感震ブレーカーは、付けなければ地震で電気は切れません|阪神・淡路の出火原因は電気61%、ガス・油器兩17%でした
この記事を読むと分かること
- ★ガスは自動で止まるが、電気は感震ブレーカーを付けていない限り揺れでは切れないこと
- ★阪神・淡路大震災で出火原因が確認された139件のうち、電気が85件(61%)、ガス・油器具は24件(17%)だったこと
- ★3タイプのうち、避難のための待機時間(通常3分)があるのは分電盤タイプだけであること
地震が起きたとき、多くの人がまずガスの火を気にします。ところが、国の資料が示しているのは逆の絵です。ガスは人が何もしなくても止まる仕組みが先に入っていて、止まらないほうは電気でした。
この記事では、内閣府の「感震ブレーカー等の性能評価ガイドライン」、東京都防災ホームページ、東京消防庁、東京ガスネットワーク、リンナイの公表内容だけを使って、感震ブレーカーが要るのはなぜか、3つのタイプは何が違うのか、そして自分の家のガス機器はどこまで自動で止まるのかを整理します。
★地震で自動的に止まるのはガスで、電気は止まりません
ガスメーターは震度5程度以上の揺れを感知すると自動でガスを止めることがあり、ガスコンロにも震度約4以上で自動消火する機種があります。いっぽう電気は、感震ブレーカーという別の機器を付けていない限り、どれだけ揺れても切れません。
東京消防庁は、地震のときの行動についてこう案内しています。
「火の始末は揺れが収まってから行いましょう。現在の都市ガスやプロパンガスは、震度5程度の揺れを感じると自動的にガスの供給を遮断するよう設定されています。」
※ 東京消防庁「地震に備えて」による(2026年9月6日時点で確認)。
揺れている最中に火を消しに行かなくてよい、という案内が成り立つのは、ガス側に自動で止まる仕組みがあるからです。電気にはその仕組みが標準では入っていません。分電盤は、地震では何も判断しません。
★出火原因は、電気のほうがガスより3倍以上多い
内閣府の資料には、出火原因が確認された火災の内訳が載っています。
| 地震 | 件数(原因が確認されたもの) | 電気関係 | その他の内訳 |
|---|---|---|---|
| 阪神・淡路大震災 | 139件 | 85件(61%) | ガス・油器具24件(17%)/その他30件(22%) |
| 東日本大震災 | 110件 | 71件(65%) | 工場設備12件(11%)/その他27件(23%) |
※ 内閣府「感震ブレーカー等の性能評価ガイドラインについて(概要)」(平成27年2月17日)による(2026年9月6日時点で確認)。いずれも出火原因が確認されたものの内訳で、火災の全件数ではありません。
ガス・油器具が原因だったのは17%です。気にしている先と、実際に燃えている先がずれています。
電気が原因になる典型が通電火災です。地震で停電し、避難したあとに送電が復旧したとき、倒れた電気ストーブや破損した電源コードから火が出ます。家に誰もいない状態で燃え始めるので、初期消火する人がいません。
★この数字は「火災の6割が電気」ではありません
母数は「出火原因が確認されたもの」です。原因が分からなかった火災は入っていません。
内閣府の資料も、東京都の説明も、この母数のうえで「過半数」「約6割」と書いています。
確かなのは、原因が分かったものの中では電気が最も多かったということです。
★感震ブレーカーは3タイプあり、工事の要否と切れ方が違います
内閣府のガイドラインは、市販品を分電盤タイプ・コンセントタイプ・簡易タイプに整理しています。
| タイプ | 切る対象 | 電気工事 | 切れるまでの時間 |
|---|---|---|---|
| 分電盤タイプ | 分電盤から先の全部(屋内配線・コンセント・電源コード・電熱器具) | 電気工事士が必要 | 基本型は一定時間後(通常3分後) |
| コンセントタイプ | そのコンセントだけ(屋内配線は対象外) | 埋込型は必要/タップ型は不要 | 即遮断 |
| 簡易タイプ | 分電盤タイプと同じ範囲(ブレーカーのノブを外から操作する) | 不要 | 揺れの感知と同時 |
※ 内閣府「感震ブレーカー等の性能評価ガイドライン」(平成27年2月17日)の第2章による(2026年9月6日時点で確認)。
値段の順で選ぶと、いちばん大事な違いを落とします。分電盤タイプの基本型だけが、揺れを感知してから通常3分の待機時間を置きます。ガイドラインは、この時間を建物からの避難や電気製品の電源を切るための時間だと説明しています。
簡易タイプは揺れの感知と同時に落ちます。夜間なら、揺れている最中にいきなり真っ暗になります。安く工事なしで付けられる代わりに、この差があります。
コンセントタイプは、付けたコンセントしか切りません。壁の中の屋内配線は予防範囲の外です。逆に、切りたくない機器のコンセントには付けない、という選び方ができます。
★分電盤タイプには「増設型」があります
感震機能のない既存の分電盤に、感震リレーを外から付ける方式です。
分電盤ごと取り替えなくても、分電盤タイプにできる場合があります。
