パロマ瞬間湯沸器の死亡事故 - 被害と原因について

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2006年、ある死亡事故の再捜査要望が警視庁に提出されました。この要望は、約10年前に発生した事故に関するものでした。当初、警察は「心臓発作による病死」と判断しましたが、後に事件の真相が明らかになっていきます。この事故は、日本の製造業界に大きな影響を与えた重大事故として知られています。企業の在り方、製品の安全性、そして企業の社会的責任について、多くの教訓を残しました。事故後の対応や訴訟、企業文化の変革など、様々な視点から考えさせられる事例です。また、この事故は消費者と企業の関係性、製品への信頼のあり方についても重要な示唆を与えています。現在も企業イメージへの影響は続いていますが、この経験を活かし、安全性を最優先する企業として生まれ変わろうとする姿も見られます。

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青年Y

2006年2月、警視庁にある事故の再捜査が要望されました。約10年前の1996年3月、ギタリストである1人の青年、Yさんの死亡事故に関する再捜査の要望です。
事故発生当時、Yさんと連絡が取れなくなった家族は、Yさんの友人に「様子を見てきてほしい」と頼みます。友人2人が目にしたのは、変わり果てたYさんの姿でした。
現場検証を行った警察は、死因を病死と判断しました。そして、遺族に「心臓発作」と伝えました。担当刑事は「本人の健康管理や、親の監督がなっていない」と言い放ったとされています。
Yさんの遺体は、すでに死後3週間が経過し、腐敗が進んでいました。Yさんの父親と弟は、遺体を回収するために、地元・島根県から東京都を訪ねました。母親はショックで取り乱していたため、Yさんの変わり果てた姿を見せないように、父親はそのまま荼毘に付したと言います。
Yさんの母親は、ショックから立ち直れず、やがて鬱病を患いました。そして、10年間、息子の死に苦しみ続けました。
悩んだすえ、警察に写真は残っていないのか、尋ねて手に入れた「死体検案書」。いわゆる「死亡診断書」です。そこには、なんと「一酸化炭素中毒」と書かれていたのです。致死量50%と言われる血中一酸化炭素濃度は、82.1%という高濃度でした。
これが、遺族が警察に対して「真実」を求めた再捜査を要望した契機になります。
被害者のYさん
被害者のYさん

再捜査

Yさんの死亡事故発生から10年後の2006年3月、刑事課による再捜査が始まりました。6月には、凶悪犯罪を取り扱う警視庁捜査一課が再捜査に参加しています。
捜査一課は、当時、Yさんが住んでいた建物において、そのまま残されていたパロマ製の給湯器を見つけます。この給湯器は、瞬間湯沸かし器、小型湯沸かし器とも呼ばれる製品です。家の中に設置されており、ダイヤル操作で点火や給湯ができました。
問題のガス瞬間湯沸かし器
問題のガス瞬間湯沸かし器
当時は現在主流となっている屋外設置型の給湯器はまだ高価であり、瞬間湯沸かし器がよく採用されていました。
事故現場にあった瞬間湯沸かし器には、不正な改造が施されていました。電気が通っておらず、排気ファンが動いていないにも関わらず、ガスが流れ、燃焼してしまう状態でした。ファンが回っていなければ、当然に燃焼用の空気が不足してしまいます。不完全燃焼したガスは一酸化炭素となり、室内に逆流しました。
事故発生当時、Yさんは金回りが悪く、光熱費を滞納してしまい、電気を止められていたそうです。
警視庁は、Yさんが住んでいたマンションにおいて、同様の不正改造された瞬間湯沸かし器を見つけます。捜査範囲を広げる必要性を感じた警察は、経済産業省に対して問い合わせを行うことにつながります。
そうして、1985年以降、パロマ製の湯沸かし器の不正改造による事故が全国で17件発生し、15人が死亡していたことが確認されました。その後、最終的には28件、21人が死亡する事故が発生していたことが分かったのでした。

