全館空調システム導入ガイド【種類・費用・メリット・デメリットを徹底解説】

2025/9/29 15:272025/9/29 15:28

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本記事は作成日時時点の情報を元に調査・記載されています。

はじめに

高気密・高断熱住宅が標準となりつつある現代において、住まい全体の快適性を根本から見直す「全館空調システム」が大きな注目を集めています。リビングは快適なのに、廊下や脱衣所は夏は蒸し暑く、冬は凍えるように寒い、といった家の中の温度差は、生活の質を低下させるだけでなく、ヒートショックなどの健康リスクにも繋がります。全館空調は、こうした課題を解決し、家全体を24時間365日、均一で快適な温度・湿度に保つための先進的なソリューションです。

しかし、その一方で「導入費用が高いのでは？」「電気代は？」「メンテナンスが大変そう」といった不安や疑問の声も少なくありません。この記事では、全館空調システムの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、種類と選び方、そして気になる費用まで、導入を検討する上で知っておくべき全ての情報を網羅的に解説します。後悔しない家づくりのために、ぜひ最後までご覧ください。

全館空調システムとは？

全館空調システムとは、一台の室内機（空調ユニット）と、各部屋に空気を送るためのダクト（またはそれに代わる仕組み）によって、家全体の冷暖房、換気、空気清浄などを一元的に管理するシステムのことです。部屋ごとに設置する壁掛けエアコンが「分散型」であるのに対し、全館空調は「中央集中型」の空調システムと言えます。2003年に義務化された24時間換気システムと一体化している製品が多く、家全体の温度を快適に保ちながら、常に新鮮でクリーンな空気を循環させることができるのが大きな特徴です。

全館空調の主なメリット

導入することで、私たちの暮らしに多くの恩恵をもたらす全館空調。その具体的なメリットを見ていきましょう。

家中どこでも快適な温度環境

最大のメリットは、家の中の温度がほぼ均一に保たれることです。夏は涼しく、冬は暖かい快適な空間が、リビングだけでなく廊下、玄関、洗面所、トイレに至るまで家全体に広がります。これにより、冬場のヒートショックのリスクを大幅に低減できるほか、部屋間の移動による不快感がなくなり、住まいの快適性が飛躍的に向上します。

計画的な換気によるクリーンな空気

全館空調は、多くの場合、第一種換気（給気・排気ともに機械で行う）と熱交換システムを組み込んでいます。高性能なフィルターを通して外気を取り込むため、花粉、PM2.5、ホコリなどを除去したクリーンな空気が常に室内を循環します。窓を開けて換気する必要がないため、外の騒音や排気ガス、虫の侵入などを気にする必要もありません。

室内空間のデザイン性向上

各部屋に壁掛けエアコンを設置する必要がなくなるため、壁や天井がすっきりとし、インテリアの自由度が高まります。エアコン本体や配管が露出しないため、生活感のない洗練された空間デザインを実現できるのは、大きな魅力と言えるでしょう。

高い省エネ性能（高気密・高断熱住宅の場合）

「家中の空調をつけっぱなしにするなんて、電気代が高そう」と思われがちですが、これは誤解です。全館空調は、住宅そのものが高い断熱性・気密性を備えていることを前提に設計されています。魔法瓶のように外気の影響を受けにくい家で、熱交換換気システムによって排気する空気の熱を回収しながら効率的に運転するため、結果的に個別のエアコンを各部屋でつけたり消したりするよりも、年間のトータル光熱費を抑えられるケースが多くあります。

全館空調のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方で、導入前にはデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。

高額な導入コスト

最大のデメリットは、初期費用が高額であることです。システムの規模や種類、住宅の大きさにもよりますが、一般的に150万円から300万円程度の導入コストがかかります。これは、複数の壁掛けエアコンを設置する場合に比べて、大幅に高い金額です。長期的なランニングコストまで含めたトータルコストで判断することが重要です。

メンテナンスの手間と費用

快適な空気を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。フィルターの清掃や交換は自分で行う必要がありますが、数年に一度は専門業者によるオーバーホールや、ダクト内部のクリーニングが必要になる場合があります。これらの維持管理費用も、あらかじめ考慮しておく必要があります。

故障時の影響が大きい

中央集中型のシステムであるため、万が一、空調ユニット本体が故障してしまうと、家全体の冷暖房と換気がストップしてしまいます。修理が完了するまでの間、家全体が非常に不快な環境になるリスクがあります。修理費用も高額になる可能性があるため、メーカーの保証期間やサポート体制は事前にしっかりと確認しておきましょう。

