不動産の競売とは、裁判所が差し押さえて売る手続きです|入札の下限は売却基準価額の8割、保証は2割、入札書は出したら取り消せません

不動産の競売とは、債権者の申立てを受けた裁判所が、債務者の所有する不動産を差し押さえて売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続きです。売主が売ると決めたから売られるのではなく、所有者の意思にかかわらず強制的に売却される点が、通常の不動産売買と違います。
この記事は、裁判所と不動産競売物件情報サイトが公開している説明を2026年9月21日に読み、競売の2つの種類、申立てから引渡しまでの流れ、いくらから入札できるのか、そして入札が無効になる場面を並べたものです。金額の決まり方と期限は、すべて裁判所側が公開している数字を使っています。

競売には担保不動産競売と強制競売の2種類があります

同じ競売でも、申立ての根拠になる権利によって2つの手続きに分かれます。
担保不動産競売強制競売
何を根拠に申し立てるか抵当権などの担保権判決や和解調書などの債務名義
どんなときに起きるか担保に入れた不動産の債務が弁済されないとき判決や和解調書のとおりに支払われないとき
申立ての手数料担保権1個につき4,000円請求債権1個につき4,000円
ほかに必要な費用民事執行の予納金と、差押えの登記の登録免許税同じ
申立て先原則として不動産の所在地を管轄する地方裁判所同じ
住宅ローンやアパートローンには抵当権が設定されているため、返済が滞って金融機関が動く場合は担保不動産競売のほうです。強制競売は、判決などで支払いが決まったのに払われない場合に、債権者が回収のために申し立てるものです。
裁判所は、1個の債権の担保として土地と建物の両方に抵当権を設定している場合(共同担保)、不動産の数にかかわらず担保権は1個と数えると説明しています。手数料はこの数え方で決まります。
差押えの登記にかかる登録免許税は、確定請求債権額の1,000円未満を切り捨て、これに1,000分の4を掛けて100円未満を切り捨てた額です。算出額が1,000円未満のときは1,000円とみなされます。

申立てから引渡しまで、手続きは何段階ありますか

段階動く人中身
1 申立て債権者不動産の所在地を管轄する地方裁判所に、書面で申し立てる
2 開始決定裁判所執行を始める旨と不動産を差し押さえる旨を宣言し、債務者や所有者に送達する
3 差押えの登記裁判所書記官管轄の法務局に、差押えの登記を嘱託する
4 調査執行官と評価人現況と評価を調べ、三点セットを作る
5 売却基準価額の決定裁判所評価人の評価にもとづいて決める
6 公告と期間入札裁判所書記官売却の日時・場所・方法を定めて公告し、入札を受け付ける
7 開札執行官最も高い価額をつけた人を最高価買受申出人と定める
8 売却許可裁判所売却決定期日に、売却を許可するかどうかを決める
9 代金納付買受人期限までに、入札額から保証金を引いた額を納める
10 登記と引渡し裁判所と買受人所有権移転登記は裁判所が嘱託する。引渡しは引渡命令による
東京地方裁判所の民事執行センターの場合、期間入札の入札期間は通常8日間で、公告書は入札期間が始まる日の15日前に掲示されます。開札のあと、原則として20日後の売却決定期日に、売却の許否が決まります。
※ 期間・場所・書類の扱いは裁判所ごとに違います。実際に入札する事件については、その事件を扱っている裁判所に確認してください。

競売の物件は、いくらから入札できますか

金額の決まり方は、3つの言葉で整理できます。
  • 売却基準価額:評価人の評価にもとづいて裁判所が決める、売却の基準となるべき価額です
  • 買受可能価額:売却基準価額から、その10分の2に相当する額を差し引いた価額です。入札はこの額以上でなければなりません
  • 買受申出保証額:入札のときに提供する保証です。通常は売却基準価額の20パーセントですが、それ以上のこともあります
つまり入札の下限は売却基準価額の8割、入札前に用意しておくお金は2割が目安になります。
※ 売却基準価額が1,000万円の物件なら、買受可能価額は800万円、保証は200万円という計算です。割合から計算した例なので、実際の額は必ず公告書の買受申出保証額で確かめてください。
保証を提供する方法は2つあります。1つは入札前に裁判所の預金口座へ振り込み、金融機関の領収印のある書面を入札保証金振込証明書に貼って提出する方法です。もう1つは、銀行、損害保険会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、信用金庫連合会、信用金庫または労働金庫と支払保証委託契約を締結して、その証明書を提出する方法です。
落札後に納めるのは、入札価額から保証金額を引いた残りです。東京の民事執行センターでは、売却許可決定が確定した日から1か月程度の期限が指定されます。

三点セットとは何ですか

三点セットとは、買受けを希望する人が入札前に見られる次の3つの書類です。裁判所の閲覧室のほか、不動産競売物件情報サイトでも閲覧できます。
書類分かること
現況調査報告書土地の現況、建物の種類・構造、占有している人の有無とその権原。不動産の写真が添付されます
評価書評価額、周辺の環境の概要、公法上の規制。不動産の図面が添付されます
物件明細書買受人が引き継ぐ賃借権などの権利の有無、土地または建物だけを買い受けたときに底地を使う権利が成立するか
東京の民事執行センターでは、入札期間が始まる日の15日前から入札期間の終わりまで備え置かれます。
ただし、裁判所自身がこの書類について注意を書いています。
これらの書類は、不動産の競売手続において収集された限りの限定的な参考資料であることを心得ておいてください。
現地に行って物件を確認し、登記所で権利関係を確かめるよう案内されているのは、このためです。物件によっては内覧が実施されることもあります。