パロマの他責

2006年7月14日、経済産業省は、「パロマ工業製瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故の再発防止について」、記者発表を行いました。
パロマに対して、点検と改修、相談窓口の設置、原因究明の報告を求めました。
同日、パロマの小林社長も、記者会見に臨んでいました。
小林氏の答弁は、「自社には全く責任がない」、「全て他責によって起きた事故である」というものでした。
Q. 事故原因は何か。 A. 安全装置が不正改造され、換気ファンが作動しないで一酸化炭素中毒が発生したのが原因である。不正改造は長期間使用で劣化した機器をさらに使用できるようにするためだと思われる。誰が改造したかは分かっていないが、若干の知識があれば誰でも不正改造は可能である。
Q. 製品自体の問題はないのか。 A. 製品自体に欠陥はなく、あくまで不正改造が原因だ。
Q. 事故発生はいつごろから知ったのか。 A. 今月 11 日に経済産業省から連絡があってからはじめて一連の発生状況を知った。
Q. 個別には何件かは把握していたのではないか。 A. 平成4年(1992年)までに4件の報告を受けていたが、販売店などに点検をお願いしていた。その後、平成13年(2001年)までに、さらに数件の報告があったが、今月 11 日に経済産業省から未把握分も含めて 17 件の事故を伝えられて一連の発生状況を知った。
Q. 事故の一部を把握していたのになぜ今まで対策をとらなかったのか。 A. 平成4年の販売店に対する指導で再発防止は可能と思った。事故情報をしっかり把握できていれば、早い段階でできたと思う。メーカーとして足りない部分はあったと思う。
Q. 現在の機種は大丈夫なのか。 A. 平成1年(1989年)以降は改造できない仕組みにした。
記者会見は90分にも及びました。
その間、パロマから、謝罪の言葉が述べられたり、頭を下げられることはありませんでした。
記者会見の翌日、2006年7月15日、各社の新聞の1面には、「パロマ社製湯沸し器事故 原因は不正改造 社長謝罪なし」と大きく報道されたのでした。

パロマの失墜

「長年にわたり、多くの尊い命が失われたことについて、経営者として深くお詫び申し上げます」
パロマ 小林社長。この会見の少し前に社長に就任したばかりだった
パロマ 小林社長。この会見の少し前に社長に就任したばかりだった
最初の会見から4日後の2006年7月18日、パロマは2回目の会見を開きました。先ほどの言葉は、第一声として小林社長から発せられたものです。
前回の会見とは打って変わり、小林社長は、声を詰まらせながら、謝罪と反省の言葉を繰り返しました。
経済産業省の指摘によると、17件・15人の死亡事故でしたが、27件・20名の死亡事故であることが明かされました。10件の事故と5人の死亡が新たに判明したのです。
さらに、不正改造と関係なく起きた事故が、13件あることを明らかにしました。
Q. 当初の発表との食い違いの理由は何か。 A. 社内の連絡不行き届き、情報収集能力の不足、経営者としての認識の甘さによるものである。意図的ではない。責任を痛感しており、被害者にはこの場を借りて改めてお詫びしたい。
Q. 前回の会見では、すべて不正改造が原因と説明していたのにおかしいのではないか。 A. 大変恥ずかしい。社内の情報を十分に把握できておらず、私の認識不足だった。
Q. 不正改造はだれがやったのか。 A. 現段階では確認できていない。
Q. 事故原因は設計ミスではないのか。 A. 今の基準で考えれば,安全性への配慮が十分とは言えないが、当時は十分と考えていた。設計ミスではない。
Q. 今後の対応はどうするのか。 A. 危険性のある機器をこのまま放置できないと考え、該当の 7 機種を、最新製品と無償で交換する。もちろん工事費もパロマ社が負担する。
Q. 代表者の責任はどう考えているのか。 A. まず今は消費者の安全を図ることが大事。安全確認が完了した日に進退を考えたい。
特に、注目を集めた説明が次のものです。
Q. 不正改造による事故の発生を認識していながら、なぜ抜本的な対策を講じなかったのか。 A. 当時は修理業者への通達で十分だと判断していました。
なぜ、21年もの間、適切な対応を取らなかったのか。
なぜ、事故の情報を公開しなかったのか。
次々と投げかけられる厳しい質問に対して、経営陣の回答は必ずしも明確なものではありませんでした。この記者会見は、3時間以上続き、日本の製品安全史上、最も注目を集めた会見の1つとなりました。

