シノケンのアパート経営で失敗するとしたら、入居率ではなく家賃から引かれるものが原因です|公式が公表している数字だけで確かめました
この記事は、シノケングループが自社サイトで公表している内容だけを材料に書いています。
- シノケンのアパート経営が、どういう仕組みで成り立っているか
- 公式が公表している入居率99.0パーセントが、何の数字なのか
- 家賃から引かれるものと、同社の保証がカバーする範囲
- 同社が2022年に非上場化したあと、どこまで自分で確かめられるか
「シノケン アパート経営 失敗」で検索する人が知りたいのは、たいてい「この会社が危ないのか」ではありません。「自分がやったら失敗しないか」です。この2つは別の問いで、答えの出し方も違います。
この記事では、シノケングループが自社サイトで公表している数字と説明だけを並べて、後者の問いに答えます。利用者の口コミや体験談は使いません。出所が確かめられないものを根拠にすると、確かめ直せないからです。
すべて2026年9月16日に同社サイトで確認した内容です。
シノケンのアパート経営とは、どういう仕組みですか
シノケンのアパート経営は、土地を持っていない会社員や公務員が、同社の用意した土地に新築の木造アパートを1棟建てて所有し、入居者の募集から家賃の回収までをシノケングループに任せる仕組みです。
同社が「土地がなくても、自己資金が少なくても、アパート経営はできる」と掲げているとおり、対象は地主ではありません。公式のよくあるご質問には、オーナーは7,000名を超え、そのうち90パーセント以上が土地をもともと持っていなかった人だと書かれています。
公式が公表している数字を並べると、次のようになります。
| 項目 | 公式の記載(2026年9月16日確認) |
|---|---|
| 創業 | 1990年6月5日(株式会社シノケングループ 会社概要) |
| オーナー数 | 7,000名超。うち90パーセント以上は土地を持っていなかった |
| 始めるときの自己資金 | 6割以上が自己資金300万円未満。「ゼロでは難しい」と明記 |
| 年間平均入居率 | 99.0パーセント(築30年以上の物件を含むグループ全体の年間平均) |
| 家賃滞納保証 | 同社管理の物件は全て標準で最長6か月。滞納発生率は1パーセント未満 |
| 建設会社ランキング | 自社開発棟数のカテゴリで11年連続全国第1位(全国賃貸住宅新聞) |
| 1棟あたりの規模 | 多くは6〜8戸。年間の家賃収入は500万円未満になる設計 |
ここまでは、同社が自分で公表している事実です。問題は、この数字のどれもが「あなたの1棟の手残り」を約束するものではないことです。
入居率99.0パーセントは、あなたの1棟の入居率ですか
入居率99.0パーセントは、シノケングループが管理する物件全体の年間平均であって、個別の1棟や個別の月について保証された数字ではありません。
同社は、この数字を全国平均と比べて示しています。ただし比較の時点がそろっていません。
| 数字 | 何年のものか | 出所(公式の記載どおり) |
|---|---|---|
| グループの年間平均入居率 99.0パーセント | 2025年の年間平均 | シノケン公式「不動産投資に関するリスクヘッジ」 |
| 全国の賃貸住宅の平均入居率 94.2パーセント | 2023年度 | 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅景況調査(同社サイトの出典表記) |
比較の年がずれていることは、数字が間違っているという意味ではありません。同じ年で比べた数字は公表されていない、というだけです。面談で入居率の話が出たら、「何年の、どの範囲の数字ですか」と聞いてください。答えられる数字なら、答えが返ってきます。
そして、入居率が高いことと手元にお金が残ることは、別の話です。満室でも、家賃から引かれるものの合計が家賃を上回れば、持ち出しになります。
家賃から引かれるものには、何がありますか
アパート経営で毎月の家賃から引かれるのは、ローンの返済、管理を任せる費用、修繕のための積立、固定資産税と都市計画税、火災保険と地震保険の保険料です。失敗の多くは、このうちどれかを見込んでいなかったことで起きます。
これは外部の指摘ではありません。同社自身が「アパート経営失敗談」というページで、失敗事例に共通するのは「想定外の出費」と「業者から説明されていなかったリスク」によって予定していた収益が入ってこないことだ、と書いています。
