猫の引っ越しで先に決めるのは「誰が運ぶか」です|環境省告示は飼い主にも輸送の留意事項を3つ定めています

猫の引っ越しは、荷物より先に「誰が運ぶか」を決めます。引っ越し業者は標準引越運送約款の第4条第2項第3号で動植物の引受けを拒絶することができるため、実際の選択肢は自分の車で運ぶかペット輸送を頼むかの二つに絞られます。どちらを選んでも物差しは同じで、環境省告示第37号「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」が飼い主向けに輸送の留意事項を3つ挙げています。業として運ぶ側には、さらに細かい10項目の基準と、登録番号を書いた標識を掲げる義務があります。

猫の引っ越しで最初に決めるのは、誰が運ぶかです

猫の移動手段は、飼い主自身が運ぶか、動物の輸送を業として行う事業者に頼むかのどちらかになります。引っ越し業者のトラックに一緒に乗せる選択肢は、原則として無いと考えてください。
標準引越運送約款の第4条第2項第3号は、動植物をピアノ・美術品・骨董品と同じ号に並べ、運送に当たって特殊な管理を要するため他の荷物と同時に運送することに適さないものとして、引受けを拒絶することがあると定めています。見積もりのときに申告していないと、当日になって運べないと分かります。
運ぶ人何が変わるか
飼い主が自分の車で運ぶ休憩の取り方も温度も自分で決められる。長距離では運転と猫の見守りを同時にやることになる
動物の輸送を業として行う事業者に頼む国が定めた10項目の基準が掛かる。登録番号を掲げているかを事前に確認できる
引っ越し業者のトラックに同乗させる約款で断れる扱い。申告せずに当日を迎えると運べない

飼い主が自分で運ぶときにも、国が示した留意事項があります

環境省告示第37号「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」は、飼い主に対して動物の輸送で留意すべきことを3つ挙げています(2026年9月26日に環境省サイトで取得した現行版)。
告示が挙げている留意事項猫の引っ越しでの読み替え
疲労と苦痛をできるだけ小さくするため、なるべく短い時間による輸送方法を選び、必要に応じ適切な休憩時間を確保する遠回りの下道より、時間の読める経路を選ぶ。休憩は取る前提で組む
容器等は、動物の安全の確保および動物の逸走を防止するために必要な規模および構造のものを選定するキャリーは「壊れない」だけでなく「開かない」ことが条件。扉の留め具を先に見る
適切な間隔で給餌および給水をし、適切な温度、湿度等の管理と適切な換気に留意する車内の温度は荷室と客室で違う。猫は客室側に置く
※ 告示の本文は「家庭動物等」全体に向けたもので、猫だけを対象にした記述ではありません。右列は当ブログによる読み替えです。

容器の条件に「逸走の防止」が明記されています

告示が容器について求めているのは、安全の確保と逸走の防止の2つです。猫の引っ越しで実際に起きる事故は、ぶつけることより出てしまうことのほうが多く、告示の順番もそこを外していません。

長距離では、新幹線と飛行機で猫の扱いがまったく違います

新幹線は猫を客室に連れて入れますが、飛行機は貨物室に預ける扱いで、客室に連れて入ることはできません。同じ「公共交通で運ぶ」でも、飼い主が猫を見ていられるかどうかが逆になります。
項目新幹線(JR東海)飛行機(ANA・JAL の国内線)
猫をどこに置くか客室。手回り品として座席まで持ち込む貨物室。客室への持ち込みは両社とも不可
料金1個につき290円ANA 税込6,600円(1個1路線・一部路線は税込4,400円)/JAL 5,500円〜7,700円(クレート1個1区間・路線と搭乗日で変動)
容器の大きさ3辺の合計が120センチ以内の動物専用ケースIATAの規定に沿ったクレート。ANA は小型用(S)幅40×奥行55×高さ40センチを小型犬と猫の目安としています
重さケースと猫を合わせて10キロ以内JAL は猫とクレートの合計が32キロ以上になると貨物扱い
手続き乗車駅の改札口などで荷物を見せ、普通手回り品きっぷを買うANA は搭乗日前日までに事前予約。JAL は出発時刻の40分前までに専用カウンターで受付、確認書の提出が必要
※ JR東海「きっぷのルール|手回り品」、ANA「ペットをお連れのお客様(国内線)」、JAL「ペットとおでかけサービス(国内線)」の各公式ページを2026年9月26日に取得した内容です。JR東日本とJR西日本の条件は、下の「JR東日本もJR西日本も、数字は1つも変わりません」で確かめています。JR北海道・JR四国・JR九州と、他の航空会社は確認していません。

