給湯器の「無料点検」は断って構いません|ガス給湯器は2021年に法定点検の対象から外れました
この記事を読むと分かること
- ★ガス給湯器は2021年8月1日に、法定点検(長期使用製品安全点検制度)の対象から外れたこと(経済産業省)
- ★いま対象として残っているのは、石油給湯機と石油ふろがまの2品目だけであること
- ★給湯器の点検商法の相談は2023年度に1,099件。契約当事者の7割超が70歳以上で、平均は約45万円であること
「給湯器の無料点検に伺います」という電話がかかってくる。あるいは、突然インターホンが鳴る。契約しているガス会社の名前や、市の名前が出てくるので、断る理由が思いつかない。点検が終わると「このままでは壊れます」「火災の心配もあります」と言われ、その日のうちに30万円、40万円の契約をしてしまう。
独立行政法人国民生活センターは2024年2月21日に、この手口への注意喚起を公表しました。この記事では、その公表資料と、経済産業省が示している制度の中身をもとに、そもそもガス給湯器に法定点検があるのか、業者は何を言ってくるのか、契約してしまったときに何日以内に何をするのかを整理します。
ガス給湯器に「法定点検」の義務はありますか
ガス給湯器は、2021年8月1日から法定点検(長期使用製品安全点検制度)の対象製品ではありません。
この制度は、経年劣化によって重大な事故につながるおそれのある製品を「特定保守製品」に指定し、製造・輸入事業者に所有者への点検通知などを義務づけるものです。2009年4月1日に始まり、当時の対象は次の9品目でした。
| 制度創設当時の対象(9品目) | 2021年8月1日以降 |
|---|---|
| 屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用・LPガス用) | 対象から除外 |
| 屋内式ガスふろがま(都市ガス用・LPガス用) | 対象から除外 |
| 密閉燃焼式石油温風暖房機 | 対象から除外 |
| ビルトイン式電気食器洗機 | 対象から除外 |
| 浴室用電気乾燥機 | 対象から除外 |
| 石油給湯機 | 引き続き対象 |
| 石油ふろがま | 引き続き対象 |
※ 経済産業省「消費生活用製品安全法改正について」(ページ最終更新2021年7月27日)による。除外は消費生活用製品安全法施行令の改正(令和3年7月27日公布、8月1日施行)によるもので、同省は「屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用、LPガス用)、屋内式ガスふろがま(都市ガス用、LPガス用)、密閉燃焼式石油温風暖房機、ビルトイン式電気食器洗機、浴室用電気乾燥機の7製品が特定保守製品から除外されます」と記載しています(2026年9月6日時点で確認)。
国民生活センターも同じ内容を、2024年2月の公表資料の注記に書いています。「2021年8月の改正法施行により、対象は『石油給湯器』『石油ふろがま』のみとなっており、従来指定されていた『屋内式ガス瞬間湯沸器』等7品目は指定対象外となっている」。
★もうひとつ、見落とされやすい点があります
制度の品目名は、いずれも「屋内式」と限定されていました。
多くの住宅で使われている屋外設置のガス給湯器は、制度が始まった2009年の9品目にも当てはまりません。
つまり、屋外に給湯器が置かれている家では、「法定点検の時期です」という話は、はじめから成り立ちません。
点検の通知が届く給湯器は、どれですか
現在も法定点検の通知が届くのは、石油給湯機と石油ふろがま、つまり灯油を燃料とする機器だけです。
国民生活センターの注記によれば、この制度は特定保守製品の製造・輸入事業者に対して、所有者への点検通知と、依頼された場合の点検の実施(有償)などを義務づけています。点検そのものは無料ではありません。
自宅の給湯器がどちらなのかは、燃料で分かります。屋外に灯油タンクがあり、給油して使っているなら石油給湯機です。ガスメーターやガス管につながっているなら、ガス給湯器です。電気温水器は、そもそも制度創設当時の9品目に入っていません。
※ 国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください−70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!−」(2024年2月21日公表)の注記による(2026年9月6日時点で確認)。なお同資料では、ガス瞬間湯沸器・電気温水器・ガス温水ボイラー等を総称して「給湯器」としています。
給湯器の点検を持ちかける電話や訪問は、増えているのですか