修繕費は、いくら積み立てるよう公式は言っていますか
公式のよくあるご質問は、修繕のための積立として毎月1.5〜2万円、年間20万円前後を勧めています。
同社の説明では、木造の減価償却年数は22年だが自社物件は住宅性能評価の劣化対策等級3に準拠して施工しており、一般には築15〜20年ごろにシーリング目地の打ち直しや屋根の防水塗装をするケースが多い、という前提での金額です。
同社の「アパート経営失敗談」のページには、一般論として別の目安も書かれています。修繕費は家賃収入の3〜5パーセント、多くて7パーセント程度の積立が一般的な割合、という書き方です。
※ 2つの数字は矛盾していません。前者は同社物件を前提にした月額、後者は家賃収入に対する割合です。ただし家賃収入の水準によっては一致しないので、自分の物件の想定家賃で両方を計算し、大きいほうを置いてください。
修繕費は全部オーナーの負担になりますか
全部ではありません。公式は、入居者が負担する部分(故意過失)とオーナーが負担する部分(自然損耗、経年劣化)があると説明しています。
そのうえで同社は、原状回復費用を定額制とするプランを採用し、エアコンと給湯器の修理交換費用は同社管理の場合にグループ企業が負担する、という提案を標準にしていると書いています。
この2つは、オーナー側から見れば「金額が読めない出費を、読める形にする」仕組みです。逆に言えば、同社の管理から外れたときには前提が変わります。契約書で、どの費用がどちらの負担になるのかを見てください。
シノケンの保証は、どこまでをカバーしていますか
同社の家賃滞納保証は、入居者が家賃を滞納したときに同社が立て替える制度で、期間は最長6か月です。空室そのものを埋める保証ではありません。
公式の記載では、グループ会社に家賃保証会社があり、入居者審査を厳格に行っているため滞納の発生率は1パーセント未満を継続しているとされています。そのうえで、同社が管理する物件には全て標準でこの制度が付きます。
| 公式が保証すると書いているもの | 保証の対象外になるもの |
|---|---|
| 入居者の家賃滞納(最長6か月の立替) | 入居者が決まらない状態が続くこと |
| 地盤(国土交通大臣認定の瑕疵担保責任保険法人と提携した20年間の地盤保証) | 借入金利が上がって返済額が増えること |
| 建物の品質(第三者機関による確認、劣化対策等級3に準拠した施工) | 売却するときの価格 |
「保証」という言葉が付いていても、守られるのは左の列だけです。右の列は、どの会社と契約しても自分で引き受けることになります。失敗したという話の多くは、右の列で起きています。
なお、家賃を一定額で借り上げるサブリース契約とは仕組みが違います。サブリースの注意点は不動産投資のサブリース契約の落とし穴|注意点と不利な契約から身を守る方法にまとめています。契約の名前が違えば、借地借家法の効き方も変わります。
金利が上がったら、返済はどうなりますか
アパートローンの多くは変動金利なので、金利が上がれば返済額が増え、その分だけ手元に残る金額が減ります。これも外部の指摘ではなく、同社が自社サイトに書いていることです。
公式の「アパート経営失敗談」には、多くの場合ローンは変動金利で受けるため金利上昇にともなって利息支払額が増大するリスクが生じる、これから金利の上昇が予測されているのでそれを見越した対策が大切だ、と書かれています。
同社が対策の指標として挙げているのがイールドギャップです。公式の定義は「物件の利回り(年間の家賃収入÷物件価格)から、借入金にかかる金利を引いたもの」で、この数値が高いほどリスクが低いと考えられる、としています。
※ イールドギャップは表面利回りから調達金利を引いた数字です。管理費・修繕積立・固定資産税を引く前の利回りなので、この数値がプラスでも手残りがプラスとは限りません。判断に使うなら、諸経費を引いた実質利回りで計算し直してください。
借入条件そのものの比較は、銀行ごとに差が大きい部分です。不動産投資のアパートローン金利を銀行別に徹底比較|変動・固定の選び方と低金利で借りるコツと不動産投資の住宅ローンとアパートローンの違いを徹底解説|両立は可能?順番と注意点までを先に読んでおくと、提示された条件が妥当かどうかを自分で判断できます。
公務員がシノケンでアパート経営をするとき、何に気をつけますか
