ゴキブリの害は、刺すことでも噛むことでもありません|東京都の分類は「細菌付着昆虫」で、害は4種類に分かれます
ゴキブリが出たとき、多くの人が気にするのは「刺されないか」「噛まれないか」です。ところが行政の資料を読むと、ゴキブリはその枠に入っていません。東京都保健医療局はゴキブリ類を「細菌付着昆虫」に分類しています。刺す虫でも血を吸う虫でもなく、菌を付けて運ぶ虫として整理されています。
この記事では、自治体と国の資料だけを使って、ゴキブリの害が具体的に何なのかを4つに分けて並べます。あわせて「菌が見つかった」ことと「その菌で人が病気になった」ことが別の話であることも、原文のまま示します。
ゴキブリの害は4つに分かれます
秋田市保健所は、ゴキブリの害を1文にまとめています。
ゴキブリ類は、そのすがたかたちや動きなどによって不快感を与えるほか、病原体を伝播する危険性、食品への混入事故、アレルギーの原因、電気機器の故障などを引き起こすことがあります。
不快感を別にすると、害は4つです。そしてこの4つは、どれも「刺す」「噛む」ではありません。
| 害 | 中身 | これを書いている自治体 |
|---|---|---|
| 病原体を運ぶ | 体や脚に菌を付けたまま移動する | 秋田市/横浜市/大阪市港区 |
| 食品への混入 | 調理場や食品保管場所に入り込む | 秋田市/大阪市港区 |
| アレルギーの原因 | アレルゲンとして働くことがある | 秋田市 |
| 電気機器の故障 | 配電盤やコンセント付近に潜り込む | 秋田市/横浜市 |
※ 秋田市保健所 衛生検査課「衛生害虫(ゴキブリ)」更新 平成30年6月19日、横浜市 医療局健康安全部生活衛生課「ゴキブリについて」最終更新 2024年7月24日、大阪市港区役所「ゴキブリについて」2024年4月1日。いずれも2026年9月17日確認・編集部調べ。
東京都はゴキブリを「細菌付着昆虫」に分類しています
東京都保健医療局の「類別一覧」は、ねずみと衛生害虫を12の類に分けています。ゴキブリ類が入っているのは「4 細菌付着昆虫」で、ハエ類やチョウバエと同じ枠です。
| 類 | 代表例 |
|---|---|
| 1 吸血昆虫 | シラミ類、ノミ類、カ類、トコジラミ |
| 2 刺咬昆虫 | ハチ類、アブ |
| 3 ダニ類 | ツメダニ、イエダニ、チリダニ、マダニ ほか |
| 4 細菌付着昆虫 | ゴキブリ類(チャバネゴキブリ、クロゴキブリ ほか)、ハエ類、チョウバエ |
| 6 不快昆虫 | ユスリカ、チャタテムシ、アリ、カメムシ |
刺す虫は「刺咬昆虫」、血を吸う虫は「吸血昆虫」として別に立っています。ゴキブリはそのどちらでもなく、「付着」という言葉で括られています。害の中心が、虫そのものではなく虫が運ぶものにある、という整理です。
※ 東京都保健医療局 健康安全部環境保健衛生課「ねずみ・衛生害虫 類別一覧」記事ID 115-001-20240726-006727。2026年9月17日確認・編集部調べ。表は12類のうち5類を抜き出したものです。
ゴキブリから見つかった菌は、細菌だけで34属83種です
では、何を運ぶのか。国の研究費で行われた調査が、文献を集計した数字を残しています。
厚生科学研究費補助金による「ハエ以外の衛生害虫とO157伝播に関する基礎研究」(平成9年度・研究代表者の所属は国立感染症研究所)は、関連文献54報を集め、主要なゴキブリ5種から分離が記録された微生物を一覧にしました。その結果が細菌類34属83種です。真菌類の分離記録もあります。
報告書は、見つかった病原体の例も挙げています。
- 赤痢菌
- チフス菌
- MRSA
- サルモネラ菌
- 多剤耐性緑膿菌
捕獲された場所は、病院施設、一般住宅、給食施設、大学施設です。特別な環境ではありません。
「菌が見つかった」と「その菌で病気になった」は別です
ここは正確に読む必要があります。報告書の結論は、次のように書かれています。
文献情報等による調査・解析研究から,ゴキブリは問題となる多種の病原体に汚染されており、それら病原体の伝播媒体として機能しうる可能性があることがうかがわれた。
「機能しうる可能性」までです。この報告書は、日本国内でゴキブリが感染源と確定した事例を示しているわけではありません。文献上の分離記録を集計した第1年次の報告で、O157そのものの感染実験はこの時点では今後の課題とされています。