給湯器の点検商法に関する相談は、2023年度に1,099件が登録され、前年の同じ時期の約3倍になりました。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2018年度 | 206件 |
| 2019年度 | 241件 |
| 2020年度 | 245件 |
| 2021年度 | 335件 |
| 2022年度 | 561件 |
| 2023年度(12月31日までの登録分) | 1,099件 |
※ 国民生活センターの同資料の図による。2022年度の同期件数(2022年12月31日までの登録分)は346件で、2023年度はその約3倍。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された件数で、消費生活センター等からの経由相談は含まれません(2026年9月6日時点で確認)。
2023年度の数字は12月31日までの登録分なので、年度の途中までで前年度の通年(561件)をすでに超えています。
契約してしまっているのは、どんな人ですか
契約当事者の73.8%が70歳以上です。2023年度の相談1,001件(不明・無回答を除く)の内訳は次のとおりです。
| 年代 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 40歳未満 | 22件 | 2.2% |
| 40歳代 | 42件 | 4.2% |
| 50歳代 | 67件 | 6.7% |
| 60歳代 | 132件 | 13.2% |
| 70歳代 | 283件 | 28.3% |
| 80歳代 | 375件 | 37.5% |
| 90歳以上 | 80件 | 8.0% |
契約購入金額は、10万円以上50万円未満が67.2%で最も多く、平均は約45万円です。50万円以上100万円未満が22.6%、100万円以上も5.5%あります(2023年度・469件)。性別は女性56.4%、男性43.6%(1,067件)でした。
※ いずれも国民生活センターの同資料による。2023年度受付分(2023年12月31日までの登録分)の分析で、不明・無回答等は除かれています。割合は小数点以下第2位を四捨五入しているため合計が100%にならない場合があります(2026年9月6日時点で確認)。
離れて暮らす親の家に、この電話がかかっていると考えたほうが実態に近い数字です。
業者は、何と言って近づいてきますか
国民生活センターは、相談事例から見える問題点として3つを挙げています。
| 段階 | 公表資料に書かれている内容 |
|---|---|
| 1. 近づく | 電話や訪問で給湯器の点検を持ち掛ける。「市から委託された」といったうその説明をしたり、契約中のガス会社を装って訪問するなど、身分を詐称している事例もみられる |
| 2. 不安にさせる | 点検後に「このままでは壊れる」「早く交換したほうがよい」などと不安をあおり、不意打ち的に交換を迫る |
| 3. 急がせる | 「今契約すれば割引する」などの勧誘トークで、考える時間を与えず契約を急がせる |
※ 国民生活センターの同資料「2.相談事例からみる問題点」による(2026年9月6日時点で確認)。
もうひとつ、電話での勧誘時に業者名を明示していないケースも挙げられています。来訪を了承したあとで断ろうと思い直しても、連絡先が分からない、電話が通じないという例が報告されています。
実際に寄せられている相談
公表資料に掲載されているものです。
事例:ガス会社だと思って点検を頼んだら、県外の別の業者だった
「ガス器具の点検を行う。敷地内に立ち入るので在宅していてほしい」と電話があった。築20年以上で、そのうち交換をしようと思っていたため、契約しているガス会社だと思い承諾した。
4日後に訪問した業者から「古くて年数が経っているし落ち葉も入っている、危ないです」と言われ、交換費用は30万円程と言われて契約した。
後で契約書を見返すと、契約しているガス会社ではなく、県外の知らない業者だった。契約しているガス会社に問い合わせると「関係のない業者だ」と言われ、改めて点検してもらったところ「交換の時期ではなく、費用も高額である」と言われた。
※ 2023年4月受付・契約当事者80歳代男性の相談を要約。
事例:「クーリング・オフ期間を過ぎた」と引き留められた
自宅に「給湯器の無料点検をしている」と訪問があり、点検を依頼した。使用年数を聞かれ15年と伝えたところ「もう交換しないと駄目だ」と勧められ、焦ってその場で工事も含め税込みで約40万円の契約をした。
契約中のガス会社に相談したところ「高額では」と言われ不審に思い、解約しようと業者に連絡したら、「もうクーリング・オフ期間を過ぎておりできない。工事日は延期して良いので考え直してほしい」と引き留められた。
※ 2023年8月受付・契約当事者80歳代女性の相談を要約。