ただし漏電ブレーカーが内蔵されていることなど条件があるので、実際に付くかは現物を見てもらってください。
分電盤タイプの価格は、空き回路があるかで変わります
公的資料に価格は載っていません。メーカーが公表している希望小売価格を挙げます。
| 製品 | 品番 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|
| 感震ブレーカー(既設の分電盤の空き1回路に追加) | BQX702 | 25,400円 |
| 漏電ブレーカ AB-60J型 感震ブレーカー機能付(主幹を交換) | BJX340325J2K(40A) | 44,000円 |
| 感震リニューアルボックス(外付け・30A) | BQE3253ZK | 50,800円 |
| 同(60A) | BQE3256ZK | 55,000円 |
| 感震ブレーカー搭載マルチボックス(外付け・回路増設つき・40A) | BQE8407Z | 61,200円 |
※ パナソニック「感震ブレーカー|住宅分電盤」の掲載価格(2026年9月6日時点で確認)。機器の価格だけで、工事費は含みません。施工には電気工事士の資格が必要です。空きスペースの有無や引込線の余長によって、選べる製品が変わります。
空き回路が1つあるかどうかで、25,400円と50,800円に分かれます。分電盤を開けて空きを見ておくと、見積もりの内容が読めるようになります。
「震度いくつで切れますか」に、確実な答えはありません
性能評価試験では、作動確認に震度5強相当、不作動確認に震度4相当の波形を使います。震度4では切れず、震度5強では切れることを確かめる試験です。
ただしガイドラインは、実際の地震では発表された震度が設定より小さくても作動したり、大きくても作動しなかったりすることが想定されると書いています。理由は、地盤・建物の構造・設置した階・壁の剛性・揺れの方向によって、その場所の揺れが変わるからです。
ガス側も同じ書き方です。東京ガスネットワークは「震度5程度以上の揺れを感知したり、ガスの使われかたに異常を感知した場合、安全装置が作動し、自動的にガスを止めることがあります」としています。止まることがある、であって、必ず止まるとは書かれていません。
※ 東京ガスネットワーク「ガスメーターの復帰方法」による(2026年9月6日時点で確認)。
★お使いのコンロに感震停止が付いているとは限りません
ガス側が自動で止まるといっても、コンロ本体の感震停止は全機種に付いている機能ではありません。
リンナイは「揺れピタ」という名前で、「機器本体が震度約4以上の揺れを感知すると自動消火します」と説明しています。ただし同じページに「機能は商品により異なります」と明記されています。
メーカーごとの状況も、公表されている範囲ではこうです。
| メーカー | 感震停止についての公表内容 |
|---|---|
| リンナイ | 揺れピタ。震度約4以上で自動消火。搭載機種はカタログで確認するよう案内 |
| ノーリツ | 同時期に出た2シリーズでも、ミッケには搭載、ファミには非搭載(2024年6月12日リリース) |
| パロマ | ブリリオは2024年5月31日のモデルチェンジで感震停止機能を搭載 |
※ リンナイ「ガスコンロ・ガステーブルの選び方 おすすめ機能」、ノーリツ・パロマの各プレスリリースによる(2026年9月6日時点で確認)。
同じメーカーの同じ時期の製品でも、付いている機種と付いていない機種があります。「ガスコンロは地震で消えるから大丈夫」とは言えません。取扱説明書か型番で、自分の機種に感震停止があるかを確かめてください。
15年ほど使っているコンロなら、そもそも搭載されていない可能性があります。買い替えを考えるときの判断材料のひとつになります。
付ける前に決めておく、停電の備え
内閣府と東京都は、感震ブレーカーの設置とセットで次を挙げています。電気が急に止まっても困らないようにしてから付ける、という順番です。
- 停電時に自動点灯する足元灯や懐中電灯を常備する(夜間に避難経路を見失わないため)
- 生命の維持に直結する医療用機器があるなら、停電に対処できるバッテリー等を備える
- 電気を戻す前に、ガス漏れがないことと電気製品の安全を確認する
- 復電後に焦げたような臭いがしたら、直ちにブレーカーを遮断する。原因が分からなければ電気の使用を見合わせる
- 定期的に作動性能を確認し、必要に応じて部品を交換する
※ 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」ページおよび東京都防災ホームページ「出火防止対策」による(2026年9月6日時点で確認)。
避難先から帰宅して照明がつかないときは、感震ブレーカーが作動している可能性があります。内閣府の留意点は、ガスの臭いがする場合はまず換気とガス会社への連絡を行い、そのうえで屋内を点検してからリセットする、という順番を示しています。
なお、パナソニックの製品は使用開始から約10年でブザー音と表示灯の点滅により交換時期を知らせます。付けたら終わりの機器ではありません。
自治体の補助と、内線規程の位置づけ
