賃貸で虫やネズミが出たら、業者を呼ぶ前に管理会社へ|国民生活センターの相談は2,000件超。20代が約2.6倍に増えています
この記事を読むと分かること
- ★自分で業者を呼ぶ前に、管理会社へ。国民生活センターがそう案内していること
- 相談は2,000件を超え、20代が前年の約2.6倍に増えていること
- 誰が払うのかは民法で決まっていること。ただし場合によって分かれること
賃貸で虫やネズミが出た。深夜だと、なおさら今すぐ何とかしたくなります。
その前に、これだけ読んでください。国民生活センターは、駆除業者へ依頼する前に、まず管理会社や大家に相談するよう案内しています。実際に、賃貸アパートで自分で業者を呼んで高額な請求を受けた事例が公表されています。この記事では、国民生活センターの報道発表資料と、民法・国土交通省の資料をもとに、なぜ先に管理会社なのかと、最終的に誰が費用を払うのかを整理します。
★実際に起きていること
国民生活センターが2024年4月に公表した資料から、賃貸アパートの事例です。
「深夜、居住する賃貸アパートにゴキブリが出た。アパートでゴキブリが出たのは初めてで、怖くなりパニックになった。ネットで調べたところ、約500円からゴキブリの駆除をするという広告を見つけたので業者に電話をした。料金は「1万円くらいになる」とのことだったがすぐに来てもらった。しかし、訪れた作業員からは約10万円の見積書と契約書を渡された。金額が広告や事前の説明と全く違い戸惑ったが、仕方ないと思いクレジットカードで支払った」
そして、この事例にはこう続きます。
「翌日、管理会社の委託業者に部屋を見てもらい事情を話したところ「料金が相場よりかなり高い」と言われた」
※ 国民生活センター「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意-若い年代でトラブル急増中!-」(令和6年4月24日 報道発表資料)の事例1に基づく(2026年9月3日時点で確認)。2023年9月受付・20歳代女性。
管理会社に先に相談していれば、委託業者を紹介してもらえた可能性があります。
相談は増え続けています
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2018 | 854 |
| 2019 | 907 |
| 2020 | 972 |
| 2021 | 1,383 |
| 2022 | 1,612 |
| 2023 | 2,290 |
※ 国民生活センター(PIO-NET)による。シロアリ駆除サービスの件数は除いて集計されています(2026年9月3日時点で確認)。
2023年度は前年同期の約1.5倍で2,000件を超えました。そして年代別の内訳が特徴的です。
| 属性 | 件数・割合 |
|---|---|
| 20歳代 | 439件(21.5%)=最多 |
| 60歳代 | 290件(14.2%) |
| 70歳代 | 283件(13.9%) |
| 女性 | 1,452件(66.2%) |
※ いずれも2023年度受付。国民生活センターの同資料に基づく(2026年9月3日時点で確認)。
10〜20歳代の相談は、2022年度209件から2023年度552件へ、前年同期の約2.6倍に増えています。
深夜に慌てて検索する、が入口です
公表されている事例は、いずれも「深夜」「怖くなった」「パニックになった」という状況から始まっています。
もう1件の事例では、断ったのに「作業した分の料金は払ってもらう」と約7万円を請求され、
「払うように強く脅され」その場でネットバンキングで支払ったとされています。
急いでいるときほど、まず管理会社です。多くの管理会社は緊急連絡先を用意しています。
★誰が払うのか ─ 民法の原則
建物の修繕は、原則として貸主の義務です。
民法第606条(賃貸人による修繕等)
「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」
※ 国土交通省の資料(民法改正法に関するパンフレット)に掲載された条文に基づく(2026年9月3日時点で確認)。ただし書きは2020年4月施行の改正で追記されたもので、国土交通省は「従来の通説によるもので、賃借人に帰責事由がある場合に修繕義務はないことを明文化したもの」としています。
つまり、分かれ目は「借りている側に責任があるかどうか」です。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 建物の隙間・老朽化から入ってくる | 建物側の問題。貸主の修繕義務にあたりやすい |
| 共用部や隣室から広がっている | 同上。個人で解決できません |
| 入居前から発生していた | 同上 |
| ごみを放置していた/不衛生にしていた | 借主の責任が問われることがあります |
| ペットの飼育など契約違反がある | 同上 |
★これは一般的な枠組みです。実際の判断は契約書の内容と個別の事情によります。契約書に特約がある場合もあります。
ネズミとゴキブリでは、話が違いやすい
同じ「出た」でも、原因の在り方が違います。
| 入ってくる経路 | 誰の問題になりやすいか | |
|---|---|---|