パロマの対応

7月18日の会見後、パロマは被害拡大防止に向けて取り組みました。
7月31日、パロマの会長と社長は、経済産業省に対して調査報告書を提出しています。この日の記者会見でも、事故の原因は製品の欠陥ではないこと、不正改造を指導したこと、容認した事実はなく、関与した社員もいないと主張したのでした。
8月7日、経済産業省は、パロマの調査報告書が不十分として、再度報告を求められます。その結果、報告書の記述は1,000ページを超えるものとなり、一連の事故対策が不十分だったと反省している、と見解も修正されました。
再報告時に謝罪するパロマ
再報告時に謝罪するパロマ
8月24日、パロマは、「パロマ工業第三者委員会」を設置して、事故原因調査と再発防止を目指します。しかしながら、12月21日、パロマから発表された報告書は、パロマの社内風土における問題は指摘するものの、製品自体には欠陥がなかった、と記載されていました。
約1年後の2007年11月9日、1年間にわたる定期報告の記者発表において、約20,000台の点検が行われたことが伝えられました。全体の99.73%は回収され、不正改造された件数は230台だと分かりました。
さらに1年後の2008年6月には点検漏れが発覚します。新たに約800台の該当機器と5台の不正改造が発見されたのでした。
このように、パロマの対応は長期にわたったのでした。

事故原因

今回の直接的な事故原因とは何だったのでしょうか。
事故の直接的な原因は、ガス瞬間湯沸器の不正改造でした。パロマの瞬間湯沸かし器には、コントロールボックスの中に重要な安全装置が搭載されていました。この装置は、排気ファンが正常に作動していない場合、ガスの供給を自動的に停止する仕組みになっていました。これは、不完全燃焼による一酸化炭素中毒を防ぐための重要な安全機能でした。
ガス瞬間湯沸かし器の内部構造
ガス瞬間湯沸かし器の内部構造
しかし、この安全装置に問題が発生した際、一部の修理業者が危険な「不正改造」を行っていました。具体的には、排気ファンの故障時に、安全装置を無効化してガスが供給され続けるように改造していたのです。この改造により、たとえ排気ファンが止まっていても湯沸器は動作し続けることになりました。
不正改造は異なる端子に接続するだけの簡単なものだった
不正改造は異なる端子に接続するだけの簡単なものだった
何故、このような危険な改造が行われていたのでしょうか。その理由には、次のようなものがありました。
1つ目は、修理コストの削減です。給湯器は大変高価な設備でした。安全装置の正規の修理にも高額な費用がかかってしまうため、安価な改造で対応しようとしていました。
2つ目は、即時対応への要求です。消費者はお湯が使えないと困ると言ってきます。早期修理の要望に応えるため、一時的な対処として不正改造を選択していたのでした。
3つ目は、技術的知識の不足です。一部の修理業者が、改造の危険性を十分に理解していませんでした。不正改造された湯沸かし器では、不完全燃焼により発生した一酸化炭素が室内に充満する可能性を認識していませんでした。また、無色・無臭の一酸化炭素が消費者を脅かす危険を認識していませんでした。
これらは、修理現場で起きていた実態です。一方で、メーカーであるパロマにも、当然に問題がありました。
1つ目は、事故の認識と対応の遅れです。パロマは1985年の時点で、不正改造による事故の発生を認識していました。しかし、この時点で抜本的な対策を講じることはありませんでした。パロマは、各修理業者に対して不正改造を行わないよう通達を出すに留まり、既に改造された製品の回収や、一般消費者への注意喚起といった積極的な対策を取りませんでした。
2つ目は、消費者に対する情報開示の不足です。パロマは、事故の発生を知りながら、その情報を適切に開示せず、消費者に対して十分な警告を行いませんでした。この情報開示の不足により、多くの消費者が危険な状態で製品を使い続けることになりました。
3つ目は、製品管理体制の不備です。修理業者の管理体制が不十分で、どの製品がどのような修理を受けているのかを把握できていませんでした。また、修理業者への技術指導や監督も適切に行われていませんでした。
4つ目は、危機管理の失敗です。事故発生後の対応が不適切で、問題の重大性を認識しながらも、組織として適切な対策を取ることができませんでした。結果として、被害が長期間にわたって続くことになりました。
これらの問題が複合的に重なり合い、21年という長期間にわたって被害が続くことになりました。このパロマ事故は、製品の安全性は製造時だけでなく、使用期間全体を通じて確保されなければならないという重要な教訓を私たちに残しました。また、企業の社会的責任として、製品の安全管理と適切な情報開示が極めて重要であることを示した事例です。