このほか、「自治体から委託された」と名乗る業者に電気温水器の交換が必要と言われた例(70歳代女性)、「劣化しているのでいずれ壊れる。火災の心配もある」「今なら割引できる」と言われ約30万円の契約をした例(60歳代女性)が挙げられています。
本物かどうかは、どこで見分けられますか
線は1本です。自分からかけた電話か、向こうからかかってきた電話か。
国民生活センターは、消費者へのアドバイスの1つ目にこう書いています。「給湯器の点検を依頼したい場合には、契約先のガス・電力会社や給湯器のメーカー、販売会社に自分で連絡をしましょう」。
★社名では見分けられません
上の事例のとおり、実在するガス会社を装う例も、自治体の委託を名乗る例も報告されています。
名乗った社名が正しいかどうかは、電話口では確かめられません。
確かめる方法は1つで、その会社の連絡先を自分で調べて、自分からかけ直すことです。
相手が伝えてきた番号にかけ直しても、確認したことにはなりません。
「無料」と言われても同じです。国民生活センターは「たとえ『無料』と言われても、電話や訪問で点検を持ち掛けてきた業者には、安易に点検を依頼しないようにしましょう」としています。点検をさせると、不安をあおられ、契約を急かされる流れに入ってしまうからです。
点検を断りたいのに、連絡がつかないときは
約束の日に業者が来てしまった場合は、インターホン越しに断って、家の中には入れないでください。
国民生活センターは、「断りの連絡をしたがつながらなかったこと、点検は不要であることをインターホン越しにきっぱりと伝え、家の中には入れないようにしましょう」と案内しています。玄関を開けないまま断ってよい、ということです。
契約してしまいました。何日以内に、何をすればいいですか
特定商取引法の訪問販売に当たる場合、契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録でクーリング・オフができます。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内 |
| 方法 | 書面または電磁的記録(メールなど)。書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便等、メールなら送信控えの保存、専用フォームならスクリーンショットの保存が薦められている |
| 電話でアポを取ってから来た場合 | 訪問販売に該当すると考えられる(国民生活センターの注記) |
| 工事が終わっていたら | 役務が既に提供されていても、その対価を支払う必要はない。土地・建物その他の工作物の現状が変更されている場合は、無償で元に戻してもらうことができる |
| 違約金 | 損害賠償や違約金を支払う必要はない。支払い済みの頭金等は速やかに返してもらう |
| 妨害されたとき | 事業者がクーリング・オフについて事実と違うことを告げたり、威迫したりしたためにしなかった場合は、8日を過ぎていてもできる |
| 適用されない場合 | 現金取引で代金の総額が3,000円未満の場合など |
※ 消費者庁「特定商取引法ガイド」の訪問販売の解説による(2026年9月6日時点で確認)。電話でアポイントメントを取って訪問する場合の扱いは、国民生活センターの同資料の注記による。
★「もう期間を過ぎている」と言われたときこそ、確かめてください
上の事例のとおり、「もうクーリング・オフ期間を過ぎておりできない」と引き留められた相談が実際にあります。
期間の起算は、契約日ではなく、法律で決められた書面を受け取った日からです。
そして、事実と違うことを告げられてクーリング・オフしなかった場合は、8日を過ぎていてもできます。
業者の言い分をそのまま受け取らず、消費生活センターに確かめてください。
8日を過ぎても、解約できる場合があります。契約の大切な部分について事実と違うことを告げられ、消費者が誤認して申込み等をした場合には、誤認していたことに気づいた時から1年間、または契約締結時から5年間、その意思表示を取り消せるとされています(国民生活センターの注記)。
相談先はどこですか
消費者ホットライン「188(いやや!)」番です。お住まいの市町村や都道府県の消費生活センター等を案内する、全国共通の3桁の電話番号です。
国民生活センターは「少しでも不安を感じたり、迷ったら早めに家族や知人・最寄りの消費生活センター等に相談しましょう」としています。契約前でも、契約後でもかまいません。
本当に交換が必要かどうかは、どう確かめますか
判断の材料は、訪問してきた業者の話ではなく、自宅のリモコンと使用年数と、自分で取った見積もりです。
給湯器のリモコンに出る888という表示は、故障ではなく、メーカーが決めた使用時間に達したことを知らせる点検のおすすめです。これは機器そのものが出しているサインなので、外から来た人の話とは切り分けて考えられます。
