空き家の定期清掃・管理|2023年の法改正で変わったことと、最低限やること
この記事を読むと分かること
- 2023年の法改正で、固定資産税が上がる条件が広がったこと
- 空き家管理で最も重要な作業(清掃より先にやること)
- 火災保険と、庭木の越境について
空き家の管理は「掃除」だけの話ではありません。2023年12月の法改正で、固定資産税の負担が増える条件が広がりました。また、実務上は清掃より優先すべき作業があります。この記事では、放置した場合に実際に何が起きるかと、最低限やるべきことを整理しました。
2023年の法改正で何が変わったか
空家等対策特別措置法は2015年に全面施行され、「特定空家等」に指定されて勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が使えなくなる仕組みでした。
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税の課税標準を、200㎡以下の部分は6分の1、それを超える部分は3分の1に軽減する制度です。これが外れると、土地の固定資産税の負担が大きく増えます。
ここに、2023年12月13日施行の改正で「管理不全空家等」という区分が加わりました。
| 区分 | どんな状態か |
|---|---|
| <b>特定空家等</b> | 倒壊の恐れ、著しく衛生上有害、景観を著しく損なうなど |
| <b>管理不全空家等</b>(2023年に新設) | そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態 |
管理不全空家等でも、市区町村から勧告を受けると住宅用地特例の対象外になります。つまり、「倒壊しそうなほど酷くなる前」の段階で、税負担が増える可能性が出てきたということです。
窓が割れている、雑草が繁茂している、外壁がはがれている。こうした段階で指導の対象になり得ます。「まだ大丈夫」の基準が変わったと考えてください。
清掃より先にやるべきこと
実務上、空き家管理で最も重要なのは掃除ではありません。通水です。
月1回の通水
長期間水を流さないと、排水口の「封水」(トラップに溜まった水)が蒸発します。この水は、下水の臭気と害虫の侵入を止める栓の役割をしています。
封水がなくなると、
- 下水のにおいが室内に上がってくる
- 害虫が排水管から侵入する
という状態になります。「久しぶりに行ったら異臭がした」の原因は、たいていこれです。
対策は簡単で、月1回、すべての水栓とトイレを数分流すだけです。キッチン、洗面所、浴室、トイレ、洗濯機の排水口。すべての排水口が対象です。
長期間行けない場合は、排水口に少量の水と一緒に食用油を注ぐ方法があります。油が膜になって蒸発を遅らせます。
換気
閉め切った建物は湿気がこもり、カビが発生します。訪問時に窓を開けて空気を通すだけで違います。可能なら、24時間換気システムは止めないでください。
郵便物の回収
ポストに郵便物が溜まっていると、外から見て空き家と分かります。不法投棄や侵入のきっかけになるので、定期的に回収してください。
ブレーカー・元栓
電気を完全に止めるかは、判断が分かれます。止めると換気扇も照明も使えず、訪問時の作業がしにくくなります。一方、通電したままの家電(特に古い冷蔵庫や、コンセントに挿しっぱなしのプラグ)は通電火災の原因になり得ます。
使わない機器のプラグは抜き、ブレーカーは必要な回路だけ生かすのが現実的です。
火災保険を確認してください
見落とされがちですが、重要な論点です。
居住していない建物は、火災保険の扱いが変わることがあります。住宅物件ではなく一般物件として扱われ、保険料が上がる、あるいは契約内容によっては補償されないケースがあります。
空き家になった時点で、保険会社または代理店に連絡してください。告知せずにいると、いざというときに支払われない可能性があります。年に1度の更新時に確認するだけでも違います。
庭木の越境について
隣地とのトラブルで最も多いのが、庭木の枝の越境です。
2023年4月1日施行の民法改正で、越境した枝への対応が変わりました。従来は、枝は所有者に切ってもらうしかありませんでした(根は自分で切れました)。
改正後は、竹木の所有者に催告したのに相当の期間内に切除されない場合などの条件を満たせば、越境された側が自ら切除できるようになりました。
とはいえ、空き家の所有者側としては、そもそも越境させないのが筋です。雑草と庭木は、外から見て最も分かりやすい「管理されていないサイン」でもあり、前述の管理不全空家等の判断にも関わります。
草刈りは定額メニューがあります
東京ガスのハウスクリーニングは、草刈り・草むしりを17,600円(税込)の定額で公開しています。見積もり訪問なしで申し込み時に料金が確定するので、遠方から手配する場合に扱いやすい形です。
依頼先を分けて考える
空き家に関わるサービスは、担当する業種が違います。
| やってほしいこと | 依頼先 |
