住む場所の決め方は、通勤時間を片道何分までにするかで決まります|全国平均は往復1時間19分で、片道1時間はその1.5倍です
この記事で分かること
- よく引用される「通勤時間の平均」は、行きと帰りを足した1日の合計で、片道の数字ではありません
- 平日に通勤・通学をした人の全国平均は1日1時間19分。片道に直すとおよそ40分です
- いちばん長いのは神奈川県の1時間40分、短いのは山形県と宮崎県の56分です
- 片道1時間は往復2時間で、全国平均のおよそ1.5倍にあたります
- 賃貸に住み替えた世帯は片道40.6分から33.2分へ縮め、注文住宅を建てた世帯は38.4分から42.6分へ延ばしています
住む場所を決めるとき、家賃と広さは数字で比べられるのに、通勤時間だけは感覚で決めてしまいがちです。「1時間くらいなら大丈夫だろう」と思って契約し、半年後に後悔する。よくある話です。
判断材料になる数字は、実は公的統計にそろっています。総務省統計局の社会生活基本調査と、国土交通省住宅局の住宅市場動向調査です。この2つを並べると、自分の通勤時間が全国のどのあたりに位置するのかが分かります。
ただし、この2つは時間の測り方が違います。そこを取り違えたまま比べると、片道と往復が混ざって、全部が中途半端な数字になります。最初にそこから整理します。
通勤時間の全国平均は、往復で1日1時間19分です
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、平日に通勤・通学をした人の通勤・通学時間は、全国平均で1日1時間19分です。
この数字は片道ではありません。同じ調査の用語の解説は、行動分類「通勤・通学」の内容を「自宅と仕事場の行き帰り」「自宅と学校との行き帰り」と定義しています。生活時間調査は1日の行動を積み上げる方式なので、朝の移動と夜の移動の両方がここに入ります。
※ 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 結果の概要(生活時間及び生活行動に関する結果)」表6-1および「用語の解説」。2026年9月24日に公式サイトのPDFで確認。
もうひとつ、混同しやすいのが「行動者平均時間」という言葉です。これは、その日に通勤・通学をした人だけを分母にした平均です。在宅で働いた人や休んだ人は入っていません。つまり1時間19分は「実際に通勤した人の、その日の合計」です。
片道に直すと、単純計算でおよそ40分になります。この見積もりは、あとで出てくる国土交通省の調査(片道で質問しているもの)とほぼ一致します。
都道府県でいちばん長いのは神奈川県の1時間40分、短いのは山形県と宮崎県の56分です
同じ調査の都道府県別の数字です。いずれも平日・行動者平均・1日の合計(行きと帰り)です。
| 順位 | 都道府県 | 通勤・通学時間 |
|---|---|---|
| — | 全国 | 1時間19分 |
| 1 | 神奈川県 | 1時間40分 |
| 2 | 千葉県 | 1時間35分 |
| 2 | 東京都 | 1時間35分 |
| 4 | 埼玉県 | 1時間34分 |
| 5 | 奈良県 | 1時間28分 |
| 6 | 大阪府 | 1時間27分 |
| 7 | 兵庫県 | 1時間24分 |
| 8 | 京都府 | 1時間21分 |
| 9 | 茨城県 | 1時間18分 |
| 9 | 愛知県 | 1時間18分 |
| 41 | 秋田県 | 1時間00分 |
| 41 | 新潟県 | 1時間00分 |
| 41 | 石川県 | 1時間00分 |
| 44 | 鳥取県 | 59分 |
| 45 | 愛媛県 | 57分 |
| 46 | 山形県 | 56分 |
| 46 | 宮崎県 | 56分 |
※ 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」表6-1(都道府県別通勤・通学の行動者平均時間・2021年・平日)。上位11県と下位7県のみ公表されているため、中間の順位は表に出ていません。2026年9月24日確認。
上位4つを関東の1都3県が占めています。5位の奈良県から8位の京都府までは関西で、いずれも大阪に通う圏域です。つまりこの表は「都市の規模」ではなく「大都市に通う人がどれだけいるか」を映しています。
いちばん長い神奈川県と、いちばん短い山形県・宮崎県の差は44分です。1日44分の差は、週5日で3時間40分。仮に年間48週で計算すると176時間になります。年間の勤務日数や休暇の取り方で変わるので幅のある数字ですが、桁としては「1年で1週間ぶん」です。
ただし、この差をそのまま「引っ越せば176時間浮く」と読むのは早いです。県をまたぐ移動は仕事そのものが変わる話になります。現実に効くのは、同じ通勤先のまま住む場所を寄せたときの差です。それが次の数字です。
賃貸に住み替えた世帯は、片道の通勤時間を40.6分から33.2分に縮めています
国土交通省住宅局の令和6年度住宅市場動向調査は、住み替えをした世帯に、住み替えの前と後の通勤時間を片道で聞いています。