公務員は副業が禁じられているため、アパート経営の規模には上限があります。同社は、一般的な基準として「合計貸室が10戸以上、賃料が年収入500万円を超過する場合」が兼業にあたると説明しています。
そのうえで公式は、同社が企画するアパートの多くは6〜8戸で年間の家賃収入も500万円未満になるため、必要な手続きを経たうえで多くの公務員が購入していると書いています。
ここから読み取れるのは、公務員にとってこの商品が「1棟までなら収まるが、2棟目からは基準を超えやすい」設計だということです。将来2棟目を考えているなら、最初の段階で所属先の承認の取り方を確認しておかないと、増やせないまま止まります。
※ 上記の10戸・500万円という基準は、同社サイトに「一般的な基準として定義されていることが多いようです」と書かれている内容です。当ブログでは所属先の規程原文までは確認できていません。実際の可否は、必ず勤務先の人事担当に確認してください。
シノケングループの経営状態は、自分で確かめられますか
株式会社シノケングループは2022年にMBOによって非上場化しているため、上場企業に義務づけられた有価証券報告書や四半期ごとの開示を読むことはできません。ただし、売上や利益の推移は自社サイトの財務ハイライトで公表されています。
公式の沿革には「2022年 MBOによる非上場化」、その翌年に「MBOに関する手続きを完了」と記載があります。財務ハイライトのページには「2023年4月にMBOに伴う会社合併手続きを実施」という注記が付いています。
公表されている連結の数字は次のとおりです(単位は百万円)。
| 期 | 売上実績 | 経常利益 | 当期純利益 | 純資産額 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年12月期 | 96,394 | 8,931 | 6,011 | 45,320 |
| 2022年12月期 | 104,525 | 8,610 | 4,785 | 47,834 |
| 2023年12月期 | 105,945 | 8,706 | 5,141 | 19,248 |
| 2024年12月期 | 128,772 | 10,137 | 6,166 | 25,429 |
| 2025年12月期 | 130,975 | 10,483 | 4,921 | 29,764 |
売上は5期連続で増えており、2025年12月期は1,309億75百万円です。一方、純資産額は2022年12月期から2023年12月期にかけて大きく減っています。同社はこの期間について、MBOに伴う会社合併手続きを実施したと注記しています。
「上場企業だから安心」とは書けませんし、「非上場だから危ない」とも書けません。書けるのは、自分でどこまで確かめられるかという範囲の違いだけです。上場していれば決算短信と有価証券報告書を誰でも読めます。非上場なら、会社が自分で出した範囲しか読めません。どちらを選ぶかではなく、読める範囲を知ったうえで判断するという話です。
なお、同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場している株式会社プロパスト(証券コード3236)に37.29パーセント出資しています。関連会社が上場していることと、シノケングループ自身が上場していることは別です。
契約の前に、自分で確かめておく6つのこと
失敗を避けるためにやることは、会社を疑うことではなく、自分の1棟の数字を自分で作れる状態にしておくことです。
- 提示された収支計画から、ローン返済・管理委託料・修繕積立・固定資産税と都市計画税・保険料を引いて、手残りがいくらになるかを自分で計算する
- 変動金利が1パーセント上がったとき、2パーセント上がったときの返済額を、同じ計算表に入れてみる
- 修繕積立は、公式が勧める月1.5〜2万円と、家賃収入の3〜7パーセントの両方で計算し、大きいほうを採る
- 家賃滞納保証が最長6か月であることと、空室が保証の対象外であることを契約書で確かめる
- 公務員なら、所属先の兼業の基準を人事に確認してから話を進める
- 出てきた実績の数字について、いつ時点の、どの範囲の数字かを必ず聞く
1棟の規模や種類そのものを比べ直したいなら、一棟アパート投資のメリット・デメリットを徹底解説|失敗しないために知っておくべきリアルなリスクと不動産投資の種類を比較!区分・一棟・戸建て・REITなど各手法の特徴と初心者に合った選び方を徹底解説が参考になります。
