住宅ローンの繰り上げ返済で期間短縮型を選ぶと、住宅ローン控除が消えることがあります|10年は繰り上げた日ではなく初回返済日から数えます
住宅ローンの繰り上げ返済で返済期間が10年未満になると、その年から住宅ローン控除は使えません。国税庁は、この10年を「繰り上げて返済した日から先の残り期間」ではなく「最初に返済した月から、短くなったあとの最終返済月まで」で数えると定めています。
繰り上げ返済には、返済期間を縮める方式と、毎月の返済額を減らす方式の2つがあります。控除が消える可能性があるのは前者だけです。この記事では、国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例、住宅金融支援機構【フラット35】の繰上返済ページ、三菱UFJ銀行の繰上返済ページと注意喚起ページを2026年9月24日に読み、どちらの方式を選ぶと何が起きるのかを並べました。
繰り上げ返済には、期間を縮める方式と返済額を減らす方式があります
一部繰り上げ返済の方式は2つで、毎月の返済額を変えずに返済期間を縮めるか、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らすかのどちらかです。
三菱UFJ銀行は前者を「最終返済期限繰上方式」、後者を「返済額再計算方式」と呼んでいます。一般には期間短縮型・返済額軽減型と呼ばれることが多い2つです。
| 比べるところ | 最終返済期限繰上方式(期間短縮型) | 返済額再計算方式(返済額軽減型) |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 変わらない | 減る |
| 返済期間 | 短くなる | 変わらない |
| 減る利息 | 返済額再計算方式より少なくなる(=より多く減る) | 繰り上げ前より減るが、最終返済期限繰上方式より多く残る |
| 住宅ローン控除 | 適用を受けられなくなる可能性がある | 返済期間が動かないため、この要件には触れない |
| 繰上返済日に指定できる日 | 次回の毎月返済日のみ | 次回の毎月返済日までの任意の営業日 |
※ 三菱UFJ銀行「一部繰上返済」(2025年8月1日現在)の記載にもとづきます。方式の呼び方と指定できる日は金融機関によって異なります。
三菱UFJ銀行は、自行のページで方式の説明のすぐ下に「『最終返済期限繰上方式』は住宅借入金等特別控除の適用が受けられなくなる可能性があります」と書いています。名指しされているのは期間短縮型のほうだけです。
利息が多く減るのは期間短縮型です。ただし期間は元に戻せません
同じ金額を繰り上げるなら、支払う利息が多く減るのは期間短縮型です。ただし一度縮めた返済期間を、あとから延ばし直すことはできません。
三菱UFJ銀行は、最終返済期限繰上方式についてこう書いています。
毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方式です。「返済額再計算方式」と比べてトータルで支払う利息が少なくなりますが、さまざまな出費で毎月の返済負担が大きくなった場合でも再度返済期間の延長はできません。
返済額再計算方式については、こう書いています。
返済期間は変えずに毎月の返済額を減らす方式です。毎月の返済負担を小さくしておくことで将来の出費に備えることが出来ます。総返済額は一部繰上返済を行う前より減りますが、「最終返済期限繰上方式」に比べると多くなります。
どちらを選んでも総返済額は減ります。違うのは、減り方を「期間」で受け取るか「毎月の負担」で受け取るかです。教育費や転職など、数年先に支出が増える見込みがあるなら、期間を縮めきってしまう判断は戻せません。
毎月の返済額そのものが重いと感じている場合は、繰り上げ返済より先に確かめることがあります。
返済期間が10年未満になると、その年から住宅ローン控除は使えません
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象になる借入金の要件のひとつが、償還期間10年以上です。繰り上げ返済でこれを下回ると、下回った年分以後は控除を受けられません。
国税庁のタックスアンサーNo.1225は、要件をこう書いています。
償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済されるものまたは割賦払の期間が10年以上の割賦払の方法により支払われるものであること。