入札でやり直しがきかないのは、この3か所です

裁判所の案内を読むと、あとから直せない場面が3つあります。
1. 陳述書を出さないと、入札そのものが無効になります。 令和2年4月の民事執行法の改正で、暴力団員等に該当しない旨の陳述書が入札書ごとに必要になりました。入札時に提出がないと入札は無効で、あとから追加することはできません。記載に不備があった場合も無効になることがあり、提出後の訂正もできません。
2. 入札書は、撤回も訂正もできません。 いったん提出した入札書は、あとで訂正したり取り消したりできません。期間入札では一度に多数の事件を扱うため、裁判所は不動産の取り違えや金額の書き間違いに注意するよう案内しています。
3. 代金を納めないと、保証も戻りません。 期限までに代金を納付しないと、買受人は不動産を買い受ける資格を失い、提供していた保証の返還も受けられません。入札する時点で、短期間のうちに全額を納められる資金の準備が要ります。
振込による保証の提供では、入札期間中に裁判所の預金口座へ入金済みにならないと入札は無効です。裁判所は、なるべく電信扱いとして早めに振り込むよう案内しています。
なお、開札のあと、最高価買受申出人以外の入札者が提供した保証は返還手続がとられます。戻らないのは、落札したのに代金を納めなかった場合です。

住んでいる人は、いつ出ていきますか

買受人が代金を納めても、すぐに空き家になるとは限りません。
引き継がなければならない賃借権を持つ人が住んでいる場合、すぐに引き渡してもらうことはできません。そのような権利を持たない人が占有している場合は、明渡しを求め、応じないときは裁判所に申し立てて引渡命令を出してもらうことができます。
申立てができるのは、代金を納付した日から6か月以内です。競売手続の開始前から抵当権者に対抗できない賃貸借によって建物を占有している人に対しては、9か月以内とされています。
引渡命令が出て確定すると、買受人は執行官に対して、強制的に立ち退かせる手続きを申し立てることができます。

落札されなかった物件はどうなりますか

期間入札で落札されなかった物件は、特別売却に回ります。東京の民事執行センターの場合、開札期日の翌開庁日から3開庁日のあいだ、先着順で買い受けることができます。
売却代金は、差押債権者や配当を要求した他の債権者に、法律上の順位に従って分配されます。抵当権を持っている債権と、債務名義しか持っていない債権とでは、抵当権を持っている債権が優先します。抵当権どうしの優劣は、設定登記が早いほうが優先します。
売却価格が残債を下回る状態がなぜ起きるのかは、不動産投資のリスク10選と対策一覧|初心者が知っておくべき全パターンで扱っています。

競売で買う側に回るなら、値付けを自分ですることになります

競売には、あいだに立って説明する不動産会社がいません。三点セットを読み、現地を見て、上限額を自分で決めて、撤回できない入札書に書き込みます。判断を代わりにしてくれる人がいない取引です。
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よくある質問

競売の物件は、普通に売られている物件より安いのですか

安くなるとは限りません。決まっているのは入札の下限だけで、下限は売却基準価額から10分の2を引いた額です。実際の落札額は入札で決まるため、希望者が多い物件では下限を大きく上回ります。

競売にかけられると、すぐに家を出ないといけませんか

すぐではありません。申立てのあと、開始決定、現況調査、売却基準価額の決定、公告、期間入札、開札、売却許可、代金納付という段階を経ます。占有している人に明渡しを求められるのは、買受人が代金を納めて所有権を取得したあとです。

競売の物件は、買う前に中を見られますか

見られる場合があります。裁判所は、不動産によっては内覧が実施されることがあると案内しています。実施されない場合に見られるのは、三点セットに添付された写真と図面です。

落札できなかったとき、保証金は返ってきますか

返ってきます。開札のあと、最高価買受申出人以外の入札者が提供した保証は返還手続がとられます。返還されないのは、落札したのに期限までに代金を納付しなかった場合です。

競売の申立てには、いくらかかりますか

申立ての手数料は、担保不動産競売なら担保権1個につき4,000円、強制競売なら請求債権1個につき4,000円です。このほかに民事執行の予納金と、差押えの登記の登録免許税がかかります。予納金の額は裁判所によって違います。

まとめ

競売とは、裁判所が不動産を差し押さえて売り、代金を債権者に分配する手続きです。抵当権にもとづく担保不動産競売と、債務名義にもとづく強制競売の2種類があります。買う側から見ると、入札の下限は売却基準価額の8割、用意しておく保証は2割が目安で、陳述書の不提出・入札書の書き間違い・代金の未納の3つはあとから直せません。入札を考える場合は、まず公告書と三点セットを最後まで読んでください。
出典:裁判所「担保不動産競売」「強制競売」、東京地方裁判所民事第21部「競売不動産の買受手続」、不動産競売物件情報サイト「入札等の手続について」「売却手続の流れ」。いずれも2026年9月21日に確認しました。ファイナンシャルアカデミーのカリキュラムは同社公式サイト(2026年9月21日確認)。