東京都は、内閣府および経済産業省のガイドラインに適合した商品を推奨しています。分電盤型は日本配線システム工業会の規格、コンセント型と簡易型は日本消防設備安全センターの推奨が目安です。
区市町村では、設置費の助成や機器の無償配布を行っているところがあります。対象となる機器や世帯は区市町村ごとに違います。都内で新築やリフォームをする住宅事業者向けには、購入費の補助制度もあります。
※ 東京都防災ホームページ「出火防止対策」(令和8年6月25日更新)による(2026年9月6日時点で確認)。金額や対象は自治体ごとに異なるため、お住まいの区市町村の案内でご確認ください。
電気工事の実務側では、内線規程JEAC8001-2016の2019年追補版に感震遮断機能付住宅用分電盤の項目があり、「地震時等の電気火災の発生・延焼等の危険解消に取り組むべき地域」と、都市計画法の防火地域・準防火地域にある木造・鉄骨造の住宅(耐火建築物を除く)については「勧告」、それ以外の全国の住宅には「推奨」とされています。義務ではありませんが、業界の標準としては一段強い扱いです。
★東京都は「グラぴたスイッチ」という愛称を決めています
感震ブレーカーの普及啓発のための投票で決まった名前で、東京都防災ホームページで使われています。
製品の種類が変わるわけではありません。自治体の案内でこの名前を見かけたら、感震ブレーカーのことです。
よくある質問
Q. ブレーカーを手で落として避難すれば足りませんか。
内閣府は、感震ブレーカーを不在時や、ブレーカーを落として避難する余裕がない場合に有効な手段だと位置づけています。在宅していて落ち着いて操作できるなら手動でかまいません。問題になるのは、外出中と、夜間に停電した状態で避難するときです。
Q. 賃貸住宅でも付けられますか。
簡易タイプは電気工事が不要で、ユーザーが比較的容易に設置できるとガイドラインに書かれています。分電盤タイプは電気工事士による工事が必要なので、建物の所有者や管理会社の許可が要ります。個別の可否は契約の内容によります。
Q. 揺れるたびに切れて困りませんか。
性能評価試験では、震度4相当で作動しないことを確認します。ただしガイドラインは、十分な剛性のない壁への設置や、生活振動による誤作動に留意するよう書いています。設置場所の選び方で変わる、というのが公表されている範囲の答えです。
Q. 作動したあと、自分で戻せますか。
分電盤タイプは、通常のブレーカーと同じようにスイッチを戻すことでリセットされます。戻す前に屋内の点検が必要です。破損した電源コードを抜く、電熱器具に覆いかぶさった衣類などを取り除く、水がかかっていないか見る、の3点が挙げられています。
Q. 停電が復旧すれば、電気は自然に戻りますか。
感震ブレーカーが作動していれば戻りません。それが通電火災を防ぐための機能です。逆に、主幹ブレーカーを入れても電気が来ない場合は、電力会社からの送電がまだ止まっていることが考えられます。
Q. ガスと電気、どちらを先に確認しますか。
帰宅時はガスが先です。内閣府の留意点は、ガスの臭いがする場合はまず換気とガス会社への連絡を行い、そのうえで感震ブレーカーの状態を確認する順に書かれています。
まとめ
- ★ガスは自動で止まる仕組みが標準で入っているが、電気は感震ブレーカーを付けない限り揺れでは切れない
- ★出火原因が確認された火災のうち、阪神・淡路では電気85件(61%)に対しガス・油器具24件(17%)。東日本大震災でも電気が71件(65%)
- 電気が原因になる典型は通電火災で、避難して誰もいない家から出火する
- ★3タイプのうち、避難のための待機時間(通常3分)があるのは分電盤タイプの基本型だけ。簡易タイプは揺れの感知と同時に落ちる
- コンセントタイプはそのコンセントだけを切る。屋内配線は予防範囲の外
- 分電盤タイプの機器代は、既設分電盤に空き1回路があればBQX702で25,400円(税抜)、外付けなら50,800円(税抜)から。工事費は別で、電気工事士の資格が要る
- ★「震度いくつで切れる」は確定しない。試験は震度5強相当で作動・震度4相当で不作動だが、実際は建物と設置場所で変わる
- ★コンロの感震停止は全機種にあるわけではない。ノーリツは同時期の2シリーズでも搭載と非搭載に分かれている
- 付ける前に、足元灯・懐中電灯と、医療機器のバッテリーを用意しておく
- 区市町村に設置費の助成や無償配布がある場合がある。対象は自治体ごとに違う
※ 本記事の火災件数・タイプの定義・試験の震度・設置の留意点は内閣府「感震ブレーカー等の性能評価ガイドライン」および同「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」ページ、推奨と自治体制度は東京都防災ホームページ「出火防止対策」、ガスメーターの記述は東京ガスネットワーク、コンロの記述はリンナイ・ノーリツ・パロマの公表内容に基づきます(いずれも2026年9月6日時点で確認)。価格はパナソニックの掲載する希望小売価格(税抜)で、工事費を含みません。制度や補助の適用は、お住まいの自治体や住宅の状況によって異なります。実際の工事の可否は、電気工事士の資格を持つ事業者にご確認ください。