警視庁捜査一課は、捜査の中で、「安全装置に連動するコントロールボックスを通さずに配線する方法」を記載した文書を入手していました。
事故を起こした4種の湯沸かし器は、いずれも1980年代に発売されたものでした。
1980年代半ばごろから、コントロールボックスの基板に、はんだ割れなどの異常が多発し、消費者から湯沸かし器が正常に作動しないとの苦情が相次いでいました。修理には新しいコントロールボックスへの交換が必要でしたが、製造が間に合わず在庫が不足していました。
そのため、パロマはコントロールボックスが届くまでの「応急処置」として、パロマサービスショップ店に配線を短絡させる不正改造を促していたことが分かったのです。
一方、パロマは「事故関連資料がない」と説明していました。このようなことからも、当時のパロマ経営陣のコンプライアンス意識の低さ、ガバナンス力の低さが窺い知れます。

警察の責

本事故で最も責められるべきは、パロマとその修理業者です。しかし、行政にも過失があった点にも目を向けるべきでしょう。
そもそも、Yさんの死因として、死体検案書には「一酸化炭素中毒」と記載されていました。Yさんの事故が起きた1996年当時に、その事実が世間に明るみになっていたら、その後の事故は防げたかもしれません。
監察医務院は、Yさんの死体解剖の結果、血中一酸化炭素濃度が異常に高いことを突き止めていました。監察医務院は、警察に対して、一酸化炭素中毒の可能性について伝えていたと言います。
警察は、当初、病死(心不全)と考えており、一酸化炭素中毒という結果について遺族に伝えませんでした。警察は、ギタリストという職業に対する偏見か、薬物使用の疑いを持ち、事件性に関する捜査を行いました。そして、最終的には「病死」と扱ったのです。
このように、警察の捜査方法も疑念が残るものであったと言えるでしょう。

政府の対応

経済産業省は、本事故を重大な製品安全上の問題として捉えて、いくつかの制度改革を実施しました。
1つ目は、法制度の整備です。消費生活用製品安全法の改正を行い、製品事故情報の報告を義務化しました。重大製品事故の報告・公表制度を創設し、企業の情報開示責任を明確化しました。
2つ目は、監視体制の強化です。製品安全監視体制を強化し、事故情報の収集・分析能力を向上させました。NITEの製品事故情報収集制度を拡充し、より迅速な事故情報の把握を可能にしました。
3つ目は、消費者保護の強化です。消費者への注意喚起システムを改善し、より効果的な情報提供を可能にしました。製品安全に関する消費者教育を強化し、危険認識能力の向上を図りました。
4つ目は、業界指導の徹底です。製造業者に対する安全管理指導を強化し、修理業者の資格制度や技術基準の見直しを行いました。
具体的な制度として、「長期使用製品安全点検制度」が導入されました。1ppm(100万件中1件以上)の高い事故発生率を有する製品を「特定保守製品」としました。屋内式ガス瞬間湯沸かし器も規制製品の1つとなりました。
当時の特定保守製品の7種類
当時の特定保守製品の7種類
他にも、石油給湯器、石油ふろがま、ビルトイン食洗機、電気式浴室乾燥機、FF式石油暖房機、屋内式ガスふろがまが登録されました。「特定保守製品」は、法定点検の通知と実施を義務付けられました。
2009年から続いたこの制度ですが、2021年8月に改正され、本事故の原因であった屋内式ガス瞬間湯沸かし器は対象外となりました。事故発生率も、当時1.89ppmでしたが、0.11ppmと、約20分の1まで低下したのでした。
事故発生率が大幅に低下したガス瞬間湯沸かし器は、2021年に特定保守製品から除外された
事故発生率が大幅に低下したガス瞬間湯沸かし器は、2021年に特定保守製品から除外された
このように、パロマ事故は、製品安全に関する社会システム全体を見直す重要な契機となりました。企業の責任、行政の役割、消費者の権利と責任について、新たな認識と制度が確立されることになったのです。
特に重要なのは、この事故を通じて、製品安全は製造時点だけでなく、製品のライフサイクル全体を通じて確保されなければならないという認識が定着したことです。これは、現代の製品安全対策の基本的な考え方となっています。