そして同じページのQ&Aで、繰り上げ返済した場合の扱いをはっきり示しています。
当初、償還期間15年の住宅ローンについて、臨時弁済を行ったため償還期間が10年未満となりました。この場合でも引き続き住宅借入金等特別控除の適用を受けることができますか。
臨時弁済により償還期間が10年未満となった場合には、住宅借入金等特別控除の対象とされる借入金に該当しないこととなりますので、償還期間が10年未満となった年分以後は、この特別控除の適用を受けることはできません。
根拠は租税特別措置法第41条第1項と、租税特別措置法関係通達41-19です。質疑応答事例「繰上返済等をした場合の償還期間」も、判定の時点を明記しています。
繰上返済等をした場合の償還期間については、繰上返済等の後の償還期間で判定することとしており、繰り上げて返済したことによって、「償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの」に該当しなくなった場合には、その該当しなくなった年以後については住宅借入金等特別控除を受けることはできないこととされています。
※ タックスアンサーNo.1225は令和8年4月1日現在の法令等、質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令・通達等にもとづく記載です。いずれも2026年9月24日に確認しました。
10年は「繰り上げた日」からではなく「初回返済日」から数えます
ここが取り違えやすいところです。10年は、繰り上げ返済をした日から先の残り期間ではありません。最初に返済した月から、短くなったあとの最終返済月までの長さです。
国税庁はNo.1225の注記で、わざわざこう断っています。
償還期間や賦払期間の10年以上の期間とは、借入金等の債務を負っている期間をいうのではなく、最初の返済等の時から返済等が終了する時までの期間をいいます。
質疑応答事例も同じ数え方で答えています。
繰り上げて支払ったことにより償還期間が短くなったとしても、当初の契約により定められていた最初に償還した月から、その短くなった償還期間の最終の償還月までの期間が10年以上であれば、本年以後も住宅借入金等特別控除を受けることができます。
つまり「残り10年を切ったらアウト」ではありません。すでに何年か返してきた人にとっては、その返してきた年数も10年の中に入ります。
初回返済日から10年たっていれば、この要件では落ちません
初回返済月から10年以上が過ぎていれば、繰り上げ返済で期間をどれだけ縮めても、償還期間が10年未満になることはありません。最終返済月は必ず今日より後になるからです。
数え方を3つの例で確かめます。いずれも当サイトの計算です。
| ケース | 初回返済月 | 繰り上げ後の最終返済月 | 償還期間 | 10年以上か |
|---|---|---|---|---|
| A | 2020年4月 | 2029年3月 | 9年 | 満たさない |
| B | 2020年4月 | 2031年3月 | 11年 | 満たす |
| C | 2014年4月 | 2027年以降のいずれか | 13年以上 | 満たす |
AとBは、どちらも2020年4月に返済を始めて当初の返済期間が15年(最終返済2035年3月)だった人です。期間短縮型で6年ぶん縮めるとAになり、4年ぶんにとどめるとBになります。縮める幅を2年変えただけで、控除が続くかどうかが変わります。
Cは2014年4月に返済を始めた人です。2026年9月の時点で初回返済月から12年5か月が過ぎているため、いま繰り上げ返済をしても最終返済月は必ずそれより後になります。この要件で落ちることは起きません。
危ないのは、当初の返済期間がもともと短い人と、初回返済月から10年たつ前に大きく前倒しする人です。国税庁が例に挙げているのも、償還期間15年のローンでした。
※ ちょうど10年前後になる場合は、自分で判断せず、所轄の税務署と借入先の金融機関に確認してください。要件は「10年以上」なので、1か月の差で結論が変わります。
銀行が挙げている失敗例は3つです
三菱UFJ銀行は「住宅借入金等特別控除に関するご注意」というページを置き、繰り上げ返済で控除が受けられなくなった実例を3つ挙げています。
同行は前置きとして「当行で住宅ローンをご利用いただいているお客さまで、繰上返済等を行った結果、期せずしてローン控除の対象外となりローン控除が受けられなくなるケースがあります」と書いています。
| 何が起きたか | なぜ対象外になったか |
|---|---|
