1月21日更新)に基づきます。点検の頻度・案内方法・身分証・登録調査機関・電気工事士の資格については、経済産業省「電気設備の点検等を装った訪問者に御注意ください」(2025年1月15日公表)に基づきます(いずれも2026年9月17日時点で確認)。分電盤交換の公開料金は、料金表を公開している電気工事店2社のサイト(2026年9月10日時点で確認)によります。法令や制度の適用は、契約の内容や個別の事情によります。実際の判断は、お住まいの消費生活センター等にご相談ください。