終局

パロマ事故は、日本の製品安全史上、最も重大な事故の一つとして記録されています。
この事故の終息過程について見ていきましょう。
2008年12月18日、パロマは、一連の事故に関して業務上過失致死罪で起訴されました。パロマ代表取締役社長と品質管理部長の初公判が、東京地裁で開かれました。
刑事裁判に向かう、パロマの元社長と元部長
刑事裁判に向かう、パロマの元社長と元部長
裁判での主な争点は、「両被告が不正改造された自社製品の危険性を認識し、事故を予見できたか」、「安全対策をどの程度講じれば事故を回避できたか」の2点でした。
検察側は、「多発する中毒事故を認識しながら、製品の点検や事故防止策を実施せずに放置した」と指摘しました。一方、弁護側は、「修理業者に不正改造禁止を求めるなど可能な限り再発防止策を講じていた」、「点検や回収はメーカーだけでは不可能。所管する経済産業省の協力が必要だった」などとして無罪を主張しました。
2010年5月11日、裁判長は、元社長に禁錮1年6カ月と執行猶予3年、元品質管理部長に禁錮1年と執行猶予3年の判決を言い渡しました。両名は控訴期限の5月25日までに控訴せず、この判決内容は確定しました。
結果として、本事故は、複数の経営陣が有罪判決を受けることとなり、企業の安全管理責任の重要性が司法の場で明確に示されることとなりました。
訴訟はこれに留まりませんでした。被害者やその遺族からは、多くの損害賠償請求が提起されました。パロマは、これらの民事訴訟に対して誠実な対応を行い、被害者との和解を進めていきました。補償内容は、死亡事故の場合、一件あたり数千万円規模に及ぶものもあり、パロマは多額の賠償金を支払うことになりました。
2005年の事故で次男を失った遺族
2005年の事故で次男を失った遺族
パロマに支払いを命じた主文
パロマに支払いを命じた主文
パロマは、この事故によって深刻な信用失墜に直面しました。消費者からの信頼は大きく損なわれ、製品の売り上げは著しく低下しました。結果として、日本における販売台数は大きく落ち込むことになりました。
この事故は、パロマの企業文化を根本から変えることになりました。それまでの売上や効率を重視する文化から、安全性を最優先する文化への転換が図られました。パロマ事故は、企業にとって貴重な、しかし痛ましい教訓となりました。現在のパロマは、この事故の教訓を活かし、安全性を最優先する企業として生まれ変わろうとしています。