|---|---|
| 定期巡回・通水・郵便物の回収・報告 | 空き家管理代行、不動産管理会社 |
| 室内の清掃(設備ごと) | ハウスクリーニング業者 |
| 室内の全体清掃(貸す・売る前) | 空室クリーニング業者 |
| 庭の草刈り・剪定 | 造園業者、または草刈りメニューのある業者 |
| 大量の残置物の処分 | 不用品回収業者(市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可が必要) |
ハウスクリーニング業者は、定期巡回や鍵の管理はしません。逆に、管理代行業者の清掃は簡易的なことが多く、設備の分解洗浄はできません。分けて頼むのが結果的に確実です。
東京ガスで頼めるもの
東京ガスのハウスクリーニングは箇所別の定額です。空き家で使いやすいメニューを挙げます。
| メニュー | 料金(税込) |
|---|---|
| 草刈り・草むしり | 17,600円 |
| 浴室(鏡のウロコ取りなし) | 17,600円 |
| キッチン(I・L・U型) | 19,800円 |
| レンジフード | 17,600円 |
| トイレ/洗面所 | 各13,200円 |
| エアコン(お掃除機能なし)1台目/2台目以降 | 13,200円/9,900円 |
| 窓・網戸・サッシ(2セット)/ベランダ | 各13,200円 |
| 排水管洗浄(駐車スペースあり/なし) | 55,000円/60,500円 |
※2026年8月30日に公式サイトで確認した税込価格
水まわり3点(浴室・キッチン・レンジフード)以上をまとめると20%引きで、単品合計55,000円が44,000円になります。貸す・売る前にまとめて入れる場面では、この割引が効きます。
対応エリアは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に加えて、群馬県(前橋市・高崎市の一部・藤岡市の一部)と茨城県の一部(龍ケ崎・取手・牛久・つくば・つくばみらい・阿見・利根)です。
エリア外の場合
全国47都道府県に加盟店があるおそうじ本舗が選択肢になります。空き家は現地に行けないことが多いので、鍵の受け渡し方法と、作業後の報告(写真など)があるかを見積もり時に確認してください。
設備の点検も忘れずに
長期間使われない設備は、使わないことで劣化します。
- 給湯器:凍結の恐れがある地域では、水抜きをするか通電を維持する(凍結防止ヒーターが働きます)
- エアコン:年1回は試運転する
- 水道:長期停止後の再開時は、しばらく流してから使う
給湯器は製造から10年以上経っていると、いざ貸す・売るという段になって交換が必要になることがあります。部品の保有期間には限りがあるため、古い機種は修理できないこともあります。売却や賃貸を予定しているなら、早めに状態を確認しておくと段取りが組みやすくなります。
屋外に置いた機器は、盗難の対象にもなります
警察庁の『令和7年の犯罪情勢』によると、空き家における非侵入窃盗のうち、室外機が被害品に含まれるものは702件でした(前年比77件・12.3%増加。本文12ページ・2026年9月26日に公式PDFで確認)。同じ資料は、増加の要因を銅などの金属価格が高騰し、金属くずとして売却するために盗まれているためと説明しています。
※ これは「空き家」に限った数字です。居住中の住宅の室外機が何件かは、この資料からは分かりません。
郵便物が溜まっていると外から空き家と分かる、という話と同じ構図です。人目が届かない家ほど、屋外に置いた機器が狙われます。エアコンの室外機と給湯器の守り方は、こちらにまとめました。
まとめ
- 2023年12月施行の改正で「管理不全空家等」が新設。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる
- 最重要は月1回の通水。封水が蒸発すると下水臭と害虫の侵入経路になる
- 火災保険は空き家になった時点で連絡する。扱いが変わることがある
- 雑草と庭木は、外から見て最も分かりやすい管理不全のサイン
- 越境した枝は、2023年4月施行の民法改正で隣地側が切除できる場合がある
- 管理代行と清掃は別の業種。分けて頼むのが確実
- 東京ガスなら草刈り17,600円の定額メニューがある
よくある質問
Q. 空き家を放置すると固定資産税は上がりますか?
「特定空家等」または「管理不全空家等」に指定され、市区町村から勧告を受けた場合、住宅用地特例の対象外になります。この特例は土地の固定資産税の課税標準を200㎡以下の部分で6分の1に軽減するもので、外れると負担が大きく増えます。2023年12月13日施行の改正で「管理不全空家等」が加わり、対象が広がりました。
Q. 空き家で最低限やるべきことは?
月1回の通水です。すべての水栓とトイレを数分流します。封水(排水トラップの水)が蒸発すると、下水のにおいと害虫の侵入経路になります。あわせて換気と郵便物の回収を。