【不動産投資】共同担保を活用した融資戦略と対応銀行の選び方

この記事を読むと分かること
  • 共同担保の基本的な仕組み
  • 共同担保を活用した融資の考え方
  • 共同担保に対応しやすい金融機関の探し方

共同担保とは、1本の借入に複数の不動産をまとめて担保に入れることです

共同担保とは、同じ1本の債権(借入)の担保として、2つ以上の不動産に抵当権を設定することをいいます。買おうとしている物件だけでは担保として足りないときに、すでに持っている不動産などを加えて、貸す側から見た担保の総額を積み増す使い方をします。
民法は抵当権について「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産」と定めています(民法第369条第1項)。担保に入れる不動産は、借りる本人の持ち物でなくてもかまいません。親名義の土地を担保として差し出す形(物上保証)が成り立つのは、この条文があるためです。

「共同担保」と「追加担保」は、同じことを別の場面から呼んだ言葉です

最初から2物件以上をまとめて担保に入れるときも、融資の途中や2件目の購入時に担保を足すときも、登記の上では、同一の債権のために数個の不動産を目的とする抵当権として、同じ扱いになります。違うのは申請のタイミングだけで、後で見るとおり、この違いは登録免許税の金額に効いてきます。

登記簿では「共同担保目録」という一覧になります

抵当権の登記事項には「二以上の不動産に関する権利を目的とするときは、当該二以上の不動産及び当該権利」が含まれ、これを明らかにするために登記官が共同担保目録を作成できると定められています(不動産登記法第83条第1項第4号・第2項)。実際の手続きでも、二以上の不動産を目的とする担保権の設定登記をするときは、登記官が共同担保目録を作成し、抵当権の登記の末尾にその記号と目録番号を記録します(不動産登記規則第166条第1項)。
どの不動産とどの不動産が同じ借入で束ねられているかは、登記簿を見れば分かるということです。この点は後半の「対応銀行の探し方」で効いてきます。

共同担保を使うと、具体的に何が変わるのか

変わること1 足りない担保を、別の不動産で埋められます

自己資金を厚くする代わりに、手元の不動産を担保として差し出して、貸す側の回収可能性を上げる。これが共同担保のいちばん素直な使い方です。自己資金が薄い段階で2件目に進みたいときや、土地値に対して建物の評価が出ない築古物件を買うときに検討されます。

変わること2 追加設定の登録免許税は、不動産1件につき1,500円です

金額の差が大きいところなので、先に並べます。
場面登録免許税の計算根拠
複数の不動産に同時に設定する全体を1つの設定登記とみなして、債権金額の0.4%を1回だけ登録免許税法第13条第1項
あとから1件を追加で設定する不動産1件につき1,500円登録免許税法第13条第2項
別々の借入として、それぞれに設定するそれぞれの債権金額に0.4%登録免許税法 別表第一 一(五)
抵当権の設定登記の税率は、債権金額の1,000分の4です(登録免許税法 別表第一 一(五))。5,000万円を借りて抵当権を設定すれば20万円になります。
同じ5,000万円の借入で、土地・建物・別の1戸の3件に同時に設定したとします。この場合は「一の抵当権等の設定登記等とみなして」課税されるため(同法第13条第1項)、3件でも20万円のままです。件数の分だけ増えるわけではありません。
さらに、最初の申請より後に担保を追加する場合は、その申請が同項に該当することを証する財務省令で定める書類を添付して申請したものに限り、不動産1件につき1,500円になります(同法第13条第2項)。土地と建物の2件なら3,000円です。
「担保を足すと登記の費用が跳ね上がる」という心配は、登録免許税に関しては当たりません。ただし司法書士への報酬は別にかかるので、見積もりは分けて確認してください。

変わること3 出口の自由度が下がります

実務でいちばん重いのはここです。
民法は、同じ債権の担保として数個の不動産に抵当権がある場合の配当を定めています。すべての代価を同時に配当するときは各不動産の価額に応じて債権の負担を按分し(民法第392条第1項)、ある不動産の代価だけを配当するときは、抵当権者がその代価から債権の全部の弁済を受けられます(同条第2項)。このとき次順位の抵当権者は、その抵当権者が他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として代位できる、という仕組みです。
読者にとっての意味は単純です。共同担保に入れた不動産のうち1つだけを売ろうとしても、抵当権は自動では外れません。権利に関する登記の申請は登記権利者と登記義務者が共同でするのが原則なので(不動産登記法第60条)、抵当権者である金融機関が抹消登記に協力しなければ、担保はついたままです。
売却代金のうちいくらを返済に充てれば担保を外してもらえるのか。この担保解除の条件は金融機関との合意で決まります。借りる前に確認しておくべきなのは、金利や期間よりもむしろここです。