新幹線では、抱っこもスリングも認められていません

JR東海は、ペットは全身が入るケースに入れることと定め、抱いたままやバッグに入れた状態では利用できないと明記しています。布状で形態が固定しないもの、たとえばスリングの類も、全身が入っていても不可です。駅や車内でケースから出さないことも同じページに書かれています。
ペットカートは注意が要ります。車輪や取っ手を含めた全体が120センチ以内に収まる場合だけ有料の手回り品として持ち込めるのですが、JR東海は「一般的なペットカート・ペットバギーの場合、全体でペットケースの制限を超えるため持込みはできません」と書いています。カートごと乗せるつもりで駅に着くと、そこで組み直すことになります。

JR東日本もJR西日本も、数字は1つも変わりません

上の表はJR東海の公式ページから取りましたが、JR東日本とJR西日本でも、対象の動物・ケースの大きさ・重さ・料金のどれも同じです。3社が同じなのは、旅客営業規則の同じ条に同じ内容が置かれているためと見られます。条文そのものを直接確認できたのはJR西日本の版(第307条から第310条)だけで、JR東海とJR東日本については公式ページの案内と突き合わせています。
社何を見たかケースと重さ料金
JR東海きっぷのルール|手回り品3辺の合計120センチ以内の動物専用ケース/ケースと動物を合わせて10キロ以内1個につき290円
JR東日本きっぷあれこれ|手回り品同じ(小犬・猫・鳩またはこれらに類する小動物)同じ
JR西日本旅客営業規則 第309条(2026年4月1日現行)3辺の最大の和が120センチメートル以内の専用の容器/専用の容器に収納した重量が10キログラム以内1回の乗車ごとに1個について290円
※ JR東日本の公式ページは2026年9月26日に取得しました。JR西日本は同社が公開している旅客営業規則(2026年4月1日現行)第10章の条文から引いています。JR北海道・JR四国・JR九州は確認していません。

条文まで下りると、290円の意味が変わります

JR西日本だけが規則の条文そのものを公開しているので、そこまで読むと公式ページの案内では分からないことが2つ出てきます。
  1. 290円は「払えば乗せられる」お金ではありません。第309条は、持込区間・持込日その他持込みに関する必要事項を申し出たうえで、当社の承諾を受け、料金を支払って持ち込めると書いています。JR東日本も、他のお客さまに迷惑をおかけするおそれがある場合や列車が大変混雑している場合などは持込みをお断りする場合があると明記しています。改札で見せるのは手続きであって、確認の場です
  1. 猫は「承諾を受けた動物」としてだけ例外になります。第307条は動物を車内に持ち込めないものとして挙げており、そこから除かれるのは、少数量の小鳥・小虫類・初生ひな・魚介類で容器に入れたもの、身体障害者補助犬または盲導犬、第309条の承諾を受けた動物の3つだけです。JR東日本の公式ページは持ち込めない荷物の例外を前の2つまでしか書いていないので、そこだけ読むと猫は乗せられないように見えます
新幹線の特大荷物の心配は要りません。東海道・山陽・西九州新幹線では3辺の合計が160センチを超える荷物に特大荷物スペースつき座席の指定券が必要ですが、有料の手回り品として持ち込めるケースは120センチ以内が条件なので、この線を超えることがありません。
※ 条番号と条文の文言は、JR西日本が公開している旅客営業規則(2026年4月1日現行)によります。他社も同じ番号の条に同じ内容を置いていますが、当ブログが条文を直接確認したのはJR西日本の版だけです。