| ネズミ | 建物の隙間(1.2cm以上あれば通り抜けます) | 建物側の問題になりやすい |
| ゴキブリ | 排水口・配管まわり・持ち込み・隣室 | 状況による。生活の仕方が問われることもある |
ネズミは「塞ぐ」ことでしか止まりません。そして侵入口を塞ぐのは建物への施工です。借主が勝手に工事することはできません。
★貸主が動かないとき ─ 借主が修繕できる場合があります
2020年の民法改正で、借主が自分で修繕できる場合が明文化されました。
民法第607条の2(賃借人による修繕)
「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき」
※ 国土交通省の資料に掲載された条文に基づく(2026年9月3日時点で確認)。国土交通省は「修繕は本来、処分権限を有する賃貸人のみが行えるところを、例外的に賃借人が修繕できる場合を明記したもの」としています。
★だから「通知した記録」が要ります
一号は「通知し…相当の期間内に必要な修繕をしないとき」です。
通知したことが残っていないと、この条文に乗れません。
電話で伝えただけにせず、メールやアプリのメッセージなど、日付が残る形にしてください。
いつ・何が起きているかを書いて送る。写真も付けておくと確実です。
退去のときはどうなるか
民法第621条(賃借人の原状回復義務)
「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」
※ 国土交通省の資料に掲載された条文に基づく(2026年9月3日時点で確認)。国土交通省は「いわゆる通常損耗等の回復は原則として原状回復義務の内容に含まれないとする判例法理を明文化したもの」としています。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化・通常損耗の修繕費用は貸主負担、故意・過失や善管注意義務違反による損耗は借主負担という整理がされています。
建物の構造に起因して虫やネズミが出ていたのなら、それは借主の「責めに帰すべき事由」ではありません。
やることの順番
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 管理会社・大家に連絡する。緊急連絡先が契約書に書かれています |
| 2 | 記録を残す。日付の残る形で、状況と写真を送る |
| 3 | その場でできる応急処置だけする。市販の殺虫剤など |
| 4 | 契約書の特約を確認する(害虫駆除の負担について書かれていることがあります) |
| 5 | 動かない場合は、通知した記録を持って相談する |
★自分で業者を手配して支払ってしまうと、あとから請求するのが難しくなります。先に連絡してください。
困ったときの相談先
トラブルになったら、消費者ホットライン「188」です。
国民生活センターは、消費者ホットライン188(いやや!)に電話すると、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえるとしています。
※ 国民生活センターの公表内容に基づく(2026年9月3日時点で確認)。
すでに高額な請求を受けている、支払ってしまった、という場合も相談できます。
なお、駆除業者の広告の見方については、こちらにまとめています。
持ち家の場合は話が変わります
ここまでは賃貸の話です。持ち家なら、費用は自分の負担になります。
どこに相談すればいいかは、こちらで整理しています。
シロアリ被害なら、確定申告の雑損控除が使えることがあります。
まとめ
- ★駆除業者へ依頼する前に、まず管理会社や大家へ(国民生活センター)
- 公表されている事例は賃貸アパートで「約500円から」の広告→約10万円の請求。
翌日に管理会社の委託業者から「料金が相場よりかなり高い」と言われた
- 相談は2018年854件→2023年2,290件。2023年度は2,000件超(シロアリ除く)
- 20歳代が439件(21.5%)で最多。10〜20歳代は前年同期の約2.6倍。女性が66.2%
- ★民法606条:修繕義務は貸主。ただし借主に帰責事由があるときは除く
- 建物の隙間・老朽化・共用部が原因なら、建物側の問題になりやすい
- ネズミは「塞ぐ」しかなく、それは建物への施工。借主が勝手にできない
- ★民法607条の2:通知しても相当期間内に修繕しないとき、借主が修繕できる
- だから通知の記録を残す。日付の残る形で、写真付きで
- 民法621条:通常損耗・経年変化は原状回復義務に含まれない
- トラブルになったら消費者ホットライン188
※ 本記事の相談事例・件数は国民生活センター「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意」(令和6年4月24日 報道発表資料)、民法の条文と改正の趣旨は国土交通省が公表する民法改正法に関する資料、原状回復の考え方は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づきます(いずれも2026年9月3日時点で確認)。費用の負担は契約書の内容と個別の事情によって変わります。契約書の特約を確認し、判断に迷う場合は管理会社・大家、または消費生活センターにご相談ください。