| 住み替え先 | 住み替え前(片道) | 住み替え後(片道) | 差 |
|---|---|---|---|
| 民間賃貸住宅 | 40.6分 | 33.2分 | 7.4分 短い |
| 既存(中古)集合住宅 | 42.4分 | 38.8分 | 3.6分 短い |
| 分譲集合住宅 | 45.4分 | 42.4分 | 3.0分 短い |
| 既存(中古)戸建住宅 | 41.3分 | 41.0分 | 0.3分 短い |
| 分譲戸建住宅 | 41.6分 | 42.5分 | 0.9分 長い |
| 注文住宅 | 38.4分 | 42.6分 | 4.2分 長い |
※ 国土交通省住宅局「令和6年度住宅市場動向調査報告書」(令和7年6月公表)2.結果の概要(4)通勤時間。単位は片道分。注文住宅のみ、建て替えを除く三大都市圏の集計です。2026年9月24日にPDFで確認。
賃貸に移った世帯だけ、下げ幅が7.4分と突出しています。往復では約15分です。一方で、注文住宅を建てた世帯と分譲戸建を買った世帯は、通勤時間が延びています。
同じ調査の「住み替え前の居住地」を見ると、理由の見当がつきます。民間賃貸に入居した世帯は65.6%が他の市区町村から移動しているのに対し、注文住宅の世帯は55.6%が同一市区町村内での住み替えです。持ち家は土地の値段と広さで場所が決まり、賃貸は通勤で場所を決められる。数字はその差を映しています。
※ 同調査 2.結果の概要(5)住み替え前の居住地。
ここから言えることは1つです。通勤時間を短くしたいという目的で住む場所を動かすなら、賃貸のほうが実際に短くなっています。持ち家の取得では、通勤時間は縮まる側の条件ではありません。
「通勤1時間はきついですか」への答えは、平均の1.5倍です
片道1時間は、往復で2時間です。全国平均の1時間19分と比べると、約1.5倍にあたります。
もっと分かりやすいのは、都道府県の表と突き合わせることです。いちばん通勤時間が長い神奈川県でも、平均は1日1時間40分、片道に直すと50分です。片道1時間は、47都道府県のどの県の平均よりも長いということになります。
「きつい」かどうかは体感なので統計では決まりません。ただ、自分の通勤が全国のどのあたりにあるかは、これではっきりします。片道1時間で「みんなこれくらいだろう」と思っているなら、それは事実ではありません。
片道1時間半になると往復3時間です。1日24時間のうち8分の1を移動に使う計算になります。
なお、通勤時間の上限を定めた公的な基準は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。通勤手当の非課税限度額(交通機関を使う場合は月15万円)のように金額の基準はありますが、時間の基準はありません。判断の材料になるのは、上に並べた平均値までです。
テレワークが週に何日あるかで、通勤時間の重みは変わります
社会生活基本調査は、テレワークをした日としなかった日の生活時間も分けて集計しています。
平日に仕事があった有業者5,286万7千人のうち、テレワーク(在宅勤務)をしていた人は354万2千人で、全体の6.7%でした。テレワークをした人は、しなかった人と比べて次の差が出ています。
- 通勤・通学の時間が1時間3分短い
- 睡眠時間が18分長い
- 趣味・娯楽の時間が16分長い
- 仕事時間が13分長い
25歳から34歳に限ると、睡眠が41分、趣味・娯楽が28分長くなっています。
※ 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」表3-2、表3-3(2021年・平日・有業者)。調査は2021年10月に実施されたものです。現在のテレワーク実施率は、この記事では確認していません。2026年9月24日確認。
住む場所を決めるときに効くのは、この実施率ではなく、自分が週に何日出社するかです。片道40分なら、週5日出社で週400分、週2日出社なら週160分。差は4時間です。
同じ通勤時間でも、週2日出社なら5日出社の40%しか発生しません。通勤時間を30分縮めるために家賃を上げるかどうかは、出社日数を掛けてから考えるほうが正確です。
家賃を下げて通勤時間を延ばす交換は、いくらぶんの価値なのか
住む場所を決めるとき、多くの人が実際に迷うのはここです。
全国の借家の家賃は、総務省の令和5年住宅・土地統計調査で次のようになっています。
| 借家の種類 | 1か月当たり家賃 |
|---|---|
| 借家(専用住宅)全体 | 59,656円 |
| 民営借家(非木造) | 68,548円 |
| 民営借家(木造) | 54,409円 |
| 都市再生機構(UR)・公社の借家 | 71,831円 |
| 公営の借家 | 24,961円 |
| 給与住宅 | 37,993円 |
※ 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」表7。2023年10月1日現在。借家(専用住宅)全体は2018年比7.1%の増加。1畳当たり家賃は全体3,403円、民営借家(非木造)4,151円です。2026年9月24日確認。