そのうえで、国民生活センターが言うとおり「一つの業者の話だけを聞いてその場ですぐに契約するのではなく、今交換が必要か、交換する機種は納得のいくものなのか、複数の機種の機能や価格を比べて十分に検討」することになります。自分から見積もりを取れば、金額の基準ができます。基準があれば、次に誰かが訪ねてきても、その場で判断する必要がなくなります。
よくある質問
Q. ガス給湯器の法定点検は、本当に無いのですか。
はい。屋内式ガス瞬間湯沸器と屋内式ガスふろがまは、2021年8月1日施行の政令改正で特定保守製品から除外されました。屋外に設置されているガス給湯器は、制度創設当時の9品目にも含まれていません。ただし、メーカーや販売店が任意に案内する有償の点検サービスは別にあります。法律上の義務としての点検が無い、という意味です。
Q. うちは灯油の給湯器です。点検の通知が来たら本物ですか。
石油給湯機と石油ふろがまは今も特定保守製品なので、製造・輸入事業者からの点検通知は制度上あり得ます。ただし、通知が来たからといって、訪ねてきた人が本物とは限りません。通知に書かれた事業者の連絡先を自分で確かめ、自分から連絡してください。点検は有償です。
Q. 電話でアポを取ってから来た業者でも、クーリング・オフできますか。
国民生活センターは、販売業者等が電話をかけて事前にアポイントメントを取って訪問する場合も、特定商取引法の訪問販売に該当すると考えられるとしています。自宅で契約している以上、電話が先にあったかどうかで結論は変わりません。
Q. もう工事が終わってしまいました。8日以内なら、どうなりますか。
消費者庁の解説では、役務が既に提供されている場合でもその対価を支払う必要はなく、土地・建物その他の工作物の現状が変更されている場合は無償で元に戻してもらうことができるとされています。工事が済んでいることは、あきらめる理由になりません。
Q. 「今日契約すれば割引」と言われました。断ると損ですか。
「今契約すれば割引する」は、国民生活センターが契約を急がせる勧誘トークとして問題点に挙げているものです。その日に決めなければ消える割引は、比べる時間を消すためのものです。同じ機種の価格は、他の窓口でも確かめられます。
Q. 点検を断ったら、危ないまま放置することになりませんか。
点検を断ることと、機器を放置することは別です。心配なら、契約先のガス会社やメーカー、販売会社に自分から連絡して点検を依頼してください。国民生活センターが案内しているのも、この順番です。
まとめ
- ★ガス給湯器は2021年8月1日から、法定点検(長期使用製品安全点検制度)の対象ではありません(経済産業省)
- 対象として残っているのは石油給湯機と石油ふろがまの2品目だけです
- 制度の品目名は「屋内式」に限られており、屋外設置のガス給湯器は創設当時から対象外です(石油の点検は有償)
- 相談件数は2022年度561件 → 2023年度は12月31日までで1,099件。前年同期の約3倍
- 契約当事者は70歳以上が73.8%。金額は10万円以上50万円未満が67.2%で、平均約45万円
- 手口は持ち掛ける・不安にさせる・急がせるの3段階。実在するガス会社や自治体の委託を装う例がある
- 社名では見分けられません。確かめる方法は、その会社の連絡先を自分で調べて自分からかけ直すことだけ
- 約束の日に来てしまったら、インターホン越しに断り、家に入れない
- 契約したら書面を受け取った日から8日以内に、書面または電磁的記録でクーリング・オフ。工事が済んでいても対価は不要で、現状変更は無償で元に戻してもらえます
- 「期間を過ぎた」と言われても、それが事実と違えば8日を過ぎてもできます。迷ったら消費者ホットライン「188」
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※ 本記事の相談件数・年代別/性別/金額別の内訳・相談事例・問題点・アドバイス・制度の注記は、独立行政法人国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください−70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!−」(2024年2月21日公表)に基づきます。特定保守製品の品目と2021年の除外は経済産業省「消費生活用製品安全法改正について」(ページ最終更新2021年7月27日)に、クーリング・オフの要件は消費者庁「特定商取引法ガイド」に基づきます(いずれも2026年9月6日時点で確認)。法令や制度の適用は、契約の内容や個別の事情によります。実際の判断は、お住まいの消費生活センター等にご相談ください。