部屋ごとの細かな温度調整が苦手

システム全体で家中の温度を均一に保つことを目的としているため、「リビングは25℃、寝室は23℃」といった部屋ごとの細かな温度設定は基本的に苦手です。家族間で快適だと感じる温度が異なる場合、誰かが我慢を強いられる可能性があります。ただし、最近では部屋ごとの温度調整に対応した高性能なモデルも登場しています。

失敗しない全館空調の選び方

高価な買い物だからこそ、失敗は避けたいもの。ここでは、システム選定の重要なポイントを解説します。

設置方式（ダクト式 vs ダクトレス）

ダクト式: 天井裏や床下にダクト（空気の通り道）を張り巡らせ、各部屋に空気を送る最も一般的な方式です。家全体の温度を均一にしやすい一方、ダクトの設計・施工が複雑で、将来的なメンテナンスが課題となる場合があります。

ダクトレス式: 各階やゾーンごとに小型の空調ユニットを設置し、壁内などを通して空気を循環させる方式です。ダクト式に比べて設計の自由度が高く、メンテナンスも比較的容易ですが、ダクト式ほどの温度の均一性を得るのが難しい場合があります。

熱交換方式の種類（全熱交換 vs 顕熱交換）

換気時の熱交換には2つの方式があり、地域の気候に合わせて選ぶことが重要です。

全熱交換: 温度（顕熱）だけでなく、湿度（潜熱）も交換する方式です。冬は室内の湿度を逃がさず、夏は外の湿気が入ってくるのを防ぐため、一年を通して快適な湿度を保ちやすいのが特徴です。日本の多くの地域に適しています。

顕熱交換: 温度のみを交換し、湿度は交換しない方式です。梅雨時など、湿度が高くジメジメした気候の地域や、積極的に除湿したい場合に適しています。

住宅の断熱性・気密性（UA値・C値）

何度もお伝えしますが、これが最も重要なポイントです。全館空調システムの性能は、住宅の断熱性能（UA値）と気密性能（C値）に大きく左右されます。性能の低い家（隙間が多く、断熱が不十分な家）に高性能な全館空調を導入しても、エネルギーがどんどん逃げてしまい、宝の持ち腐れになってしまいます。必ず、信頼できる住宅会社と相談し、高いレベルの断熱・気密性能を確保しましょう。

メンテナンスのしやすさ

日常的なフィルターの清掃がしやすいか、定期点検や部品交換の費用はどのくらいかなど、長期的なメンテナンス性も必ず確認しましょう。メーカーや施工業者によってサポート体制は様々ですので、複数の会社を比較検討することが大切です。

まとめ

全館空調システムは、家中どこにいても快適な温度とクリーンな空気環境を実現する、まさに究極の空調ソリューションです。しかし、その恩恵を最大限に享受するためには、高額な初期投資、継続的なメンテナンス、そして何よりも住宅自体の高い断熱・気密性能が不可欠となります。メリットとデメリットを正しく理解し、ご自身のライフスタイルや予算、そして家づくりのパートナーとなる住宅会社と十分に相談した上で、慎重に導入を判断することが成功の鍵です。

このような大規模な設備投資を伴うリフォームや新築の際には、信頼できる専門家のアドバイスが欠かせません。例えば、東京ガスでは、ガス機器だけでなく、住まい全体のエネルギー効率や快適性を向上させるための様々なソリューションを提案しています。全館空調のような複雑なシステムについても、専門的な知見からご家庭に最適なプランを一緒に考えてくれるでしょう。

参考文献

- ホームフォーユー. (2025, July 30). 【2025年最新】全館空調ハウスメーカー14社を徹底比較！. HOME4U. https://house.home4u.jp/contents/maker-12-6520

パパまるハウス. (n.d.). 後悔しない全館空調の選び方！ダクト式？ダクトレス式？違い. パパまるハウス. https://www.papamaru.jp/archives/column/column-150

ビー・イナフ. (2024, March 14). 致命的なデメリット！「全館空調システム」を絶対におすすめしない“3つ”の理由. Be-enough. https://be-enough.jp/blog/performance/ventilation/p11677/

Looopでんき. (2025, March 11). 全館空調の電気代はどれくらい？. Looopでんき. https://looop-denki.com/home/denkinavi/electricitybill/homeappliance/airconditioning-throughout-the-building/

スティーベルエルトロン. (n.d.). 第一種熱交換換気システムとは？. STIEBEL ELTRON. https://www.stiebel-eltron.co.jp/products/air_conditioning/about/exchange.html

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