エコキュートのタンクは、置いただけなら震度6弱で倒れます|調べた100件中63件は、告示どおりのアンカーボルトではありませんでした
エコキュートの貯湯タンクが地震で倒れる話を、国民生活センターの商品テスト(2018年6月7日公表・2024年8月23日更新)と国土交通省の告示だけでまとめました。コンクリート基礎の上に置いただけのタンクは、震度6弱相当の揺れで倒れています。この記事を読むと、実際に調べた100件の固定状況/2013年4月から義務になっている基準/アンカーボルトの太さと打ち込みで何が変わるか/自分の家のものを確かめる手順が分かります。
エコキュートの貯湯タンクは、満水のときに500kgを超えます。倒れれば機器が壊れるだけでは済まず、外壁や隣家に当たることもあります。それでも、国民生活センターが徳島県内の100件に聞いたところ、倒れるおそれがあると答えたのは19件でした。一方で、実際の固定状況を国土交通省の告示に照らすと、63件は基準どおりの太さ・本数のアンカーボルトが使われていませんでした。
この記事は、その調査と振動試験の結果を、いま家にある機器の点検に使える形で並べたものです。
コンクリート基礎に置いただけのタンクは、震度6弱相当で倒れました
国民生活センターは2017年度に、貯湯タンクを振動台に載せた再現試験を行っています。使ったのは熊本地震(本震)の地震波(観測点:KiK-net益城)を調整した揺れで、震度5弱相当から震度6強相当までです。試験体は実態調査でいちばん多かったヒートポンプ給湯器の460Lタイプ(耐震クラスAの製品)で、幅630×奥行730×高さ2094mm、本体約63kgに水460kgが入って合計は約523kgになります。
| 設置方法 | 震度5弱相当 | 震度5強相当 | 震度6弱相当 | 震度6強相当 |
|---|---|---|---|---|
| コンクリート基礎の上に置いただけ | 移動・転倒なし | 移動あり、転倒なし | 転倒あり | 試験なし |
| 径12mmのアンカーボルトで脚を固定 | 移動・転倒なし | 移動・転倒なし | 移動・転倒なし | 移動・転倒なし |
置いただけのものは、震度5強相当ですでに動き始めています。試験では安全のためロープで転倒を止めていますが、報告書は「実際に発生する地震ではコンクリート基礎から転落する可能性が考えられました」と書いています。震度7相当でも試験は行われ、アンカーボルトが抜けることはなかったものの、本体内部の一部樹脂部品が破損して水漏れが生じたため、公表結果は震度6強相当までです。
この試験は特定の給湯器・地震波・設置方法での結果です。報告書自身が「一般のあらゆる条件において同様の結果になるわけではありません」と注記しています。「震度6弱までなら大丈夫」と読み替えないでください。
調べた100件のうち、63件は告示どおりの太さ・本数ではありませんでした
同じ調査では、徳島県内の100件のモニター家庭について、実際の脚の固定状況が確かめられています(2017年10月から2018年1月。過半数の55件は7年以上前の設置)。改正告示の一号に照らした内訳はこうです。
| 固定の状態 | 件数 |
|---|---|
| 告示一号に基づく太さ・本数のアンカーボルト | 36件 |
| 10mm径のアンカーボルト3本(告示より細い) | 56件 |
| 8mm径のアンカーボルト3本 | 1件 |
| アンカーボルトなどで固定されておらず、置いてあるだけ | 6件 |
| 不明 | 1件 |
不適合の63件のうち、転倒防止措置が義務化された後に設置されたものが9件(うち置いてあるだけが1件)ありました。さらに、基準どおりの太さ・本数だった36件のなかにも、芯棒が根元まで打ち込まれていないものが5件あります。63件の側にも15件あり、合わせて20件です。
ただし、告示より前に設置されたものが基準を満たしていなくても、違法ではありません。建築基準法第3条第2項が、規定の施行前から存在する建築物には当該規定を適用しないと定めているためです。告示自体にも「人が危害を受けるおそれがない場合を除き」というただし書きがあります。問われているのは適法かどうかではなく、揺れたときに倒れるかどうかです。
2013年4月1日から、転倒防止措置は告示で義務になっています
根拠は、建築基準法施行令第129条の2の4に基づく「建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1388号)」です。東日本大震災を受けて平成24年12月12日に改正され(官報 平成24年12月12日号外270号・国土交通省告示第1447号)、平成25年4月1日から施行されています。
日本電機工業会は施行にあたって、施工業者向けにこう告知しています。
この改正により、電気給湯機だけでなく15kgを超える全ての給湯設備について、転倒防止等の措置の基準が明確化されました
つまり対象は「満水時の質量が15kgを超える給湯設備」です。エコキュートについては注記があり、告示の対象になるのは貯湯ユニットだけで、ヒートポンプユニットは該当しません(ただし工事説明書どおりの据え付けは求められています)。措置の取り方は、脚部だけを固定する一号、脚部と上部を固定する二号、壁掛けの三号、計算で安全を確認する四号の4通りです。