飛行機は「見ていられない時間」が必ず生まれます

令和3年環境省令第7号が業者に求める10項目のうち、常時目視で動物の状態を確認するという項目には(航空輸送中を除く)という但し書きが付いています。下の「業として運ぶ側には、10項目の基準が掛かります」で引く省令の条文そのままです。空を飛んでいる間は誰も見られないことが、制度の側で前提にされているということです。
航空会社の説明も同じ向きを向いています。両社とも飛行中は貨物室の照明が消えて暗室になると書いており、JALはさらに0.8気圧(2,000メートルの山頂と同程度)になると数値で示しています。ANAは輸送環境について、衰弱もしくは死傷することがあると明記しています。
受け入れの条件も社によって違います。ANAは生後4か月未満を預かりません。JALは生後8週間以上を条件としています。同じ月齢の猫が、片方では預けられて片方では断られます。どちらを使うかを決めてから月齢を確認するのではなく、逆の順番で見てください。
※ 月齢・料金・受付時間は各社の国内線の条件です(2026年9月26日取得)。国際線は検疫の手続きが別に必要になるため、当ブログでは扱っていません。

業として運ぶ側には、10項目の基準が掛かります

動物の輸送を業として行う事業者には、令和3年環境省令第7号が輸送の方法として10項目を定めています。この省令は「他者に委託する場合にあっても、次に掲げる方法により行われるようにすること」と書いており、下請けに出しても基準から外れません。
何について省令が定めている輸送の方法(抜粋)
固定輸送設備は、確実に固定する等により衝撃による転倒を防止すること
見守り輸送中は、常時、動物の状態を目視により確認できるよう、必要な設備を備え、または必要な体制を確保すること(航空輸送中を除く)
頭数輸送する動物の種類および数は、輸送設備の構造および規模ならびに輸送に従事する者の数に見合ったものとすること
広さ輸送設備は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる等日常的な動作を容易に行うための十分な広さおよび空間を有したものとすること
環境必要に応じて空調設備を備える等により、動物の生理、生態等に適した温度、明るさ、換気、湿度等が確保されるようにすること
時間動物の疲労または苦痛を軽減するために、輸送時間はできる限り短くするとともに、輸送中は、必要に応じて休息または運動のための時間を確保すること
※ 令和3年環境省令第7号の第2条から、輸送に関する項目を抜粋しました。2026年9月26日に法令データベースで取得した現行版です。全10項目のうち、繁殖業や販売業だけに掛かる項目は省いています。
この表は、自分で運ぶときの点検表としても使えます。転倒しないよう固定したか、走行中に猫の様子が見えるか、キャリーの中で立ち上がって向きを変えられるか。プロに求められている水準がそのまま並んでいます。

業者に頼むなら、登録番号を確認できます

動物の保管や貸出しなどを業として行う者は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市ではその長)の登録を受けなければなりません。動物の愛護及び管理に関する法律の第10条が定めています。
さらに同法の第18条は、登録を受けた事業者に対し、事業所ごとに、公衆の見やすい場所に、氏名または名称と登録番号などを記載した標識を掲げることを義務づけています。つまり、登録番号は利用者が確認できる前提の情報です。
登録の申請では、事業所ごとに動物取扱責任者を置くことも求められます(同法第10条第2項第3号)。
※ ある事業者の業務が第一種動物取扱業のどの種別に当たるかは、業務の内容によって判断されます。当ブログでは個別の事業者について確認していません。依頼先を選ぶときは、標識または公式サイトに登録番号の記載があるかを見てください。

新居に着いてからの最初の仕事は、逸走の防止です

環境省告示第37号は、逸走の防止について飼い主に3つの措置を求めています。引っ越し直後はこのどれもが崩れる時間帯です。
  1. 飼養施設は、逸走の防止に配慮した構造とすること
  1. 飼養施設の点検等、逸走の防止のための管理に努めること
  1. 逸走した場合に所有者の発見を容易にするため、マイクロチップを装着する等の所有明示をすること
告示は続けて、逸走した場合には自らの責任において速やかに捜索し捕獲することと書いています。搬入作業の間は玄関も窓も開いたままになるため、猫を作業区画の外に置くのは構造の話であって、気持ちの問題ではありません。
同じ告示の第5「猫の飼養及び保管に関する基準」は、疾病の感染防止と不慮の事故防止等の観点から、猫の屋内飼養に努めることとしています。新居の環境が変わっても、この前提は変わりません。