自治体の書き方も同じです。横浜市は「感染症や食中毒の原因となる菌を媒介することがあります」、大阪市港区は「病原体を媒介する害虫」と書き、どちらも「ゴキブリが原因で発病する」とは書いていません。
※ 厚生労働科学研究成果データベース 文献番号 199700063A「ハエ以外の衛生害虫とO157伝播に関する基礎研究」。2026年9月17日確認・編集部調べ。1997年度の報告である点にご注意ください。
食品への混入は、潜む場所の問題です
横浜市は、ゴキブリが好む場所を条件で挙げています。暖かいところ、暗いところ、餌に近いところ、湿気のある場所、狭いすき間。具体例として並ぶのは、調理台付近、レンジや冷蔵庫の下と裏、食品保管場所、ゴミ置き場です。
秋田市は、生態として次の2点を挙げています。
- 水を好み、しばらく餌が無くても水があれば生息できる
- ざらざらした表面を好み、木よりも紙を好む。段ボールは特に好む
つまり台所は、餌と水と隙間が同時に揃う場所です。食品への混入は「運が悪かった」ではなく、条件が揃った結果として起きます。
アレルギーは、ダニほど確立していません
独立行政法人環境再生保全機構の小児ぜん息Q&Aは、吸入アレルゲンを説明したうえで、こう書いています。
その他のアレルゲンには花粉、カビ、昆虫類などがあります。最近ではゴキブリがアレルゲンとして注目されています。
「注目されています」という書き方です。同じ機構の成人ぜん息のページでは、室内のアレルゲンとしてまず挙がるのはコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニで、昆虫アレルゲンとして名前が出るのはチャタテムシです。ゴキブリは、ダニと同じ扱いにはなっていません。
同機構は、環境整備の前にやることとして「まずは自分のアレルゲンを知ること」を挙げ、血液検査で調べることをすすめています。ぜん息の症状がある人にとっては、ゴキブリ対策をするかどうかより、自分のアレルゲンが何かを先に確かめるほうが順番として早い、ということです。
※ 独立行政法人環境再生保全機構「ぜん息などの情報館」小児ぜん息Q&A Q4-2、および成人ぜん息「悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう」。2026年9月17日確認・編集部調べ。
電気機器の故障は、潜み場所と一致します
秋田市が害の4つ目に挙げているのが電気機器の故障です。なぜ電気機器なのかは、横浜市の潜み場所の具体例を読むと分かります。そこには配電盤、コンセント付近が明記されています。
暖かい、暗い、狭い隙間。この3条件を、通電している機器の内部はそのまま満たします。台所や水回りから離れた場所でゴキブリを見かける場合、餌ではなく温度と隙間が理由になっていることがあります。
害を減らすのに効くのは、殺すことより餌と隙間です
3つの自治体が、そろって同じ順番を書いています。
| やること | 理由 | 出どころ |
|---|---|---|
| 餌を断つ(生ごみ・残飯・ペットフードをふた付き容器へ) | 雑食で、わずかな量でも餌になる | 横浜市/大阪市港区 |
| 水を断つ | 餌が無くても水があれば生息できる | 秋田市 |
| 段ボールや雑誌を積まない | 紙を好み、段ボールは特に好む。潜伏場所にもなる | 秋田市/大阪市港区 |
| 糞で汚れた場所を掃除する | 集団フェロモンが糞とともに排出され、そこに集まる | 大阪市港区 |
| すき間を塞ぐ | 背と腹が同時に触れるような狭い場所を好む | 横浜市/秋田市 |
横浜市は「ゴキブリ防除の基本は、清掃や整理整頓によってゴキブリが住みにくい環境をつくることです」と、薬剤より先に環境を挙げています。大阪市港区も同じ順番です。
殺虫剤が効かないという話ではありません。順番の話です。餌と水と隙間が残っていれば、薬剤で減らしてもまた同じ条件で戻ります。
秋田市は、ゴキブリが好む温度を25〜31℃、20℃以下では活動が低下すると書いています。日本には52種のゴキブリが生息していますが、害虫とされる屋内生活性のものは10種で、主なものはチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリの4種です。