自分で収支を読めるようにしたい人へ
上の6つのうち、1番と2番は計算の話です。ここが自分でできるかどうかで、面談の意味がまったく変わります。売り手の作った収支計画を読むだけの人と、自分で作り直せる人とでは、同じ資料を見ても分かることが違います。
不動産投資の収支計算や融資の基礎を体系的に学ぶなら、不動産投資スクール(ファイナンシャルアカデミー)があります。運営は株式会社FinancialAcademy(2002年6月創立・資本金1,000万円)で、上場企業ではありません。同社は創立以来23年間で延べ80万人を超える受講者があったと公表しており、厚生労働省年金局や東京証券取引所、大学への金融経済教育の提供実績を会社概要に挙げています(2026年9月時点・公式の会社概要より)。特定の物件や会社を勧めるものではないため、面談の前に数字の読み方だけを身につけたい人向けです。
よくある質問
シノケンのアパート経営は、自己資金ゼロでも始められますか
公式は「ゼロでは難しい」と明記しています。よくあるご質問には、6割以上の人が自己資金300万円未満で不動産投資を始めているとあり、物件の内容や収入によっては少額の自己資金でも可能な場合があると書かれています。ゼロで始められるという記載は見当たりませんでした(2026年9月16日確認)。
入居者が家賃を滞納したら、オーナーの収入はどうなりますか
同社が管理する物件には標準で家賃滞納保証が付き、滞納があった場合は同社が立て替えてオーナーに支払うと公式に書かれています。期間は最長6か月です。6か月を超えた場合や、そもそも入居者がいない空室の場合は、この制度の対象ではありません。
修繕費は毎月いくら見ておけばいいですか
公式のよくあるご質問は、毎月1.5〜2万円、年間20万円前後の積立を勧めています。ただし同社の別ページには、一般論として家賃収入の3〜5パーセント、多くて7パーセント程度という目安も書かれています。想定家賃で両方を計算し、大きいほうを置いておくと安全側に倒せます。
シノケングループは上場していますか
していません。公式の沿革によれば、2002年にJASDAQへ上場し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行した後、同じ2022年にMBOによって非上場化しています。ただし売上・経常利益・当期純利益・総資産・純資産の推移は、自社サイトの財務ハイライトで公表されています。
公務員でもアパートを持てますか
同社は、一般的な基準として合計貸室10戸以上または賃料年収入500万円超が兼業にあたると説明し、自社が企画するアパートの多くは6〜8戸で年間家賃収入500万円未満になるため、必要な手続きを経たうえで多くの公務員が購入していると書いています。実際の可否は所属先の規程で決まるため、人事担当への確認が先です。
売りたくなったときに売れますか
公式は、人気の地区に厳選して紹介しているため、アパート経営を考えている人以外にも買主が見つかると考えられる、という説明をしています。ただし、いくらで売れるかを保証する記載はありません。売却価格は購入時に決まらないので、返済が進んで残債が下がるまでの期間を織り込んでおく必要があります。
まとめ
シノケンでアパート経営を始めて失敗するとしたら、原因は入居率ではなく、家賃から引かれるものを見込んでいなかったことです。同社が公表している入居率99.0パーセントも、家賃滞納保証の最長6か月も、修繕積立の月1.5〜2万円も、すべて公式が自分で書いている数字です。隠されているわけではありません。
一方で、空室が続くこと、金利が上がること、売るときの価格については、どの会社と契約しても自分で引き受けることになります。2022年に非上場化しているため、経営の中身について自分で読める資料の範囲も限られます。
判断の分かれ目は、会社を信じるかどうかではなく、提示された収支計画を自分で作り直せるかどうかです。作り直してみて数字が残るなら進めばよく、残らないなら、その1棟は買うべきではありません。
※ 本記事に記載したシノケングループの数値・記載は、すべて2026年9月16日に同社公式サイト(アパート経営のシノケン/株式会社シノケングループ)で確認したものです。条件や金額は変更される可能性があるため、契約前に必ず最新の情報をご確認ください。