ここで正直に書いておきます。「通勤時間が10分延びると家賃がいくら下がるか」という対応表は、今回、公的統計からは取得できませんでした。住宅・土地統計調査は通勤時間も家賃も調べていますが、公表されている結果の概要には両者をかけ合わせた表がありません。民間の調査には駅別の家賃相場と所要時間を並べたものがありますが、この記事では出典として使っていません。
代わりに、自分の数字で計算する方法を置きます。
- 候補AとBの家賃の差を出す(例:月8,000円)
- 候補AとBの通勤時間の差を、片道の分で出す(例:片道15分)
- 片道の差に2を掛けて、月の出社日数を掛ける(例:15分×2×月18日=540分=9時間)
- 家賃の差を、その時間で割る(例:8,000円÷9時間=約889円/時間)
出た金額が、自分の1時間より高いか安いかを見ます。高ければ近いほうを選ぶ理由があり、安ければ遠いほうを選ぶ理由があります。出社日数を掛ける手順を飛ばすと、週2日出社の人が週5日出社の前提で判断してしまいます。
契約する前に、その場で測っておくこと
内見のときにやっておくと、あとで効くものだけを挙げます。
- 玄関から職場の席までで測る。統計の「通勤時間」は行きと帰りの合計、住宅市場動向調査は片道です。自分で測るときは片道のドアツードアにそろえると、上の数字と比べられます
- ラッシュの時間帯に1回乗る。同じ所要時間でも、座れるかどうかで疲れ方が変わります。日中の内見だけでは分かりません
- 乗り換えの回数を数える。乗り換えが1回増えると、待ち時間だけでなく遅延時の影響も増えます
- 帰りの終電を調べる。朝の所要時間は各社のサイトで分かりますが、深夜の本数は路線でかなり違います
- 通勤手当の上限を勤め先に確認する。定期代が上限を超えると自己負担になります
そのうえで、部屋そのものを決める前に、引っ越しにいくらかかるかを先に把握しておくと、家賃の差と初期費用の差を同じ土俵で比べられます。
引っ越しの費用は、条件を並べないと比較になりません
引っ越し料金は、荷物の量・距離・時期・作業日で決まります。同じ条件で複数社に出さないと、安いのか高いのかが分かりません。一括見積もりは、その条件をそろえた状態で各社の金額を並べるための道具です。
見積もりを取るときは、住所と間取りのほかに「エアコンの移設が要るか」「洗濯機置き場が屋外か」「搬入経路に階段があるか」を最初に伝えてください。この3つは後から出てくると追加料金になりやすい項目です。
引っ越し当日までの手続きの順番は引っ越しでやることに、電気・ガス・水道の連絡先と締め切りは引っ越しの電気・ガス・水道の手続きにまとめています。ひとり暮らしで金額の見当をつけたいときは単身の引っ越し費用を先に読んでください。
よくある質問
通勤時間の平均は何分ですか
平日に通勤・通学をした人の全国平均は、1日1時間19分です(令和3年社会生活基本調査)。これは行きと帰りを足した合計で、片道に直すとおよそ40分です。片道で質問している国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、住み替え後の通勤時間は住宅の種類別に33.2分から42.6分でした。
通勤1時間は長いほうですか
片道1時間は往復2時間で、全国平均の1時間19分のおよそ1.5倍です。通勤時間がいちばん長い神奈川県でも平均は1日1時間40分(片道に直すと50分)なので、片道1時間はどの都道府県の平均よりも長いことになります。
通勤時間は何分までにすべきという基準はありますか
公的な基準は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。通勤手当には非課税限度額という金額の基準がありますが、時間の上限を定めたものはありません。判断の材料になるのは全国平均と都道府県別の平均です。
引っ越すと通勤時間はどれくらい短くなりますか
令和6年度住宅市場動向調査では、民間賃貸住宅に入居した世帯の通勤時間が片道40.6分から33.2分へ、7.4分短くなっています。一方で注文住宅を建てた世帯は38.4分から42.6分へ、4.2分長くなっています。住み替え先の種類によって向きが逆になります。
家賃を下げると通勤時間はどれくらい延びますか
通勤時間と家賃を対応させた公的な表は、この記事では確認できませんでした。全国の借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は59,656円、民営借家(非木造)は68,548円です(令和5年住宅・土地統計調査)。候補ごとの家賃差を、出社日数を掛けた通勤時間の差で割れば、自分にとっての1時間あたりの金額が出ます。
テレワークがあると通勤時間はどれだけ減りますか
令和3年10月の調査では、テレワーク(在宅勤務)をした人は、しなかった人より通勤・通学の時間が1時間3分短く、睡眠が18分長くなっていました。ただし当時の実施率は平日に仕事があった有業者の6.7%で、現在の実施率はこの記事では確認していません。