共同担保を入れる前に、自分で確かめておくこと

何を担保に入れるかで、失う自由が違います

自宅を共同担保に入れると、住み替えや売却のたびに金融機関の同意が要る状態になります。家族名義の不動産を入れた場合は、相続や離婚など家族側の事情が動いたときに、自分の借入が家族の資産に張り付いたままになります。担保に出せるかどうかではなく、出したあと何年その状態が続くのかで考えてください。

共同担保は自己資金の代わりであって、返済力の代わりではありません

担保が増えれば貸す側の回収可能性は上がりますが、毎月の返済原資は家賃収入と自分の給与のままです。担保を足して通った融資は、返済比率の面では何も改善していません。空室が続いたときに何か月耐えられるかは、担保の数とは無関係です。

2件目を買うときの余力を、先に計算しておきます

1件目に自宅まで差し出してしまうと、3件目で出せる担保が残りません。共同担保は一度使うと、次の交渉材料が減る手段でもあります。何件まで買うつもりなのかを先に決めてから、どこで使うかを配分してください。

共同担保に対応する銀行を、どう探すか

公開されている融資条件は、金額・期間・エリア・対象物件までであることが多く、共同担保を受け入れるかどうかは個別の審査の中の判断です。「共同担保に対応する銀行の一覧」を探しに行くと、見つからないまま時間が過ぎます。順番を変えて、外側から絞り込んでいきます。

手がかり1 登記簿の共同担保目録から、実際に設定している金融機関を読む

狙っている地域の収益物件について、共同担保目録つきで登記事項証明書を取ると、複数の不動産を束ねて融資している金融機関の名前が抵当権者として並びます。公表されていない運用を、実際の登記から逆算する方法です。
1つ注意があります。登記事項証明書を請求するとき、共同担保目録に記録された事項について証明を求めるなら、その旨を請求情報に入れなければなりません(不動産登記規則第193条第1項第5号)。これを入れないと、共同担保目録の記載は省略されます(同規則第197条第3項)。請求書のチェック欄を1つ入れ忘れるだけで、いちばん知りたい部分が出てこないということです。

手がかり2 信用金庫・信用組合は、法律で地区が決まっています

信用金庫の会員になれるのは、その信用金庫の地区内に住所か居所を有する者、地区内に事業所を有する者、地区内で勤労に従事する者などで、定款で定めるものに限られます(信用金庫法第10条第1項)。そして信用金庫が行う貸付は、会員に対する資金の貸付けです(同法第53条第1項第2号)。会員以外への貸付けは、政令で定めるところにより、会員向けの業務を妨げない限度で行えるとされています(同条第2項)。
物件の所在地と自分の住所や勤務先が、その信用金庫の地区に入っているかどうか。共同担保の相談ができるか以前に、土俵に乗るかどうかがここで決まります。地区は各信用金庫の定款で定められているので、問い合わせれば確認できます。

手がかり3 公開されている条件で、先に落とす

たとえばオリックス銀行の不動産投資ローンは、借入金額が2,000万円以上2億円以下、借入期間が1年以上35年以下と公開されています(2026年9月6日に公式サイトで確認)。共同担保の相談をする前に、借入金額の下限で外れていないかを見てください。築年数で断られたと思っている人の一部は、実際には金額やエリアの条件で外れています。
問い合わせの順番は、公開条件で候補を絞る、地区の条件で信用金庫・信用組合を絞る、登記簿で実績のある先を足す。この順で動くと無駄がありません。

まとめ

  • 共同担保は、1本の借入の担保として複数の不動産に抵当権を設定すること。担保に入れる不動産は本人名義でなくてもかまいません(民法第369条第1項)
  • 同時に設定すれば登録免許税は債権金額の0.4%を1回だけ、あとから追加するなら不動産1件につき1,500円(登録免許税法第13条第1項・第2項)。費用は判断の障害になりにくい部分です
  • 代わりに下がるのは出口の自由度です。1件だけ売るときの担保解除の条件を、借りる前に確認してください(不動産登記法第60条)
  • 共同担保を受け入れるかどうかは公開の融資条件に書かれていません。登記簿の共同担保目録と、信用金庫・信用組合の地区の条件から逆算します
本記事は法令の条文と各社の公開情報にもとづく一般的な説明です。条文は2026年9月16日にe-Gov法令検索で確認しました。個別の融資の可否や登記費用の見積もりは、金融機関と司法書士にご確認ください。

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