戸建てのエコキュートでいちばん使われる一号のうち、地階・1階・敷地の部分に置く場合を抜き出すとこうなります。
| 満水時の質量 | アスペクト比 | アンカーボルトの種類 | 本数 |
|---|---|---|---|
| 15kgを超え200kg以下 | 4.5以下/6以下 | 径8mm以上・埋込35mm以上/径6mm以上・埋込30mm以上 | 3本以上/4本以上 |
| 200kgを超え350kg以下 | 4以下/5以下 | 径10mm以上・埋込40mm以上/径6mm以上・埋込30mm以上 | 3本以上/4本以上 |
| 350kgを超え600kg以下 | 4以下 | 径12mm以上・埋込長さ50mm以上 | 3本以上 |
| 350kgを超え600kg以下 | 5以下 | 径10mm以上・埋込長さ40mm以上 | 4本以上 |
いずれも「おねじ形あと施工アンカー」で、径の代わりに引張耐力(350kg超600kg以下なら3本で5.8kN/本以上、4本で3.6kN/本以上)で満たす書き方もできます。アスペクト比とは、幅または奥行の小さい方に対する高さの比で、大きいほど転倒しやすくなります。
370Lや460Lの貯湯ユニットは満水で350kgを超えるので、下2行に入ります。調査で最多だった「10mm径3本」は、4以下の欄(12mm以上・3本以上)にも5以下の欄(10mm以上・4本以上)にも届きません。太さと本数は必ず組みで見てください。中間階・上層階・屋上ではさらに要求が上がります。
告示とメーカー指定が違うときは、メーカー指定に従います。日本電機工業会は「メーカー指定のアンカーボルト等の使用をお願いします。メーカー指定のアンカーボルト等は告示の内容も満足しており、安全性を考慮して選定されています」としています。告示は下限で、メーカーの工事説明書のほうが厳しいことがあるためです。
太さが1段細いと浮き、芯棒が半分だと抜けます
「細いボルトでも、付いているなら大丈夫では」と思うかもしれません。振動試験はそこも調べています。まず太さの違いですが、M12・M10・M8のどれでも、この試験では転倒しませんでした。違うのは、試験後のアンカーボルトの状態です。
| 太さ | 震度6弱相当 | 震度6強相当 |
|---|---|---|
| M12(径12mm) | 浮きなし | 抜け始め、わずかな浮きが生じた |
| M10(径10mm) | 抜け始め、わずかな浮きが生じた | 抜け始め、浮きが生じた |
| M8(径8mm) | 抜け始め、わずかな浮きが生じた | 抜けかけ、大きな浮きが生じた |
報告書は、細いほど引張強度が小さいことに加えて、「実際に発生する地震では余震が続くことが多く、繰り返しの揺れによって少しずつ抜けてしまう可能性が想定されます」と書いています。試験は各1回です。本震で倒れなかったことは、余震で倒れないことを意味しません。
次に、芯棒の打ち込み不足です。あと施工アンカーは、芯棒をハンマーで根元まで打ち込むと下部が広がり、穴の内側に食い込んで固定されます。この打ち込みを半分で止めたものを、震度6強相当で試しています。
- M10……アンカーボルトが抜け、貯湯タンクが転倒しました。コンクリート基礎も破損しています
- M12……転倒しませんでしたが、根元まで打ち込んだものと比べて大きく浮いていました
太さが合っていても、打ち込みが足りなければ抜けます。調査で見つかった20件は、外から脚を見れば分かる状態でした。
熊本地震の相談82件は、新しい機器でも起きています
2016年の熊本地震のあと、4月14日から10月3日までに、貯湯タンクが転倒したという相談が82件寄せられています。設置時期が分かった55件では、設置からの年数は平均7.1年、最も短いもので2か月、最も長いもので28年で、5年以内のものが約半数を占めました。
日本電機工業会も同年11月に、「今回の熊本地震で転倒した電気給湯器等において、本告示改正後に設置されたと思われるものが20%を占めている」と告知しています。義務化されてから設置されたものでも倒れている、ということです。
公表された相談事例には、設置説明書でM12が指定されているのに実際はM8が使われていた、2つのブロックに載せただけで固定されていなかった、接地面を見たら直置きだった、アンカーボルトを打つ位置が説明書どおりではなかった、基礎が薄くアンカーボルトごと抜けた、といったものが並びます。倒れたタンクで隣家に損害を与えてしまった例もありました。
国民生活センターは問題点として、設置説明書どおりに施工されていないことに加えて、大きな地震が起きるまで設置不良が見過ごされやすいことを挙げています。
自分の家のものを確かめる手順
特別な道具は要りません。順に3つです。
① 設置説明書を探す。アンケートでは、設置説明書を受け取ったと答えたのが43件でした。そのうち「保存していない」と答えた人は0件です(保存している34件、わからない9件)。家に残っている可能性は高いので、まず探してください。指定されたアンカーボルトの太さと本数、打つ位置が書かれています。