よくある質問
ゴキブリは人を刺したり血を吸ったりしますか
東京都保健医療局の類別一覧では、ゴキブリ類は「細菌付着昆虫」に分類されていて、刺咬昆虫(ハチ・アブ)にも吸血昆虫(カ・ノミ・シラミ・トコジラミ)にも入っていません。行政が問題にしているのは、刺すことではなく運ぶことです。
「昼に1匹見たら100匹いる」は本当ですか
大阪市港区のページには「『昼1匹みたら100匹いる』と言われています」と、伝聞の形で書かれています。匹数が確定した数字として公表されているわけではありません。ただしゴキブリが集団フェロモンで集まって潜伏することは、同じページに生態として書かれています。1匹だけ単独でいる状態のほうが例外だ、という趣旨で読むのが妥当です。
ゴキブリが原因で食中毒になりますか
横浜市と大阪市港区は「原因となる菌を媒介することがある」と書いています。国の研究報告も「伝播媒体として機能しうる可能性」までで止めています。可能性は示されていますが、ゴキブリが原因と確定した事例をこれらの資料は示していません。断定されていない、というのが現在の書かれ方です。
殺虫剤を撒けば減りますか
横浜市は、防除の基本を清掃と整理整頓による環境づくりとし、薬剤はそのあとに置いています。秋田市も環境的対策、化学的対策、物理的対策の3つを並べています。餌と水と潜伏場所が残っていれば、薬剤で一度減らしても条件は変わりません。
賃貸で出た場合、誰に相談すればいいですか
まず管理会社や大家です。建物全体の問題であることが多く、費用の扱いも変わります。国民生活センターも、事業者へ依頼する前に管理会社や大家に相談することを一法として挙げています。
自治体は駆除をしてくれますか
しません。大阪市港区は「相談は行っておりますが、駆除は行っておりません」と明記し、駆除は発生場所の土地の所有者または管理者が行うものだとしています。相談は保健所や区の窓口で受け付けています。
自分で手に負えないときの相談先
環境を整えて市販の毒えさを試しても収まらない、発生源が自分では手の届かない場所にある。そういうときに業者を検討することになります。
害虫駆除110番は、上場企業のシェアリングテクノロジー株式会社(証券コード3989)が運営する紹介サービスです。日本全国・24時間365日受付で、ゴキブリのほかハチ・クロアリ・ノミ・ダニ・トコジラミ・ムカデ・ヤスデに対応しています。料金は公式サイトでゴキブリ駆除16,500円〜(税込)と公表されています。現地で無料の見積もりを作成し、作業日が確定するまではキャンセルできるとされています。
ただし公式サイトには、対応エリア・加盟店・現場状況によっては、事前に確認したうえで調査・見積りに費用がかかる場合があるとも書かれています。必ず無料ではありません。保証は加盟店によるもので、内容は加盟店に確認する形です。
※ 料金・対応範囲・受付時間は害虫駆除110番の公式サイトの公表内容に基づきます(2026年9月17日確認・編集部調べ)。条件は変わるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。
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まとめ
- 東京都保健医療局はゴキブリ類を「細菌付着昆虫」に分類している。刺咬昆虫でも吸血昆虫でもない
- 秋田市保健所が挙げるゴキブリの害は、病原体の伝播、食品への混入、アレルギーの原因、電気機器の故障の4つ
- 国の研究報告では、主要なゴキブリ5種から細菌類34属83種の分離記録が集計されている。赤痢菌、チフス菌、MRSA、サルモネラ菌、多剤耐性緑膿菌の報告がある
- ただし報告書の結論は「伝播媒体として機能しうる可能性」まで。ゴキブリが原因と確定した事例は示されていない
- アレルゲンとしては「注目されている」段階で、ダニと同じ扱いにはなっていない
- 電気機器の故障は、配電盤やコンセント付近という潜み場所と一致する
- 減らす順番は、餌・水・段ボール・糞・すき間が先。薬剤はそのあと
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