非常時の備えも、同じ告示に書かれています

告示の第3の9「緊急時対策」は、避難先における適正な管理が可能となるための移動用の容器や非常食の用意を求めています。引っ越しで買ったキャリーは、そのまま災害時の備えになります。サイズを合わせておく価値はここにもあります。

引っ越す時期でも、猫の負担は変わります

搬入作業が長引くほど、猫がキャリーで待つ時間は延びます。作業の密度は時期で変わり、繁忙期は人手も時間も薄くなります。
国土交通省は引っ越し需要の平準化を呼びかけており、3月の引っ越し件数は通常月の約2倍と公表されています。詳しくは引っ越しが高いのは3月|国が「通常月の約2倍」と公表しています。ずらすと何が変わるかで扱っています。

見積もりの段階で、猫のことを先に言ってください

ペットの申告は、当日ではなく見積もりのときです。運べないと分かるのが当日だと、預け先も輸送事業者も手配が間に合いません。
優先したいこと向いている方法受け入れること
手間を減らして、厳選された数社で比べたい一括見積もりで数社に絞って当たる比較できる社数は少なめ
とにかく多くの社数を比べたい各社に個別に問い合わせる連絡の手間と時間がかかる
猫を連れて動くことを最初の問い合わせで伝えておくと、運べる社と運べない社が早い段階で分かれます。

よくある質問

猫はキャリーに入れたまま何時間まで大丈夫ですか

環境省告示第37号は時間の上限を数字で示していません。示しているのは「なるべく短い時間による輸送方法を選択する」ことと「必要に応じ適切な休憩時間を確保する」ことです。何時間までという公的な基準は確認できませんでした。

引っ越し業者に猫を運んでもらうことはできますか

標準引越運送約款では、動植物は引受けを拒絶できるものとして挙げられています。対応は会社ごとに違うため、見積もりの段階で確認してください。断られた場合は、動物の輸送を業として行う事業者を別に手配することになります。

ペット輸送の業者はどう選べばよいですか

動物の愛護及び管理に関する法律の第18条により、登録を受けた事業者は事業所に氏名または名称と登録番号を記載した標識を掲げる義務があります。登録番号が確認できるかどうかが、最初の足切りになります。

猫のマイクロチップの手続きは引っ越しで必要ですか

必要です。環境省告示第37号は所有明示の措置としてマイクロチップの装着等を挙げており、登録情報の変更は法律で期限が定められています。犬と猫で扱いが違う点は、当ブログの別記事にまとめています。

新居では猫をすぐに自由にさせてよいですか

環境省告示第37号は、猫について屋内飼養に努めることを求めています。搬入作業中は玄関や窓が開いた状態が続くため、作業が終わるまでは作業区画の外に置いてください。告示は、逸走した場合には飼い主自身の責任で速やかに捜索し捕獲することと定めています。

まとめ

  • 猫の引っ越しで先に決めるのは移動手段です。引っ越し業者のトラックは、約款で動植物の引受けを拒絶できます
  • 飼い主にも物差しがあります。環境省告示第37号は、短い時間で運ぶこと、逸走を防ぐ規模と構造の容器を選ぶこと、給餌給水と温度湿度換気に留意することの3つを挙げています
  • 業として運ぶ側には10項目の基準が掛かります。令和3年環境省令第7号は、転倒の防止、常時の目視確認、自然な姿勢がとれる広さなどを定めており、他者に委託する場合も同じです
  • 依頼先は登録番号で足切りできます。動物愛護管理法第18条が、事業所に登録番号を掲げることを義務づけています
  • 長距離は新幹線と飛行機で扱いが逆です。新幹線は手回り品として客室に持ち込めて290円、飛行機は貨物室に預ける扱いで客室には連れて入れません
  • 新居での最初の仕事は逸走の防止です。搬入中は玄関も窓も開いたままになります