② 脚のまわりを見る。脚が何本あり、それぞれにボルトが打たれているか。ブロックやレンガに載っているだけになっていないか。基礎はコンクリートか。ボルトの頭の中心にある芯棒が、まわりと同じ高さまで入っているか。沈み込んでいたら打ち込み不足の可能性があります。斜めに挿し込まれていないかも見ます。
③ 気になったら、施工した業者か販売店に連絡する。国民生活センターは、説明書どおりの工事がされていなかった場合は設置業者に伝えて固定し直してもらうこと、年月の経過で固定が緩む可能性もあるので心配なら点検を依頼することを勧めています。
自分でボルトを締め直したり、打ち直したりしないでください。あと施工アンカーは下穴の径・深さ・埋込深さが決まっており、外して打ち直すと基礎側が傷みます。確認は目で見るところまでにしてください。
耐震クラスは機種ごとに違い、上げる金具は別売です
機器そのものの耐震性能は、耐震クラスS・A・Bという区分で示されます。日立は、一般財団法人日本建築センター「建築設備耐震設計・施工指針」の「局部震度法による建築設備機器の設計用標準震度」に基づく設計用水平震度(KH)を公表しており、地上階設置ならSが1.0G、Aが0.6G、Bが0.4G、2階以上に設置する場合はそれぞれ2.0G・1.5G・1.0Gになります。
区分は社と機種で違います。日立はウレタンクの370L・460Lをどちらも耐震クラスS、フルオート薄型タンクの370L・460LをクラスB対応としています。ダイキンは角型460LをクラスA、薄型370L・460LをクラスBとしたうえで、EXN377AFVなど4機種については基礎アンカーボルトに加えて転倒防止金具(別売品)を設置した場合がクラスS、基礎アンカーボルトのみならAとしています。クラスを上げる金具が別売になっている点は見落とされがちです。日立も、2階以上に設置する場合は上部固定金具(別売)の取り付けが必須だとしています。
そしてダイキンは、角型370Lで3つの地震波による加振試験に転倒しないことを確認したとしたうえで、「地震の特性、周辺環境等により異なるため、全ての震度7の地震で転倒を防止できるものではありません」と書いています。耐震クラスは、据付説明書どおりに施工されて初めて成立する数字です。
タンクの容量が大きいほど満水時の質量も増え、告示の区分も上に移ります。
よくある質問
アンカーボルトが3本しかありません。不足でしょうか
太さとの組み合わせで決まります。満水350kgを超え600kg以下の貯湯ユニットを地階・1階・敷地に置く場合、3本でよいのは径12mm以上(埋込長さ50mm以上)のときです。径10mmなら4本以上必要になります。本数だけでは判断できません。
2013年より前に設置したものは、違法ですか
違法ではありません。建築基準法第3条第2項により、規定の施行前から存在するものには当該規定が適用されないためです。ただし違法でないことと、地震で倒れないことは別です。国民生活センターは、すでに設置されている貯湯タンクについて点検の制度づくりを検討するよう要望しています。
ヒートポンプユニットも固定の対象ですか
告示の対象は貯湯ユニットだけです。日本電機工業会は「エコキュートは貯湯ユニットのみが対象です。ヒートポンプユニットは告示の給湯設備に該当しません」としたうえで、機器の工事説明書に従って確実に取り付け、据え付けるよう求めています。
地震のあと、見た目は倒れていませんが不安です
余震で少しずつ抜ける可能性が試験で指摘されています。脚のボルトに浮きがないか、基礎にひび割れがないかを確認し、気になる場合は点検を依頼してください。タンクが傾いていたり、まわりが濡れていたりする場合は操作せずに連絡してください。
買い替えのときが、固定をやり直せる機会です
すでに設置されている貯湯タンクの固定は、自分では直せません。そのためだけに工事を頼むのも現実的ではないという方が多いはずです。
ただし、買い替えのときは話が別です。据え直すのだから、基礎・アンカーボルトの太さと本数・芯棒の打ち込みを、その機種の据付説明書どおりにできます。見積もりの段階で、指定されているアンカーボルトの太さと本数、既存の基礎を使うのか打ち直すのか、設置説明書とチェックリストを渡してもらえるのかを聞いてください。日本電機工業会は、工事説明書にチェックリストを掲載し、それを使ってチェックしたうえで消費者に渡す仕組みにしていると回答しています。耐震クラスも、機種を選ぶ段階でしか決められません。
いまの機器を使い続けるか迷っている場合は、寿命の考え方から整理してください。断水したときにタンクの水を使う方法も、別の記事にまとめてあります。
出典(2026年9月22日に取得):独立行政法人国民生活センター「地震による転倒の防止策-電気給湯設備の貯湯タンクと家具・家電について-」(2018年6月7日公表・2024年8月23日更新)と報告書本文PDF、同「給湯器の貯湯タンクの転倒-熊本地震の相談より-」(2016年10月20日公表)/一般社団法人日本電機工業会の告示改正に関する2件の告知(2013年3月28日・2016年11月15日)と掲載リーフレット(日本冷凍空調工業会・日本電機工業会、2013年3月発行)/日立とダイキンの製品情報ページ。アンカーボルトの仕様表と件数の内訳は、PDFのページを画像として開いて原文を確かめています(報告書4ページ、リーフレット2ページ)。