| インターネットバンキングで一部繰上返済をし、繰上返済後も返済前と同額の返済金額で返済することにした | 返済額を変えないという選択は、返済期間を縮めるという意味になる |
| 最終返済期限繰上方式を選び、返済期間が短縮された | 最終返済期限が初回返済日より10年未満になった |
| 土地分と建物分で別々にローンを組んでいて、建物分だけを繰上返済(完済)した | 借入金に建物分が含まれていないと控除の対象にならない |
3つ目は、国税庁のQ&Aと同じ論点です。国税庁も「建物の新築に係る住宅ローンがない場合は、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません」と答えています。土地と建物を分けて借りている人が、金利の高いほうから完済しようとして踏むところです。
1つ目は、画面の操作としては「返済額を据え置く」を選んだだけに見えます。それが期間短縮型の選択そのものだ、という説明が画面に出ているとは限りません。
フラット35では、10年未満になると残高証明書が送られません
【フラット35】は、一部繰上返済の注意書きとして、控除の対象外になることと、確定申告に使う証明書が送られなくなることを同時に書いています。
一部繰上返済をした結果、返済期間(初回返済日から最終回返済日まで)が10年未満になった場合、所得税の税額控除(住宅借入金等特別控除)の対象外になります。そのため、税額控除を受けるのに必要な「融資額残高証明書」は送付されません。
住宅金融支援機構も、括弧の中で「初回返済日から最終回返済日まで」と数え方を明記しています。国税庁の定義と同じです。
繰上返済の条件は、申し込み方法で分かれます。
| 申し込み方法 | 繰り上げられる最低額 | 手数料 | 申し出の期限 |
|---|---|---|---|
| 金融機関の窓口 | 100万円以上 | かからない | 繰り上げて返済する1か月前まで |
| 住・My Note(インターネット) | 10万円以上 | かからない | 一部繰上返済日の6営業日前まで |
繰り上げて返済できる日は月々の返済日です。また、住・My Noteを使った一部繰上返済は2か月以上続けて申し込めず、最短でも1か月おきになります。繰上返済日の直前の返済日の翌日から繰上返済日までに発生する経過利息を支払う場合があることも、機構は明記しています。
※ 住宅金融支援機構【フラット35】「繰上返済」(2026年9月24日に確認)。特定増改築等の場合の下限は10年ではなく5年です。【フラット35】(保証型)を返済中の場合、住・My Noteでの申し込みはできません。
手数料は窓口とインターネットで大きく違います
同じ一部繰り上げ返済でも、窓口かインターネットかで手数料が変わります。三菱UFJ銀行はインターネットが無料、店頭窓口が16,500円(消費税込)です。
| 手続き | 三菱UFJ銀行(インターネット) | 三菱UFJ銀行(店頭窓口) | フラット35 |
|---|---|---|---|
| 一部繰上返済 | 無料 | 16,500円 | かからない |
| 全額の繰上返済(期限前完済) | 16,500円 | 33,000円 | かからない |
| 申し込みの期限 | 繰上返済日の2営業日前 | 繰上返済日の10営業日前 | 1か月前まで(窓口) |
※ 三菱UFJ銀行の金額は消費税込み、2026年9月24日に同行の手数料ページで確認した値です。保証会社を利用している場合は、これとは別に保証会社事務手数料11,000円(消費税込)がかかることがあります(インターネットは無料)。同行が取り扱う住宅金融支援機構の住宅ローンを期限前完済する場合の手数料は無料です。手数料は金融機関ごとに違うので、必ず自分の借入先で確かめてください。
窓口で16,500円を払って50万円を繰り上げるのと、インターネットで無料のまま同じ50万円を繰り上げるのとでは、減らせる利息が同じでも手元に残る金額が違います。少額を何度も繰り上げるつもりなら、この差は回数ぶん積み上がります。
金利が上がっている局面では、期間短縮型でも期間が短くならないことがあります
繰り上げ返済の効果は、金利が動いていない前提で語られがちです。三菱UFJ銀行は、そうならない場合があると注意書きを出しています。
金利上昇局面では、一部繰上返済額によって「最終返済期限繰上方式」でも返済期間が短くならない場合や、「返済額再計算方式」でも返済額が増える場合もあります。