おわりに

今回は、ガス機器業界、いや、日本の製造業界における重大事故、パロマの湯沸器事故を取り上げました。この事故は、様々な視点で、様々なことを考えさせられる事例です。
パロマの視点、修理業者の視点、警察を含めた行政の視点、そして、被害者の視点。製品を作ったパロマ、不正改造をした修理業者、そのどちらにだけ責があるか、という二元論では語れない問題だと思っています。被害者とその遺族には何ら責がなく、ただただ悲しい事故であることは間違いありません。
さて、皆さんはパロマの製品を購入するのが怖くなったでしょうか。実際、50代以上の人からは、「パロマは怖い」という声を未だに聞くことがあります。企業イメージや信頼回復の面で、この事故のパロマへの影響は今なお続いていると言えるでしょう。
しかし、リンナイやノーリツといった、残念ながら他メーカーでも類似の事故が起きています。これはガス機器業界に限らず、自動車業界の不正、家電製品の事故など、知らぬ間に身近な所で起きているのです。
曙ブレーキの不正(左)とガス瞬間湯沸かし器と同様に特定保守製品だった食洗機の火災事故(右)
曙ブレーキの不正(左)とガス瞬間湯沸かし器と同様に特定保守製品だった食洗機の火災事故(右)
消費者の私たちは、耐用年数を超えて無理に工業製品を使わないこと、つまり、製品を信じすぎないことが大切です。また、情報に感度を高めつつも、フラットに捉えて自身の判断軸で決断することが重要だと思っています。
本動画にも登場するパロマの小林社長。実は、私はお会いしたことがあります。パロマでは、お客様や作業員から上がってきた意見を製品開発に取り入れています。また、私たちのような直接的に関係のないステークホルダーに対しても、情報開示をする姿勢を取っています。
日本を代表する企業の1社であるパロマ。過去の大失敗を経験して信頼構築に取り組むパロマ、個人的に応援していきたいと思います。
パロマ 小林弘明社長
パロマ 小林弘明社長

おまけ:学生の視点

最後に、学習院大学の論文について触れておきます。日本のメーカー、製造業は国内に66万企業存在しています。2026年卒の理系学生の志望業界の第1位がメーカーです。理系学生の45.2%がメーカーを志望しているそうです。
2026年卒の就職志望先:第1位がメーカー
2026年卒の就職志望先:第1位がメーカー
2011年、学習院大学から、パロマ工業事故における経営者の有罪判決に対する理工系学生の反応を調査した論文が出されました。「この判決を知って、あなたが感じたことや考えたことを書いてください」に対して、「厳しすぎ」と回答した学生の割合が43.6%と最も多かったのです。その次に多かった回答が「妥当な判決だ」で、25.5%でした。
学習院大学の調査結果
学習院大学の調査結果
興味深いのは、その志望業界背景です。「厳しすぎ」と回答した学生の多くが、メーカー勤めを考えたことが「ある」学生でした。一方で、「妥当な判決だ」と回答した学生の多くが、メーカー勤めを考えたことが「ない」学生でした。
この調査は、自分の立場によって、人間はいとも簡単に意思を変えてしまうことを表していると思いました。
「厳しすぎ」と回答した学生の回答には、
  • 「製造元以外が勝手にやった改造の責任をとらされるのは納得いかない」
  • 「改造される前の製品に欠陥はなかったのだからパロマには非がない」
  • 「修理業者が悪い」
という内容も見受けられました。会見当時のパロマ社長も、同じ思考だったのかもしれませんね。
今回の解説は以上です。記事の最後にはソースを記載しておりますので、より詳しく知りたいという方は、ぜひ覗いてみてくださいね。

まとめ

パロマ瞬間湯沸器の死亡事故について、事故の背景から企業の対応、そして現在に至るまでの経緯をご説明しました。この事故は、2006年に再捜査要望が提出され、当初は心臓発作による病死と判断されていた事案でした。
事故の原因究明により、パロマの経営陣は有罪判決を受け、被害者への損害賠償も行われました。この事故を通じて、企業の安全管理責任の重要性が改めて示されることとなりました。
パロマは事故後、企業文化を大きく変革し、売上重視から安全性重視への転換を図りました。現在も企業イメージへの影響は続いていますが、安全性を最優先する企業として生まれ変わろうとする姿勢を見せています。
消費者としては、製品を信じすぎず、適切な時期での交換を心がけることが重要です。記事の最後では、安全な機器交換のためのおすすめサービスをご紹介していますので、機器の交換をお考えの方は、ぜひご確認ください。

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