繰り上げて減らした元金より、金利上昇で増えた利息のほうが大きければ、期間短縮型を選んでも期間は縮まりません。変動金利で借りている人は、自分の金利がどう決まっていて、いくつになっているのかを先に確かめてください。
また、多くの銀行には5年ルールがあり、金利が上がっても5年間は毎月の返済額が据え置かれます。据え置かれているあいだに増えた利息は残高に回るため、返済予定表の数字を見ているだけでは変化に気づきにくくなります。
繰り上げ返済の前に、家計の側から確かめたい場合は
繰り上げ返済に回すお金は、手元から出ていって戻ってきません。控除の要件を満たすかどうかと同じくらい、いくらを手元に残すかが効きます。
住宅ローンの返し方だけでなく、家計の組み立てや資産の置き方まで一続きで学び直したい場合は、ファイナンシャルアカデミーの「お金の教養講座」に無料体験セミナーがあります。特定の金融商品の販売ではなく、お金の扱い方を体系立てて教える講座です。
借入額そのものが重いのか、返し方の問題なのかを切り分けたい場合は、こちらもあわせて読んでください。
よくある質問
返済額軽減型なら、住宅ローン控除は消えませんか
返済期間が変わらないため、償還期間10年以上という要件には触れません。三菱UFJ銀行も、控除の注意書きを付けているのは最終返済期限繰上方式のほうだけです。ただし控除額は年末のローン残高をもとに計算されるので、残高が減れば控除額そのものは小さくなります。
全額を繰り上げて完済したら、その年の控除はどうなりますか
その年の12月31日にローン残高が残っていないため、その年の控除は受けられません。住宅ローン控除は、年末時点の残高を計算の土台にする仕組みです。10年の要件とは別の理由で対象外になります。
繰り上げ返済をしたら、確定申告や年末調整で何か必要ですか
返済期間が10年未満になった場合、【フラット35】では控除に必要な「融資額残高証明書」そのものが送られてきません。証明書が届かないことで初めて気づく、という順番になります。要件を満たしているかどうかは、繰り上げる前に借入先へ確認してください。
期間短縮型を選んだあと、返済期間を戻せますか
三菱UFJ銀行は「さまざまな出費で毎月の返済負担が大きくなった場合でも再度返済期間の延長はできません」と書いています。返済が苦しくなったときの手当ては、繰り上げ返済とは別の「返済条件の変更」という手続きになります。同行の手数料ページでは、返済条件の変更はインターネット5,500円・店頭窓口11,000円(消費税込)と案内されています。
借り換えをすると10年の数え方はどうなりますか
借り換えは新しい契約になるため、借り換え後の返済期間で判定されます。三菱UFJ銀行も「お借り換え後の返済期間が10年以上ないと、ローン控除の対象外と見なされます」と注意しています。あわせて、登記費用や保証料などの諸費用を上乗せして借り換えた場合、その諸費用部分は控除の対象になりません。
繰り上げ返済はいくらからできますか
【フラット35】は窓口で100万円以上、住・My Noteで10万円以上です。金額の下限は金融機関ごとに違うので、借入先の案内を確かめてください。
まとめ
繰り上げ返済で住宅ローン控除が消えるのは、返済期間を縮める方式を選び、その結果として償還期間が10年未満になったときだけです。返済額を減らす方式は返済期間を動かさないので、この要件には触れません。
そして10年は、繰り上げた日から先の残り期間ではなく、最初に返済した月から数えます。初回返済月から10年が過ぎている人は、この要件で落ちることが構造的に起きません。逆に、当初の返済期間が短い人と、返済を始めて10年たっていない人は、縮める幅によって結論が変わります。
手続きの前に確かめるのは3つです。当初の初回返済月、縮めたあとの最終返済月、そしてその2つの間が10年以上あるかどうか。ちょうど10年前後になる場合は、所轄の税務署と借入先の金融機関に確認してください。
出典:国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」(令和8年4月1日現在法令等)および同ページのQ&A/国税庁 質疑応答事例「繰上返済等をした場合の償還期間」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)/住宅金融支援機構【フラット35】「繰上返済」/三菱UFJ銀行「一部繰上返済」(2025年8月1日現在)、「住宅借入金等特別控除に関するご注意」、「借入後に必要な住宅ローン手数料」。いずれも2026年9月24日に確認しました。